Doshisha University
  • 同志社大学ホーム
  • 入学試験情報
  • お問い合わせ一覧
  • 交通アクセス・キャンパスマップ
同志社の人と研究
  1. 同志社大学ホーム
  2.  > 2017年度の同志社の人と研究一覧
  3.  > 緊迫する南シナ海問題は米中対立を象徴する場 国際的観点から世界秩序の変動のメカニズムを探る【南シナ海研究センター センター長 浅野 亮(法学部政治学科教授)】

同志社の人と研究

緊迫する南シナ海問題は米中対立を象徴する場 国際的観点から世界秩序の変動のメカニズムを探る【南シナ海研究センター センター長 浅野 亮(法学部政治学科教授)】

'17年10月2日 更新
 南シナ海問題は激化しており、その紛争は東南アジア地域だけではなく、日本はもとより世界各国にも多大な影響を及ぼす可能性がある。南シナ海研究センターでは、海域諸国の領有権争いが米中対立の象徴的な場となっているという鳥瞰的な視点から捉え、世界秩序の変動のメカニズムを解明していきたいと考えている。そのために、本研究センターでは海洋法、国際紛争処理法、安全保障、地域主義、地理学、各国政治などの専門家を結集した研究体制を構築し、包括的なアプローチによる探究を推し進めている。

世界的な視点から問題の根幹を探究

 中国は「九段線」と称する境界線を根拠に、南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張している。これは自国の歴史を背景にした独自の見解であり、これに対して他国は強く反発している。例えば、フィリピンは国際的な仲裁裁判所に提訴し、2016年7月に「法的な根拠がなく、国際法に違反する」という判断が示されたが、中国はこの判決を受け入れていない。「南シナ海は中国本土南部、インドシナ半島、ボルネオ、フィリピン諸島、台湾に囲まれた広大な海域です。現在、二国間外交、地域的多国間制度、国連海洋法条約などを通じた権益確保のための争いが多発しています。中国が人工島を造成し、軍事的な威嚇を拡大させているのは、南シナ海が海上交易の要衝であり、海底には膨大な量の原油や天然ガスが存在している可能性もあるからです。また、造成工事が公共事業として地方の経済の振興に役立つという側面もあります。ベトナムやフィリピンも人工島を建設していますが、規模が全く違う。ここで、注視しなければならないのは、これらの紛争が中国、台湾、ベトナム、フィリピン、ブルネイなどの周辺諸国・地域に限定したものではないということです。昨今の激しい米中対立に象徴されるように、すでに世界的な問題となっており、最近では欧州も強い関心を抱き始めています」。世界各国の様々な思惑も交錯している状況下では、グローバルな視点からアプローチしなければ、南シナ海問題の根幹を的確に把握し、次代を明確に見通すことはできないと、浅野亮センター長は指摘する。

米中対立は激化し経済は相互に依存

 南シナ海の領有権に関してアメリカは、海洋法に関する国際連合条約を規範とすべきであると主張し、中国の人工島造成を厳しく批判。アメリカ海軍の艦艇などを中国が想定している主権海域で航行させる「航行の自由」作戦を展開している。「なぜ、アメリカはこのように主張し、行動を起こすのか。その真意を読み解くことが何よりも重要だと私は考えています。『航行の自由』を守り、秩序を保持する。これによってアメリカは、自国の権力を堅持し、中国の影響を排除したい。すなわち、目的は国益であると、私は捉えています。しかも、米中は激しい鍔迫り合いを繰り返しながら、両国経済の相互依存は強まっている。アメリカ商務省のデータでも双方ともに輸出額は増加傾向を示しています。つまり、抜き差しならない状態に陥っているわけです。この相反する問題を抱えながら、これからも『灰色の戦い』が続いていくと予測しています」。南シナ海は日本と欧州の海上交易に欠くことのできない重要なルートである。仮に対立がさらにエスカレートした場合、心理戦を前提とした海上閉鎖や軍事危機などが起こる可能性も皆無ではない。南シナ海紛争は日本にとっても避けて通ることのできない切迫した問題あり、的確な現状分析に基づく具体的な対応策が求められている。

開設時から多彩な研究計画を推進

 南シナ海研究センターでは、2015年7月の設置時に研究実施計画を掲げている。一つはデータベースの構築である。各国の公式文書、条約、新聞報道などによる情報収集を行い、蓄積した南シナ海問題に関する基礎的データをウェブサイトで発信する準備を進めている。次に国内外の専門家による国際シンポジウムの開催。第1回目は本研究センター、同志社大学市民外交研究センター主催、京都日米協会の後援で『歴史的変動期の世界秩序とアジア: 南シナ海問題と日本の進路』をテーマに2015年12月に開催した。次回は2018年1月の開催(下記参照)を予定している。また、研究会や講演会も年間数回程度行ってきた。例えば、直近では2017年7月に廣中雅之氏(日本再建イニシアティヴ上級研究員)を講師に招聘して講演会『米国の国防政策・戦略の最新動向-トランプ政権発足100日の評価-』を実施した。さらに、数年後を目途に国際シンポジウムの発表内容を中心にした報告書や論文集を公刊し、本研究センターの多彩な活動をこれに結実させたいと考えている。

南シナ海研究センター センター長 浅野 亮【法学部政治学科教授】
1979年国際基督教大学大学院行政学研究科修了、1982年香港中文大学アジア研究課程修了。少年時代から世界の動向に強い関心を抱く。国際政治に多角的な視点からアプローチする姿勢は、その頃、音楽、絵画、書などを自在に融合して作品を創造していた音楽家に接する中で培われたとふり返る。オフタイムは埋もれたクラシックの傑作や民族音楽などを見出し、楽しんでいる。

同志社大学通信One Purpose192号掲載
関連情報