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平成17年度文部科学省現代的教育ニーズ取組支援プログラムけいはんな知的特区活性化デザインの提案

平成17年度文部科学省現代的教育ニーズ取組支援プログラム けいはんな知的特区活性化デザインの提案

背景と動機

けいはんな知的特区の現状

関西文化学術研究都市は民間主導による都市づくりをめざして、昭和61年に(財)関西文化学術研究都市推進機構(以下、推進機構)を設立し、平成6年に街開きをした。平成15年には世界から多様な研究者が集い、知的求心力のある「国際研究開発拠点」形成を目的に、全域がけいはんな学研都市知的特区に認定された。しかし、外国人居住者の占める割合は4.4%と少なく、子弟が通学するインターナショナルスクールや、配偶者の働く場がないなど、生活環境が整っていないことが国際研究開発拠点形成の障害となっており、平成16年にはバイエル薬品研究所やキヤノン研究所などの民間研究所の撤退を招いた。このため推進機構は、外国人研究者子弟の初等教育も視野に入れた真の国際研究都市環境の整備を計画している。関西文化学術研究都市の人口は約22万人で、想定人口の41万人には程遠い状況の中で、(独)都市再生機構(以下、都市機構)は住宅地の再開発に着手している。さらに本学と包括協定を締結(平成17年1月)した京田辺市は第3次総合計画で“けいはんな”の北の玄関口である三山木地区の商業活性化の取組みを開始している。

同志社大学はこれらの事業へのデザイン提案を求められており、本教育プログラムは学生が行政、推進機構、都市機構、地域住民と連携し、知的特区の活性化策、都市環境の改善、街づくりのアイデアとデザインを提案することで、地域活性化に貢献するものである。

求める人材像

街づくりにおいて、最も重要なことはハードやシーズではなく、その地域の特性ともいえる住民や企業のニーズを計画に活かし実現することである。新しい国際的研究開発拠点として産学公住連携を目指すけいはんな知的特区が求める人材像は、コンセプトデザインをプロデュースし、地域の多くの人々に共有・共感させながら一体となったシステムデザインを構築できる地域マネジメント能力を有する者である。

求める人材像

大学の理念との関連性

国際研究開発拠点としての関西文化学術研究都市知的特区を学生と教職員が地域と一体となり活性化させることは、本学の教育理念である「キリスト教主義」「自由主義」「国際主義」に合致する。

創立者新島襄は、日本の近代化の先導者となるべく、米国に密航した。その後、宣教師団体アメリカンボードなど多くの人々の支援を受け、日本に同志社を設立した。これらの経験をした新島は、「一年の謀は食物を植えるにあり、十年の謀は木を植えるにあり、百年の謀は人を植えるにありとする」とし、人づくりを国づくり、地球づくりの基礎とする教育宣言をしている。

本教育プログラムにおいては、大学や行政が資金や知的資源を出し合うだけではなく、学生が行政や産業界、地域住民と連携し正しいニーズを見つけ、それをコンセプトデザインし、持続可能なシステムにしていくことを狙いとしている。まさに、「良心を手腕に運用する」人物の養成とする本学の建学の精神に合致するものである。

本プロジェクトに関する学生・教職員の活動と評価

本プロジェクトに関する学生・教職員の活動と評価

本学所在地である京田辺市三山木地区は「21世紀型住生活に優しい街づくり(自然との共生)」をテーマに掲げている。平成14年から真山達志研究室(政策学部長、当時法学部教授)が地域の要請をうけて、街づくり研究に取り組んでいる。平成15年から、地球温暖化問題から天然資源である竹をテーマに環境問題解決を目指す同志社大学竹の高度利用研究センター(センター長:藤井透工学部教授)が住民向けに講演会を開いている。また、学生と住民によって設立されたNPOきゅうたなべ倶楽部は三山木の名称由来となる竹取物語と関連させて、新入生と地域住民が交流を深められるよう「かぐや姫マップ」を発案して毎年発行し、三山木地区の活性化と住民交流のための「かぐや姫フェスタ」を毎年春に開催している。
NPOきゅうたなべ倶楽部は大学生協と共同で「レジ袋削減大作戦」や、エコバッグの販売など、学生が楽しみながら環境に興味を持てるような活動にも取り組んでいる。

郡嶌孝研究室(経済学部教授)は同志社EVE(学園祭)における環境への負荷低減及び環境意識向上を目的に、ECO・EVEを研究テーマとして取り組んだ。

このように同志社大学においては、学生が研究室や各種団体により個別に【国際交流】【環境共生】【多世代交流】をコンセプトとした活動を行っている。これらの活動を体系化して新しい街づくりを行うには産学公住の連携した取組みが望まれている。

取組みの独創性・新規性

教育プログラムの独創性・新規性

同志社大学では、学際科目等を設置するなどリベラル・アーツ教育の多様化に力を入れてきた。学際科目に触発され、NPOや市民イベントに参加する学生も多い。本取組においては、学生の能動的取組みを正課のプロジェクト科目として組織し、課外活動も大学が支援することでNPOや活動団体の立上げや起業に至るまでの流れを視野に入れた一貫性のある新たな実践型教育プログラムとしたことに独創性と新規性がある。

また本教育プログラムは、講義主体の授業とは全く異なり、けいはんな知的特区そのものがキャンパスであるとの観点の上に立って構成される。

教育プログラムの独創性・新規性

例えば、けいはんな知的特区の北の玄関口ともなる三山木地区は、人口も少なく、ショッピングセンターなどの生活基盤も整っているとはいえない。この地区の活性化には、商業施設を含めた街づくりによる地域経済の発展が欠かせない。そこで、学生を中心に、自治体、商工会と連携し、地域をキャンパスとした実践型教育プログラムを実施することにより新たな街づくりの提案を行う。その一例として、大型ショッピングエリア「けいはんなモール」開設のためのデザイン提案を行う。「けいはんなモール」は学生発テナント、市民発テナント、融合型テナント、地域商店街などで構成され、その運営は大学・自治体・商工会の共同体が行う。

学生発テナント・融合型テナントは、プロジェクト科目および課外活動としてキャンパス内でパイロットテナントとして試行させ、高い評価を得たプロジェクトについては大学の支援をもとに、学生ベンチャーを立ち上げ、モールへの出店を後援する。

関西文化学術研究都市には、同志社大学・同志社女子大学・奈良先端大学院大学・大阪電気通信大学を中心に、関西外国語大学、奈良教育大学など多くの大学が集積している。総合大学である同志社大学が、地域をキャンパスとした実践型教育プログラムを実施することにより、本プログラムは大学の枠組みを超えて波及すると考えられる。

実現可能性(具体的な実施能力)

同志社大学では、ゼロ・エミッションに関わる広範囲なエネルギー変換研究が文部科学省の平成15年度私立大学学術研究高度化推進事業・学術フロンティア推進事業として採択され、エネルギー変換研究センターが研究拠点として整備された。昨年度は、「自然環境保全」や「生活環境デザイン」などをキーワードとした環境システム学科が工学部に設置された。さらに、人間の営みを全て「文化」ととらえ、適切な情報を収集・分析する学問として文化情報学部を今年度設立した。どちらも所在地は京田辺キャンパスである。これらは、科学技術研究と文化との融合(文理融合)を目的としている同志社大学の姿勢のあらわれであり、同志社大学における環境・都市再生教育に必要な教員やシーズは更に充実した。

一方、同志社大学は京田辺市と包括協定を締結し、連携推進協議会を設立した。京田辺市三山木地区からは、第3次総合計画として街の活性化の協力を要請されている。また、都市機構は住宅地の再開発のデザイン提案を、推進機構は国際小学校の設置を希望しており、同様に本学にコンセプト提案を要望している。なお、けいはんな地域(関西文化学術研究都市の中心区域)は産学公住連携推進、地域科学技術クラスターの形成推進、国際サイエンスシティ交流促進を目的にけいはんな新産業創出・交流センターを本年4月に開設した。センター内に同志社大学リエゾンオフィスサテライトも開設され、学生とけいはんな地域との接点の役割を果すことが可能である。

本学においては、研究室や各種団体による様々な個別活動に取り組んでおり、学生と教員が地域を舞台に学習するための場は整備された。本教育プログラムではこれらの活動と整備された場の融合を目的として学際科目・プロジェクト科目・課外活動を用い、新たな実践型教育プログラムの構築をはかる。

教育プログラムの内容

学際科目

本学の有する人的ネットワークを利用して、学内外の専門家によるリレー講義によって体系的な基礎知識を習得する。

プロジェクト科目

コンセプトデザインを総合プロデュースできる地域マネジメント能力を有する人材育成を狙いとして、学部の垣根を越えたプロジェクト科目を開設する。プロジェクト科目は、学生が主体となって社会との接点を持ちながら、専門領域に止まらず、また教室という物理的な制約を越えて意欲的に学ぶ機会提供を目的としている。大学教員以外に、自治体の専門家、企業や研究機関の研究者(主に外国人研究者)、実務専門家や一般市民をアドバイザーとして登録し、各グループはティーチングアシスタント(TA)のサポートのもと、アドバイザーと連携し実践的に学ぶ。

具体的には、教室内において講師の授業を一方的に聞くだけでなく、10名程度にグループ分けを行い、学生自らがディスカッション(情報収集)→グループ発表→意見交換→評価を行なうことで実践的な知識の習得を図る。情報メディア館にある、畳道場(情報道場)を活用し、情報収集・整理用として各グループにノートPC(無線LAN)を配布することで、自由な環境のもと継続的にテーマに取り組めるようにする。学生が科目履修後も地域住民と継続して学べるように、授業の映像をPDFファイル等と組み合わせたオンライン教材をインターネットで広く地域住民にも公開する。

相互評価において上位成績を修めたグループは、夏期休暇中に協定大学等へ約1週間の交換(視察)留学を行なえるようにし、海外の街づくりの現状を実地で学べるようにする。また、その他の受講生は協定大学からの留学生を受け入れ、相互の交流をはかると同時に、地域を肌で感じる機会を設ける。

課外活動への支援

本教育プログラムにおいては、実際に要望のある地域を想定することで、学生が住民や地域と主体的に取り組める内容とした。

実践型教育プログラム評価委員会を設け、学際科目、プロジェクト科目および課外活動の内容を計画・立案・点検する。関連分野の知識習得のための基礎科目として学際科目を導入し、それに続いて学生自らが実践することに重点をおいたプロジェクト科目を設置する。科目群として「けいはんな街づくり」と「けいはんなエコタウン」などを設け、実践型プロジェクト活動に取り組む。プロジェクトの成果を発表する場として参加者体験型の「けいはんな知的特区フォーラム」を開催し、評価する。その結果を次年度以降のプログラムに反映させる。課外活動において学生が起業もしくは団体活動(NPO)をする場合には、実践型教育プログラム評価委員会が評価・組織認定を行い、大学のリソースを継続的に活用できるようにする。

けいはんな知的特区フォーラム

住民参加型フォーラムを開催し、学生のコンセプトデザインを住民に感じてもらう機会を創出する。見学者(参加者)が地域貢献度や商業貢献度・環境貢献度から評価する方式のコンセプトデザインプラン・コンテストも同時に実施して地域住民に参加意識を高める工夫をする。学生・教員と地域住民が一緒に参加することで相互に学習しあえる内容とする。

学生・OBによる教育プログラムの開発協力体制について

京都をテーマに西尾八つ橋株式会社や地元企業と共同開発製品を開発したTAP(Total Association Projectors)や、リエゾンオフィスのサポートのもと起業化育成・マインド向上を目的にビジネスプランコンテンストを主催したDVT(同志社ベンチャートレイン)の2つの学生団体、および街おこしやゴミ削減活動の実績を有し、本学学生が代表を務めるNPOきゅうたなべ倶楽部がプログラム開発に協力する。また、必要に応じて起業家や専門家のOBを中心に構成されたNPO法人同志社大学産官学連携支援ネットワークの協力も得られる。

教育の社会的効果等

本取組みは、学生だけでなく教員や地域(住民・企業)が【国際交流】【環境共生】【多世代交流】をコンセプトにけいはんな知的特区の活性化を通じて学習するものであり、関西文化学術研究都市圏内の諸大学へ波及する教育効果は大きい。

学生は地域と交流し、地域のニーズを肌で感じ取り、主体となって問題解決をすることでコンセプトデザインの必要性とその波及方法の難しさを学ぶことができる。グループ活動を中心とした取組みにより連帯感・達成感が生まれ、継続的に取り組む学生が増える。

当該地区を対象に、実際にコンセプトデザインを行なう本プログラムによって街を活性化させることができる。本教育プログラムでは、学生は単なる意見書としての提案でなく、実現可能なコンセプトデザインを提案することで継続的な学習や地域の活性化が期待できる。これらの教育を定着させ、進化させていくことで現代ニーズに的確に対応し、完成度を高めていく本教育プログラムは全国展開が可能であり波及効果は大きい。

教育の社会的効果等

評価体制等

実践型教育プログラム評価委員会を組織し、本教育プログラムの総括的な評価を行う。そのもとに学内に教育プログラム評価小委員会、新規科目検討部会を、産学公住連携により事業評価小委員会、事業推進部会を設置する。

教育プログラム評価小委員会は、本プログラムに関係する「学際科目」「プロジェクト科目」の評価を行い、今後の方向性を決定する。新規科目検討部会は学際科目の設置及び事業推進部会が公募した提案内容が、適切であるかを検討した上で担当教員・予算・使用可能リソースを決定し、プロジェクト科目を設置する。事業評価小委員会はプロジェクトの進行管理、中間評価を行い実践型教育プログラム評価委員会に報告する。

評価体制等