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超高齢社会の重要課題解決に取り組むライフサイエンスの研究拠点【高次神経機能障害研究センター 小林 聡 生命医科学部教授】

'13年4月16日 更新
 2012年5月、生命医科学部医生命システム学科が中心となって構想した研究プロジェクト「高次神経機能障害の発症メカニズムの解明と新規治療法の開発」が、文部科学省の「平成24年度私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択された。5年間(2012年〜2016年度)にわたり、この研究プロジェクトを推進していくのが、新たにスタートした「高次神経機能障害研究センター」である。超高齢社会に突入しているわが国においては、アルツハイマー病やパーキンソン病などの患者の増加が大きな問題となっている。それら高次神経機能障害の発症機構を解明し、その知見をもとに新規治療法の開発に挑むセンターの活動と役割などについて、センター長の小林聡生命医科学部教授に聞いた。

生命医科学部の研究力を結集


 日本は世界で最も早く超高齢社会に突入し、急速に高齢者が増えています。それに伴って、アルツハイマー病やパーキンソン病といった高次神経機能障害の患者も増加しており、その治療法の確立が、現在の日本の重要な課題となっています。実は、私の母も20年前にアルツハイマー病を発症し、10年前に亡くなりました。幸い父が開業医だったので様々な対処ができましたが、一般の家庭では家族の負担は並大抵ではありません。介護によって家庭が崩壊するケースさえあります。新規の治療法を開発できれば、患者本人はもちろん家族の負担を減らすこともできますし、巨額にのぼる医療費を削減することにもつながります。その意味で高次神経機能障害、すなわち私たちが取り組む「脳に関係する活動の異常を示す病気の研究」は大変重要なのです。
 同志社大学に生命医科学部が開設されて5年。研究活動はこれまで個々の研究室によるものがメインでしたが、そうした幅広い研究力を結集させて1つの大きな研究プロジェクトに取り組む新たなライフサイエンスの研究拠点として形成したのが、この研究センターです。研究目的はその名の通り、認知症の60%以上を占め、国内に100 〜120万人の患者がいるとされているアルツハイマー病や1000人に1人の有病率と言われるパーキンソン病に代表される高次神経機能障害の発症メカニズムを解明し、その知見に基づいて新たな治療法を開発することにあります。
 センターでは、生命医科学部医生命システム学科、2012年4月に設置された大学院脳科学研究科、その他学外の教員が集まり、研究テーマによって3つのチームに分かれ、各チームが連携しながら、高次神経機能障害の克服という目標に向かって研究を進めています。

3チームが連携して研究を推進


 3つのうちまず1つが、「ヒト検体と疾患モデルマウスを用いた病態解析」を行うチームです。アルツハイマー病研究の第一人者である医生命システム学科の井原康夫教授をメンバーとし、国内外の臨床施設でインフォームド・コンセントを得たヒト検体の提供を受けて研究を行っております。こうしたヒト検体で研究できることが、当センターの特筆すべき特徴の1つでもあります。ただ、アルツハイマー病やパーキンソン病の原因を細かく解析するには、亡くなった患者の細胞だけでは限界があります。そこで、神経の細胞が正常に動くために重要な、ある特定の遺伝子を壊したハツカネズミ、ノックアウトマウスというのですが、モデル動物を作製して解析していきます。このマウスの専門家が脳科学研究科の元山純教授で、ヒトの検体ではできない詳細な実験をマウスで行うことができるというのが、センターの特徴の2つ目でもあります。
 そして、ヒトやマウスといった生物のレベルから視点をさらに小さくして、細胞レベルの研究をしているのが、「神経細胞の酸化ストレスによる機能障害と細胞死メカニズムの解明」をテーマに据えたチームです。鉄が錆びるのと同じように、私たちの体の中のいろいろな物質や細胞も劣化してしまいます。これを酸化ストレスというのですが、それがなぜ起こるのか、あるいは酸化ストレスが細胞を死に至らしめる分子の仕組みなどを研究しています。
 さらに、「神経細胞内の恒常性維持メカニズムの解明と創薬への展開」をテーマとしているのが、私の所属する3つ目のチーム。メンバーの医生命システム学科の西川喜代孝教授は、ペプチドという短いたんぱく質を利用して、例えばO157のような疾病に対して体を守る薬を開発しています。その西川先生の創薬技術を使って研究を進められることが、センターの特徴の3つ目で、このチームが当センターの中でも最も基礎的な研究を行っていると言っていいかもしれません。

治療法開発までの長き道のり


 私たちの研究成果は論文発表か特許の取得というかたちで社会還元しますが、このセンターの研究は結果が出るまでに相当な時間がかかることが予想されます。5年という研究期間は、ライフサイエンス系の研究としては長くはありません。ひとまず3年目の中間レベルで、個々のチームが論文発表できるような新しい知見をまとめ上げるということを目標に置いています。
 最終的な目標は新規の治療法、治療薬の開発ですが、そこにたどり着くまでに、分子、細胞、生物それぞれの研究の中で、アルツハイマー病やパーキンソン病に対してこの部位が重要かもしれないという知見が得られれば、それを指標にして薬のスクリーニングや診断が可能になります。目に見えて発症してからではなく、まだ健常な段階で診断して神経細胞が壊れかかっていることがわかれば、その患者さんに薬を投与することで発症を水際で食い止めることができます。それが最終目標への大きな一歩になるでしょう。
 重要課題である高次神経機能障害の克服に向かってアプローチしていく上で、医生命システム学科や脳科学研究科の脳と神経の専門家が集まり、それぞれに異なる得意分野で力を発揮し、互いに補完し合う。チームで研究を進めて行くセンターが同志社大学で立ち上がったということは大きな意義があります。また、生命医科学部の優秀な学生たちが育ってきて研究に参画しており、マンパワーの充実という意味でも利点は小さくありません。すでに、各チームから興味深い成果が出つつあり、今年は公開シンポジウムを開いて研究交流を促進し、大きな目標に向かって着実に歩みを進めて行きたいと思っています。

同志社大学通信One Purpose174号掲載
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