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拡大し続けるアブラヤシ・プランテーション そのメカニズムを究明し、現状理解・問題解決に寄与する成果発信を【東南アジアのプランテーション研究センター センター長 林田 秀樹(人文科学研究所准教授)】

'17年1月20日 更新
 東南アジアではアブラヤシ・プランテーション(農園)が年々拡大の一途を辿っており、当該地域の社会・経済・自然に多大な影響を及ぼしている。経済学、政治学、社会学など多様な分野の専門家が結集した東南アジアのプランテーション研究センターでは、そうした農園拡大の原因とそれに起因する諸問題をフィールド調査や文献調査に基づいて研究している。その研究活動の成果を発信し、より精確な現状理解と問題解決に寄与することが本研究センターの目的である。

プランテーション開発はなぜ進んだか

 アブラヤシの果実から採れるパーム油は食用油として数多くの食品に用いられるとともに、石鹸、洗剤、化粧品等の化学製品の原料としても幅広く使われており、現在、植物性油脂の中で最大の生産量を誇っている。そのパーム油の主要生産国であるインドネシアとマレーシアでは日本の国土面積の4割に相当する約1,600万ha(2014年時点)までアブラヤシ農園が拡大し、現地の所得増に貢献する一方で数多くの問題が引起されている。具体的には農園開発を行う企業と地域住民との間のコンフリクトや、泥炭地における農園開発に伴う大規模火災による煙害、天然林の減少、生態系の変容等で、それらへの対策が求められている。

 「急激なアブラヤシ農園拡大の契機は、1997年に発生したアジア通貨危機でした。インドネシア等パーム油生産国の通貨の対外価値が大幅に下落し、パーム油の国際競争力が高まって輸出が伸びたのです。それに応じてその原料も高値で売れるようになったため、コメやゴムからアブラヤシに作目を転換する農民や新規にアブラヤシ農園を開発する企業が激増しました。パーム油の原料農地単位面積当り生産性が他の植物油と比較して格段に高いことも、パーム油の競争力を高めています。また、インドネシアでは通貨危機後の社会的動乱のなかで様々な民主化政策が実施され、地方分権化が進みました。その一環として各州内の県・市に農園開設認可に関する大きな権限が与えられた結果、税収増等を企図する地方政治家たちが農園企業向けの認可を出しやすくなったことも農園拡大の大きな要因です。現在、インドネシアに1,000万ha以上あるアブラヤシ農園のうち、民営企業所有が約50%、小農所有は約40%を占めています」

 これら以外にも、例えば日本で顕著な晩婚・非婚の傾向、あるいは独居高齢者の増加による個食の増大も、パーム油を多く使用する外食・中食産業の発展を促し、その消費量を増大させる要因となっている。

多様な分野の専門家による調査研究

 本研究センターは、2009年6月に東南アジアのアブラヤシ・プランテーションに関する学際的な調査研究を目的に活動を始めた「アブラヤシ研究会」が母体である。メンバーは主に経済学、政治学、文化人類学など人文社会科学系の研究者、並びに農学、環境科学等自然科学系の研究者で構成されている。研究会は累計で54回開催され、外部講師を含めて報告者は延べ125組134人に上り、それを土台にこれまで関連学会等で8回にわたってグループ報告を実施してきた。「本研究センターのメンバーはすべてアブラヤシ研究会の一員です。この研究会は現在もセンターの活動の基盤であり、NGO活動家、製油企業社員等も参加して活発な活動を続けています」

 対外的には、2014年9月にインドネシア・西カリマンタン州のタンジュンプラ大学社会政治科学部、京都大学東南アジア研究所との間でMoU(学術協力に係る覚書)を締結。互いの調査研究成果を日本・インドネシアで毎年交互に開くシンポジウム等で発表し合い、研究交流を行っている。成果を現地に還元し、日本、さらには国際社会一般に発信するのが目的である。

最終成果としての共同著作の出版を目指す

 現地調査はインドネシア、マレーシア、タイを対象国として春夏の長期休暇期間中に実施。学期中は、定例研究会で調査研究結果を交流し学会報告や論文といった中間成果に結実させている。

 「メンバーのテーマは個々の専門分野によってそれぞれ異なります。例えば私の場合、「老朽化」した小農所有農園の植替え=再植をスムーズに実施していくための経済的な仕組みづくりがテーマです。所得増への効果を維持しながら行過ぎた農園拡大を抑制するための主要な方法は農園の土地生産性を高めることですが、それには様々なやり方があります。植栽後25~30年で収量が減少し始めるアブラヤシの木を適切な時期に再植することもその一つです。再植には、古木の除去と整地、種苗購入等の費用がかかるうえに、小規模農園を所有・経営している農民たちにとっては、苗木が育って実をつけるまでの3~4年間の生活費をどうするかという問題も避けて通れない。こうした問題の打開策を現地調査に基づいて考えています」

 本研究センターでは、メンバー約20人による共同著作の来年度中の出版を目指している。東南アジアのアブラヤシ・プランテーション開発の問題に向けられる学界・一般からの高い関心に、長年の共同研究の成果で誠実に応えたいと考えている。

東南アジアのプランテーション研究センター センター長 林田 秀樹【 人文科学研究所准教授 】

1992年 神戸商科大学(現:兵庫県立大学)
大学院経済学研究科博士前期課程修了。
1994年 同上 博士後期課程中退。
学部生の頃に読んだ本は専門外のものが多かったが、特に鶴見良行『バナナと日本人』(岩波新書)、村井吉敬『エビと日本人』(岩波新書)に感銘を受け、一次産品を通じた日本とアジア諸国との関係に関心を抱く。オフタイムは体験農園「マイファーム」の畑で野菜づくりに励み、気分転換を図っている。

同志社大学通信One Purpose189号掲載
東南アジアのプランテーション研究センター センター長 林田 秀樹(人文科学研究所准教授)】
インドネシア 農民組合員の方々と

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研究センターのメンバー

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再植後の農園で育つ新しいアブラヤシの木

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