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効果が実証された心理療法の開発・普及を推進 日本初の国家資格・公認心理師の活躍も注視【実証に基づく心理・社会的トリートメント研究センター センター長 武藤 崇(心理学部教授)】

'18年4月16日 更新
 精神疾患は厚生労働省が重点的な対策が必要と判断した五大疾病の一つになっており、実際に有効な心理療法へのニーズが高まっている。このような現状に即応し、その開発と普及を図る「西日本」の中心的な拠点を目指して探究を続けているのが、実証に基づく心理・社会的トリートメント研究センター(Center forWing of Empirically SupportedTreatments;「実証に基づくトリートメントの翼」という名称の研究センター;愛称はWEST 研究センター)である。名称にも冠されているように、臨床効果の実証を最重視し、人々が安心して受けられる心理療法を提供するために、優れたサイエンティスト・プラクティショナーの養成と支援にも積極的に取り組んでいる。


アメリカでは実証を徹底的に追求

 欧米では大規模な心理・社会的トリートメントの開発や普及が重要視され、その効果検証に積極的に取り組んでいる。特に顕著なのはアメリカである。他国に先駆けて精神疾患の治療に対する保険適応が認可され、厳格な実証が徹底的に推し進められてきたからである。何よりも成果(行為)を最優先するアメリカならではのプラグマティズムも大きく影響している。これに比して日本では効果検証があまり行われておらず、医療・教育制度の施策立案や改定も限定的であり、セラピストの絶対数も非常に不足した状況が続いてきた。しかし近年、厚生労働省は従来の四大疾病(ガン、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)に加えて精神疾患を国民に広く関わる疾患と判断し、効果実証に裏付けられた心理・社会的トリートメントへのニーズも年々高まっている。このような現状に対応するために、国立研究開発法人- 国立精神・神経医療研究センター内に認知行動療法センターが開設され、本学も2011 年に実証に基づく心理トリートメント研究センターを設立。この研究を継続するために、2015 年に名称に「社会的」を付加した本センターが誕生した。
 認知行動療法(CBT)は、科学的心理療法の総称であり、行動分析学(臨床行動分析)を専門領域とする武藤崇センター長は、新世代の認知行動療法(第三世代の行動療法)の代表的な療法の一つであるアクセプタンス& コミットメント・セラピー(ACT)における日本の第一人者である。「一般的に、心や考え方が変われば、行動も変わる、と考えられています。しかし、その発想自体が、心理的な問題の一部になっている場合が少なくありません。例えば、うつ病を治すためには、まずは落ち込んだ気分を『晴れやかに』する必要があると考えがちです。しかし、実際に問題なのは、日常生活に必要なさまざまな行動ができなくなっていることの方です。そして、落ち込んだ気分を変えれば、そのような行動ができるようになるとは限りません。逆に、ちょっとした行動をすることで、落ち込んだ気分が『変わる』こともあるのです」。あくまで、重要なのは、「常識」ではなく、再現可能な科学的根拠(ときに「常識に反する」事実)であると武藤崇センター長は強調する。

「西日本」における中核を目指す

 本センターは実証に基づく心理・社会的なトリートメントの開発と普及を推進する「西日本」における中核を担うことを目的としており、愛称の「WEST 研究センター」も、これを意図したものである。「事例研究→一事例の実験デザインを用いて系統的な追試→比較対照試験→無作為化比較試験」という一連の心理療法のボトムアップ的な開発を行っている。「西日本」における中核を目指すまた、それらの研究を可能にする方法論の普及促進も目指している。そのようなプロセスを明示することは、本センターの果たすべき大切な役割であると考えているからである。
 普及における重要なミッションとして掲げているのがサイエンティスト・プラクティショナーの養成と支援である。「プラクティショナーとは、実践家のことです。私たちは身体・心理・社会の相互作用を科学者として理解し、しかも実際に臨床ができる有能な人材を次代に向けて輩出し始めています。研究開発だけをする人や治療の現場で技術者として心理療法を行う人はいるのですが、両方を兼ね備えて、その効果を冷静に検証もできる人はきわめて少ないのが現状です。そのような人材を育成するのは非常に時間も労力もかかることですが、同志社の『良心教育』としてチャレンジしなければならないことだと考えています」。これは本学の心理学部の使命でもあるという。

貴重な研究成果を継続的に発信

 多岐にわたる探究と検証から得られた貴重な先端情報を継続的に広く発信することにも本センターは力を注いでいる。数多くの研究成果は国内外の学術会議などで発表し、学術論文や図書、ホームページでも公表。さらに、シンポジウム、講演会、セラピストのための研修会なども開催している。例えば、昨年度は特別シンポジウムとして、良心学研究センターとの共催で「牧会カウンセリングにおけるアクセプタンス& コミットメント・セラピー(ACT)の可能性: キリスト教と科学的心理療法との接点」を開催。臨床心理学講座や公開講座なども実施。本年度も8 月下旬に武藤崇センター長を大会長とした日本行動分析学会(於;良心館)との共同シンポジウムも予定している。
 「今年のトピックスの一つは、心理学の分野で日本初の国家資格となる『公認心理師』の第1回目の試験が行われることです。公認心理師法は2015 年に議員立法によって成立し、昨年度に施行されました。保健医療、福祉、教育などの分野で心理学に関する専門知識や技術を生かし、社会に貢献することになります」。国家資格を持つ公認心理師が現場に入ることによって、日本の精神疾患の治療でも実証が注視され、それが次第に加速されるのではないかと武藤崇センター長は期待を寄せている。

実証に基づく心理・社会的トリートメント研究センター センター長 武藤 崇【心理学部教授】
1992 年筑波大学第二学群人間学類心身障害学専攻卒業、1998 年筑波大学博士課程 心身障害学研究科心身障害学専攻修了。2010 年より同志社大学心理学部/大学院心理学研究科教授、2011~2015 年には東京大学医学部附属病院22 世紀医療センター腎疾患総合医療学講座客員教授、2017年からは名古屋市立大学大学院医学研究科客員教授。また、同志社大学心理臨床センター(継志館;新町今出川下ル)の指導相談員も兼務し、地域のメンタルヘルスの向上にも貢献している。そのような多忙なスケジュールの中でも、体力・気力の維持のために、ジョギングを欠かさないとのことである。

同志社大学通信One Purpose194号掲載
実証に基づく心理・社会的トリートメント研究センター センター長 武藤 崇(心理学部教授)
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