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畑から考えるSDGs
自然も人も、「知る」からこそ大切にできる (後編)

2024年4月25日 更新
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社会学部准教授 ビリー・スティーブンソン

行動することこそがSDGsの重要なカギ

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日本はSDGsに関する教育や啓発活動が非常に活発です。環境問題について言うなら、日本の若者の知識量が世界トップレベルであることが先行研究で明らかになっています。しかし残念ながら、「行動」という観点で見ると、世界の中で下位に甘んじていることも研究は示しています。

知識はもちろん大切ですが、それだけでは十分ではありません。行動が必要なのです。自分で見て、聞いて、触れることで自然への愛着がわきます。愛着のあるものは大切にしたくなり、自然保護や環境保護の気持ちが芽生えるのです。私たち人間は、知っているものを愛する習性があります。そして愛しているものは守りたくなるのです。逆に言えば、知らないものは愛することができないし、守ることもできません。これは相手が自然であろうが、人間であろうが同じです。

SDGsを推進していく上で、より多くの人が行動を起こせるように後押しすることは重要なテーマだと考えています。学校や教育行政には、行動のためのきっかけ作りが求められています。GBLは、日本人の知識と行動とのギャップを埋める方法を考える中から生まれてきた教育プログラムでもあります。GBLが行動のためのきっかけ作り、ひいてはSDGsの達成に貢献できることを期待しています。

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地域の小学校や同志社大学内でプログラム化を

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GBLで栽培された麦

GBLは今後、教育プログラムとしてのさらなる拡充を図っていきます。具体的には、地域の皆さんとの連携を深めることで、養蜂や藍染めなど市原という土地ならではの取り組みに挑戦していく予定です。

プログラムの中身や手順、指導方法などを確立し、地域の小学校で授業として取り入れてもらうことも目標です。学内的には、GBLを同志社大学における全学的な自然教育プログラムにしたいという夢もあります。良心教育を大事にする本学だからこそ、環境問題という現代社会の大きなテーマに取り組む自然教育プログラムは欠かすことができないとも考えています。GBLは小学校から大学まで、様々な学校で導入が可能ですし、効果が期待できます。どのようなプログラムが望ましいかについて、今後、活発に議論されると思います。「Garden of Hope」と名付けた私たちのGardenでの取り組みがGBLのモデルとなり、全国へ広がることも私の夢です。 

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同志社大学は自由主義とキリスト教主義という理念を掲げた大学です。これら二つの理念があるからこそ、環境保全や心の豊かさなどの良心的な目標設定をすることができます。全学的な自然教育プログラムの導入に期待するのも、常に恵まれた環境によるものだと言えます。朝から夕方まで畑で活動したり、京都御所や鴨川河川敷で授業を行ったりというのは、型破りな学び方・研究の仕方かもしれません。それを容認してくれるのも、自由主義の同志社大学だからこそだと感謝しています。

読者の皆さん、特に若い世代の方には、自然体験をしてもらいたいです。といっても大げさなことでなくてかまいません。外へ出て鳥のさえずりを聞くだけでもいいのです。五感を働かせ、肌で風を感じたり土や植物の香りを感じたりするだけでもいいのです。そうするだけで心の状態がずいぶん良くなります。集中力が高まって仕事や勉強の能率が上がるという効果も得られるはずです。そういった経験が自然を「知る」ことにつながります。知っているものは愛することができ、大切にしたくなります。自然保護という大きなテーマも、そこから始まっていくはずです。

ビリー・スティーブンソン プロフィール

同志社大学社会学部教育文化学科准教授。専門は人文・社会/教育学。2013年4月、同志社大学社会学部助教。15年4月より現職。