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多様な文化で彩られた豊かな社会を目指して ~京都の伝統産業×学生によるソーシャルビジネス~(上)
社会課題に対してビジネスの手法でアプローチし、解決を目指す「ソーシャルビジネス」が活発化している。既存企業が新たな事業として取り組むケースはもちろんのこと、ベンチャー企業の参入も多い。学生の関心も高く、授業やゼミで学ぶだけでなく、実践的な活動を行ったり在学中から起業したりする学生もいる。京都の伝統産業の魅力を発信し、ファンを増やして次世代へ技術と文化をつなぐ活動を行う、石田諭基さん(経済学部3年)もその1人だ。活動内容やそこにかける思いについて、石田さんに伺った。

コンセプトは「伝統をカジュアルに」。若い世代へ魅力を発信

西陣織の美しい着物、茶道に欠かすことのできない四季折々の和菓子、京料理を引き立てる数々の食器など、京都の豊かな伝統文化は、そこに用いられる多彩な伝統工芸・伝統産業によって支えられています。私は、それらの産業を若者や海外へ発信し、より多くの人に親しんでもらうことを目指して活動しています。活動の結果として、伝統産業が活性化し、技術などが次の世代へと受け継がれることが目標の一つです。
具体的な活動の柱はまず、ショッピングサイト「tukatte(つかって)」の運営です。tukatteは、より多くの人が気軽に工芸品を手にできることを目指して2023年11月にスタート。西陣織を使ったペットボトルカバーやアイマスクといった日用品を扱っています。オンラインのほかに、イベントなどでポップアップストアとして出店することもあります。
tukatteの運営を通して深めることができた人とのご縁や知見をもとにして、2025年度には新たなショッピングサイトである「Olynus(おりなす)」の発足を予定しています。こちらは西陣織のクッションなど、住空間に用いる商品を中心に展開します。より付加価値の高い商品でハイエンド層をターゲットとし、伝統工芸がある豊かな暮らしを提案していきます。
もう一つの活動の柱は、「Kyoto T-Plaza」というコミュニティーの運営です。私たち学生をはじめとした若い世代にとって、工芸品に触れたり職人さんと交流したりする機会はほとんどありません。それは伝統産業側にとっては、新たな消費者層と出会うことができず、時代に応じた変化ができないまま衰退へ向かうという意味にもなります。この状況を打破しようというのがKyoto T-Plazaの活動です。職人さんを講師に招いての講演会や、工芸品づくりなどを体験するワークショップを開催しています。参加者は学生が3分の2、社会人が3分の1といった比率。講師には、和菓子職人、精進料理の料理人、真田紐(さなだひも)の職人、和傘職人、歌舞伎俳優の方々をお招きしました。
二つの活動に共通しているコンセプトは、「伝統をカジュアルに」です。伝統工芸に限ったことではないのですが、「本物」はとてもおもしろくて魅力的です。ただ、本物に接することができる機会は限られがちですし、「ハードルが高い」というイメージも持たれています。それならばそのハードルを低くし、気軽に多くの人が本物の文化を楽しんでもらいたいという思いで行っています。これらの活動を通じて、伝統の持つ価値を、今を生きる人々にも感じてもらいたいと思っています。そうすることで、伝統文化を未来につないでいくことを目指しています。
