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中高生の理系進路選択を学生がサポート

~「わたしのサイエンスプロジェクト」の取り組み~(上)

理系分野における女性の少なさが大きな課題になっているなか、女子中高生の理系進学をサポートしようという動きが活発化している。各大学でも女子枠の設置を含めた入試改革を行うほか、理系への興味と理解を深めてもらうための様々な取り組みを行っている。同志社大学において中高生の理系進学を応援する「わたしのサイエンスプロジェクト」で活動する、嶽公輔さん(理工学研究科電気電子工学専攻1年)、倉八真子さん(理工学部機能分子・生命化学科3年)、服部優奈さん(理工学部電気工学科2年)に話を伺った。

2025年4月3日 更新
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左から 嶽公輔さん、倉八真子さん、服部優奈さん

科学実験イベントや卒業生による講演会を開催

日本は世界的な水準と比較すると、エンジニアや理系職に就く女性が非常に少ないです。大学の理系学部で学ぶ学生も少ないです。これは同志社大学も同じ状況です。そこで、現役学生が主体となって中高生の理系進学を応援しようというのが、「わたしのサイエンスプロジェクト」です。メンバーは理工学部と大学院理工学研究科の学生からなり、合計で約20人。活動に興味がある学生が集まっているという点ではサークルのようでもあるのですが、学部内に事務局が置かれていたり、大学から活動の支援を受けていたりするという点では、大学の公式な取り組みという性質も持っています。

 

倉八
活動の主な舞台の一つは、大学内で開かれるオープンキャンパスです。同志社大学の卒業生に講師を務めてもらい、どのように文理の選択をしたか、どのような学生時代を過ごしたか、企業でどのような仕事に取り組み、どんな日常を過ごしているのかといった、自身の経験を語っていただいています。講演後には、講師と参加者が直接意見を交わす座談会を行ったり、私たち現役学生が中高校生の質問に答える時間を設けたりしています。

服部
中高生を対象とした科学実験のイベント開催も活動の大きな柱です。夏と冬に大学内で行っているほか、地域の科学館や科学イベントなど、学外に出て開催することもあります。私は、キットを使って電気回路を作る実験にメンバーとして携わりました。回路図は中学の理科の授業でも習いますが、回路を作って電気を流す体験までする機会は少ないです。教室で勉強したことが実際にそのとおりになるという体験ができる、実験ならではの楽しさを伝えることができました。このほかに、バスボム(入浴剤)を作ることを通して化学を学んだり、雪の結晶を作る実験から化学や物理の延長にある結晶学を学ぶというイベントも開催されています。


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科学実験のイベントの様子
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雪の結晶の実験

理系への理解を促進。保護者からも好評の声が寄せられる

倉八
理系の女子学生や理系職種に就く女性が少ないという影響もあって、女子中高生は理系分野で学んだり働いたりする女性像をイメージしにくいという課題があります。そのことが理系を選択しないことにもつながっています。それに対して講演会でOGの方が体験を語ってくれることで、イメージが明確になります。「理系」とひとくくりにしている中にも様々な学びや職種、働き方があることを知ってもらえ、「やってみたい」「それならやれそう」という意欲や目標を持ってもらえるという効果が生まれています。中高生と年齢が近い私たち現役学生が、失敗談なども含めて経験を語ることで、「私にもできそう」という自信を持ってもらえることも、活動による効果の一つです。
大学での理系の学びに対しては、「大変そう」「忙しくてアルバイトもできなさそう」というイメージを持たれることがあります。「研究室ってブラックなのでは?」と思われていることもあります。そういった懸念から、お子様の理系選択を心配される保護者の方もおられます。もちろん勉強は難しいものもありますし、時期によって研究は忙しいです。でもそれは理系に限ったことではなく、どの学部の学びも一生懸命取り組めば同じです。私たち現役学生や講師を務めてくれるOGの皆さんは、リアルな理系の姿を伝えることで保護者の方に理系に対する理解を深めてもらいたいと考えています。その結果として、お子様が理系の選択を決定した際に応援してもらえたらありがたいです。
倉八
イベントに参加してくれた中高生に対しては、同じ目線で話すことを心掛けています。参加者はみんな、理系という進路に意欲と興味、あるいは疑問や不安を持って会場まで足を運んでくれます。でも中には、思いをうまく言葉で表現できない人もいます。そういった人に「それが私の聞きたかったこと!」と思ってもらえるよう、こちらから積極的に言葉をかけ、リラックスしてもらいながら気持ちを引き出せるように工夫しています。
服部
1年生の私(※取材時の学年)は、言ってみれば高校生に一番近い存在です。受験勉強や高校時代の過ごし方など、自分のリアルな経験を話すことを心掛けています。逆に研究室の選び方や大学院のことといった私にとって未知の領域に関する質問は、先輩にバトンタッチ。メンバーそれぞれが「得意ネタ」を持ち寄り、中高生のどんな質問にでも対応できるようにしています。

 

講演していただく卒業生の人選や、実験イベントの企画は理工学部の先生が主体になることも多いです。そこで私は、参加者である中高生と先生との橋渡し役になることを心掛けています。例えば卒業生の人選にあたっては、今の中高生が興味を持っていそうな分野やトピックをピックアップ。それを先生に伝え、マッチする人選をお願いしています。実験イベントでは、先生の説明を中高生向けにわかりやすく“翻訳”するといった工夫もしています。