同志社時報
最新号
同志社時報は、学校法人同志社が年2回(4月・10月)発行している機関紙です。
最新号 第157号2024.4 発行
ピックアップ記事
ヨーグルト業界を応援する活動家
生産者・メーカーと共にご当地ヨーグルトの未来を創造する
全国各地で作られる味わい深いヨーグルトの魅力を発信しながら、牧場や乳業メーカーとの交流によって、ご当地ヨーグルトの課題解決に取り組む卒業生がいます。ほとばしるヨーグルト愛と、同志社で培った知性と教養、そして行動力を感じるインタビューになりました。
向井 智香さん
向井 智香さんプロフィール
1985 年大阪府生まれ。2008 年、同志社女子大学学芸学部情報メディア学科(現・メディア創造学科)卒業。2010 年、同大学大学院文学研究科修了。以降は母校のメディアサポートセンター、ウェブ制作会社等で仕事をしながら現代アートの制作に取り組む。その間、SNS でヨーグルト関連の発信を続け、2018 年、「全国ヨーグルトサミット」での講演会で講師を務めたことを契機にご当地ヨーグルトの活動を推進。2023 年6月、一般社団法人ヨグネットを設立。
著書に『ヨーグルトの本』(2022年、エムディエヌコーポレーション)。
ご当地ヨーグルトの魅力を発信する「ヨグネット」
ヨーグルトとの関わりの深化をお聞かせください。
もともとヨーグルトが好きだったところに濃厚なギリシャヨーグルトと出合い、美味しさに感動しました。そこからヨーグルトの種類やカテゴリーに関心が向き始め、食べたヨーグルトの記録をネットに残し始めたのが、今に繋がるスタートです。2011年に発信を始め、18年にはブログサービスの公式アカウントやWebメディアから取材をしていただきました。それが契機となり、同年に開催された全国ヨーグルトサミットに講師として呼んでいただきました。
全国のご当地ヨーグルトが集まるイベントですね。
初開催でも約4万人が集まり、ヨーグルトの可能性を改めて感じましたし、多くの中小乳業メーカーや生産者、研究者の方々に出会えて交流が生まれました。このサミットは第3回まで開催されましたが、毎回運営母体が異なってノウハウが継承されず、引き継ぎ先も見つかりません。そこで第三者的な立場で生産者さんたちを繋ぐハブ的な役割を担っていた私が、中心となる団体を作ってサミットを継続させようと仲間と取り組んだのが「ヨグネット」 の始まりです。
ヨーグルトサミットの継続にそこまで注力された理由は何でしょうか。
作り手がもっとスムーズに情報交換できれば、ご当地ヨーグルトの認知も拡大されるし、より正しい情報を発信していけるのではと考えたからです。近年はヨーグルトのイメージが菌や機能性に偏りすぎて、生産者が原料のミルクにこだわっているというメッセージが伝わりにくくなりました。一方、ご当地ヨーグルトの新鮮な生乳100%という強みを伝えるには「量産品の多くはバターを作る際にできる脱脂粉乳などを原料にしている」という前提を知ってもらう必要がありますが、これも伝え方を間違えると量産品の否定につながりかねません。量産品にはバター作りの「副産物消費」という側面があり、SDGsでもあるんですね。両方あって良いのであり、何が違うのかという正しい情報を伝えることが大事です。そして酪農家の思いやアイデンティティがちゃんと消費者に伝わることで、一次産業者のモチベーションに還元されることも重要だと思っています。
羽田産直館で販売している全国各地のヨーグルト
ヨグネットの活動内容を教えてください。
直近では昨年12月15日に羽田空港にオープンした羽田産直館で、ご当地ヨーグルトの卸販売を始めました。普段はご当地ヨーグルトの認知拡大のため、さまざまな発信をしたり、イベントに出たりしています。酪農の理解醸成を目的として、オンライン牧場見学のコンテンツも準備中です。ハンドメイドアクセサリー作家である私の母に作ってもらったアクセサリーなど、牛のグッズも販売しています。
イベントなどで販売されるアクセサリーや文具などの「牛グッズ」
業界内部の課題改善にも取り組みたい
改めてヨーグルトの魅力をお聞かせください。
思ったよりも無限の分岐があるところです。プレーンヨーグルトを食べ比べても、牛の育った環境、飼料、搾乳する季節、使用する乳酸菌や発酵時間などの違いで、いくつも分岐があるところが大きな魅力です。
業界内部で感じておられる課題はありますか。
規格の曖昧さでしょうか。例えばチーズにはナチュラルチーズ、プロセスチーズなど、法で定められた成分規格があります。でもヨーグルトは法律上、「発酵乳」という言葉でくくられています。成分規格はあるにせよ、ヨーグルトという言葉自体に法律がついてきていないので、乳成分が規格に満たなくても「○○&ヨーグルト」のような名前を付けることができてしまう。これは消費者の商品選択を難しくして、ヨーグルトの多様性やご当地ヨーグルトの良さがうまく伝わらない一因になっています。メーカーの使う言葉と消費者の理解の間にも乖離がある。そこをもっと翻訳し、整理して、正確な情報源を私たちが提供することで、消費者の商品選択が変わってきたり、今まで腸活のためにヨーグルトを食べていた人がミルクの魅力を楽しめるようになったりするといいなと思います。
現在の大きな目標は何ですか。
早急に取り組みたいのは酪農情勢の改善です。酪農家の減少が進む現状を広く伝え、一次産業者への援助などについて、みんなのパワーで改善していきたいです。もう1点はご当地ヨーグルト自体の課題解決です。メーカーは乳業のプロではあっても、発酵のプロは非常に少ないんですね。外部の商社にレシピを依存している現状では、多様な地域の乳業メーカーが同じ製法を採っていることもある。そのあたりを突き詰めていくクラフトマンシップが各地で高まれば、美味しさにさらに多様性が出るのでは。羽田産直館での販売データを分析してメーカーにお伝えするなど、ヨグネットにできることはあると思います。
大学で身につけたリベラルアーツと行動力
大学での学びをお聞かせいただけますか。
私は現代アートの作家を目指していたので、授業以外はビデオインスタレーションの制作に没頭していました。テーマの一つは「痛み」。高校時代、キリストの受難に関心を持ったことに端を発したテーマです。その中で広島の原爆ドーム、アウシュヴィッツの強制収容所跡、ベルリンの壁を見にいくなど、フィールドワークに力を入れました。現地で感じるものと本で読むものの両方を大切にしながら学び、これを人に伝えるために適切な表現を考え、展覧会なら場所を手配し、告知を行い、会を開催してアーカイブに残して次に繋げる。それを全部、一人でしていました。
まさにヨグネットの活動そのままですね。
牧場や工場を見学し、理解した事を解釈してイベント開催に繋げる。大学での学びと全然ジャンルは違いますが、している事は同じですね。
同志社女子大学での学びが、大きく今に繋がっていると思われますか。
そうですね。情報メディア学科(現・メディア創造学科)ではパソコンでデザインを学んだので、催事の装飾物や配布資料、SNSに上げる動画や写真は全部自分で作成しています。それに今思うと、やはり同志社で学んだリベラルアーツがすごく生きています。だから今、アンテナを張れる幅が非常に広いのだと思います。女子大学という環境も大きかったです。女性ばかりの中にいれば性別的な役割を気にする必要がないので、自分らしく動けました。その経験も、ヨグネットの代表になるための自信になったと感じています。
改めて、向井さんの志をお聞かせください。
メーカーとの繋がりを大切にしながら、皆で一丸となってヨーグルトの未来を創ることです。ご当地ヨーグルトの価値を高め、それが波及して一次産業の価値を高めるよう、大きな波紋を皆で創っていきたいです。
読者にメッセージをお願いします。
今は腸活という側面が目立ちますが、ヨーグルトには一次産業の方たちの思いやクラフトマンシップがすごく詰まっています。原料乳の背景やヨーグルトの歴史にも目を向けると非常に面白いので、ぜひそういう面も見ていただけると嬉しいです。
(2024年1月12日、東京にて)
- 同志社時報 No.157 2024年4月号
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目次
新島 襄の言葉 | |
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ダウンロード(新島 襄の言葉) | |
「天地の主宰の大意は愛人なり。人その意を敬しみ愛すべし。」(同志社編『新島襄教育宗教論集』岩波文庫、295 頁) |
口絵 | |
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ダウンロード(口絵) | |
法人 | 創立150周年記念イベント「全同志社人がつなぐ150km」 |
大学 | ACUCAのPresident引継ぎ式を執り行いました |
女子大学 | 医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)と連携・協力の推進に関する協定を締結 |
中学校・高等学校 | 岩倉祭 |
香里中学校・高等学校 | 聖歌隊と有志生徒によるオーケストラ演奏 |
女子中学校・高等学校 | クリスマス ページェント |
国際中学校・高等学校 | 中学・高校 体育祭/2023ハロウィン/点灯式 |
国際学院 | 初等部:スポーツデイ 国際部:Chubu University collaboration |
小学校 | 点灯式礼拝 |
幼稚園 | 秋の遠足~京都市動物園~/収穫感謝祭 |
私の志 | ||
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ダウンロード(私の志 インタビューの2人) ダウンロード(私の志 本文) |
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老舗再生に取り組むUターン社長 「正しい商売」を理想に掲げ故郷・新潟への社会貢献を志す |
老舗食品メーカー社長 大橋 祐貴さん |
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ヨーグルト業界を応援する活動家 生産者・メーカーと共にご当地ヨーグルトの未来を創造する |
ヨグネット代表理事 向井 智香さん |
特集 | ||
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ダウンロード(座談会) | ||
座談会 同志社と宇宙 | 足立 寛和 氏/渡辺 公貴/小原 克博 |
特別寄稿 | ||
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ダウンロード(特別寄稿) | ||
Joe 誕生160年~同志社の源流・上海~ |
元大学神学部教授 本井 康博 |
コラム・エッセイ | ||
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ダウンロード(コラム・エッセイ) | ||
情報化社会と記憶術 | 大学 文学部英文学科助教 円浄 ゆり | |
共同体というケアの在り方 | 女子大学学芸学部音楽学科准教授 北脇 歩 | |
「同志社」との出会い | 国際中学校・高等学校宗教科教諭 西原 ももこ |
建物案内 | |
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ダウンロード(建物案内) | |
寧静館(大学) | |
聡恵館(女子大学) |
同志社の逸品 | |
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ダウンロード(同志社の逸品) | |
栄光館ファウラーチャペルのシャンデリア (女子大学広報課) |
私の研究・私の授業 | ||
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ダウンロード(私の研究・私の授業) | ||
参与観察を通して大衆文化の本質を明らかにする | 大学社会学部助教 マティアス ヴァン オメン | |
速く走ることができる身体への興味 | 大学スポーツ健康科学部准教授 若原 卓 | |
子どもが育つ環境創造のために | 女子大学生活科学部准教授 塚田 由佳里 | |
中学三年生総合的な学習の時間の取り組み |
女子中学校・高等学校司書教諭 加藤 美穂子 | |
読書につなげる国語(にほんご)の授業 | 国際学院初等部教諭 上里 久美 |
新刊紹介 | |
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ダウンロード(新刊紹介) | |
人物叢書 中田 薫 | 北 康宏 著 |
安中市と同志社をつなぐ | 本井 康博 著 |
クィア・シネマ | 菅野 優香 著 |
昭和歌謡と人文学の季節 | 井口 貢 著 |
<日常>のなかの近世 | 西岡 直樹 著 |
イスラーム世界と平和 | 中西 久枝 著 |
Z世代のアメリカ | 三牧 聖子 著 |
イギリス湖水地方におけるアーツ・アンド・クラフツ運動 | 臼井 雅美 著 |
分断を乗り越えるためのイスラム入門 | 内藤 正典 著 |
若返りホルモン | 米井 嘉一 著 |
ロベール・ルパージュとケベック | 神崎 舞 著 |
バルカンの政治 | 月村 太郎 著 |
関西フォークとその時代 | 瀬崎 圭二 著 |
定本新島八重伝 倜儻不羈の女 | 吉海 直人 著 |
レクチャー | ||
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ダウンロード(レクチャー) | ||
ラットランド・アピールをもう一度読んでみる -同志社の原点を考える- |
大学 同志社社史資料センター |
同志社クローズ・アップ | ||
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ダウンロード(同志社クローズ・アップ) | ||
同志社創立150周年記念イベントのご紹介 | 法人事務部 創立150周年記念事業事務室 | |
ハリス理化学研究所研究発表会を開催 | 大学 ハリス理化学研究所 | |
FROM NOW ON – 地球を守るequality | 女子大学学芸学部メディア創造学科教授 髙木 毬子 | |
「食」について考える探究的な学び〜 School Meals Project 〜 | 中学校・高等学校英語科教諭 反田 任 | |
雪不足に負けるな! 同志社香里中学・高校スキー部 | 香里中学校・高等学校 体育科教諭 スキー部顧問 竹田 幸平 |
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海外語学研修の再開と新しいプログラムの導入について | 女子中学校・高等学校教諭 林 昌美 | |
総合的な探究の時間の可能性~同志社国際高等学校のとりくみ~ | 国際中学校・高等学校教諭 西田 喜久夫 | |
6年生修学旅行 鹿児島・熊本方面 | 国際学院初等部教頭 風間 寛 | |
台東大学附属小学校との交流 | 小学校教諭 振本 ありさ | |
中庭「クスノキ」の伐採 ~お別れ礼拝と遊歩道の設置~ | 幼稚園教諭 遠藤 稚絵 |
同志社の一貫教育 hitohito-Li | |
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ダウンロード(同志社の一貫教育 hitohito-Li) | |
同志社一貫教育探求センター所長 大久保 雅史 |
お知らせ | |
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ダウンロード(お知らせ) | |
同志社創立150周年記念募金 | |
ハリス理化学館同志社ギャラリー展示ご案内 | |
新島旧邸公開のお知らせ | |
同志社女子大学史料センター 第27回企画展新島襄と同志社の人々 ―影月堂コレクションより― | |
同志社校友会からのお知らせ | |
同志社同窓会の歩みと年間行事・事業 |
編集後記 |
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ダウンロード(編集後記) |
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