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Doshisha-ism

マツダ株式会社 常務執行役員 藤原清志さんに聞く

同志社人訪問185 マツダ株式会社 常務執行役員 藤原清志さん

藤原 清志(ふじわら・きよし)さん 1960年生まれ。岡山県出身。1982年東洋工業株式会社(現マツダ株式会社)入社。2003年マツダヨーロッパGmbH.副社長、2007年パワートレイン開発本部長としてスカイアクティブテクノロジーの開発を統括、2008年執行役員、2013年常務執行役員、2015年4月より常務執行役員研究開発・コスト革新担当、R&Dリエゾン室長、株式会社マツダE&T代表取締役社長。

タンカーを動かしたタグボート

我部山
マツダに入社された動機はどういったものだったのでしょうか。
藤原
大学院に進みたいと思っていたのですが、勉強不足で願いがかなわず、ゼミの先生に推薦していただいたのがマツダだったのです。本当はもっと勉強したかったのですが、挫折してしまいました(笑)。
我部山
入社後はどんなキャリアを積んでいかれたのですか。
藤原
研修後の最初の配属は、商品企画の基礎設計部。基礎とついているし、商品企画だから技術的な知識はあまり要らないだろうと思って希望を出したら通ったのです。入ってよかったと思うことは、エンジンだけではなく、車全体の仕事ができる部署だったことです。そこで商用車の市場調査等を含めて大変幅広い仕事をして、車の面白さを再確認することができました。数年経って、ヨーロッパにR&D(研究開発)の拠点をつくるということになり、募集に手を上げて第一期生としてドイツに赴きました。向こうには4年近くいて、帰国後は同じ商品企画ですが、総合商品計画という全ての商品の長期計画をつくる部門に配属されました。どのような車をどのタイミングで市場に出していくかを考えるのですが、ここで商品企画や若手の処遇をめぐって上司と意見が衝突し、宇品工場へ3カ月間、応援に行くことになります。このときには、自分のエンジニアとしての人生は終わったと思いましたね。
我部山
順風満帆で来られたと思っていたのですが、違ったのですね。
藤原
その後、復帰して最後のファミリア、初代デミオの商品企画を担当したのですが、その頃の私を見てくれていたのが、アメリカのフォードから来ていた役員でした。そして、39歳だった私を2代目のデミオを開発する全社リーダー(主査)に抜擢してくれたのです。当時の最年少主査でした。しかも、このデミオはフォードとの共同プログラムで開発することになったので、私は1999年1月、イギリスにあるフォードの開発センターに、チームのメンバー30人を連れて乗り込みました。イギリスでの1年間は大変でしたね。それまでは、マツダのモノづくりの技術力を基盤に、われわれがフォードの車をつくっていたのですが、このプログラムはフォードがエンジニアリングをし、われわれはそれに対して自分たちの要求を入れていく。それまでとは全く逆の立場になったのです。販売台数は向こうが10倍以上。こちらが要求しても、なかなか受け入れてもらえません。ぶつかり合いながら何とかやり遂げたのですが、残念なことにこのデミオはあまり売れませんでした。ただこのとき、フォードの役員から「お前はフォードという巨大なタンカーを動かしたタグボートだ」と言われたのはうれしかったですね。

勝つために必要なのは自分の強さを伸ばすこと

マツダ株式会社 藤原清志さん
藤原
そして、2007年1月にパワートレイン開発本部長になります。このとき、本部長の下の部長が8~9人いたのですが、4年後の2011年1月に私から次の本部長に引き渡すときには、部長は全員入れ替わっています。つまり、古い組織を完全に新しい組織に変えた。それもどこかから連れてきたのではなく、そこにいたメンバーを入れ替えて新しい組織をつくりました。マネジメントとしては最高に大変で、最高に面白い仕事でした。
我部山
チームをまとめて成果を生み出す上で、人の力を生かすために大事なことは何でしょうか。
藤原
ビジョンをつくってそれを共有化することです。みんなが目標を共有し、高い志を持って、その実現に向かっていけるかどうかです。それができれば、必ずチームは一つになるポテンシャルを持ちます。ビジョンというと遠い夢のように思ってしまいがちですが、そうではなくビジョンとは必ずいつの日か実現できる可能性のあるものなのです。実現するのは来年かもしれないし、20年後かもしれませんが、ビジョンを設定して、それを共有化すると必ずみんなが一つになります。そうやってゴールに向かって少しずつ前に進んでいけば、必ず目標は達成できます。
我部山
私は大学でフォーミュラプロジェクトに加わっていて、今年の大会では前回より一つ順位を下げて4位にとどまりました。これから上に上がっていくには、何が必要なのでしょうか。
藤原
持っている能力をもう一度見極めることです。自分たちは何が強いのかを明確にして、その強さを基に戦略を立てるのです。強さを伸ばすこと、勝つためにはそれしかありません。自分たちは何が強くて、何を伸ばすのが一番いいのかを考えたときに、勝利は見えてくるはずです。
我部山
他の大学を見てあの大学はどこがいい等と、つい考えてしまいます。
藤原
マツダもどちらかと言うと他社の情報を欲しがる会社でした。それをやめて、自分たちは何が強くて、何がやりたいかを考えるようにしました。まず自分を決めてから他社を見る。それによって自分たちの強さがわかってきます。スカイアクティブテクノロジーがなぜ成功しているのかと言えば、みんなとは全く違うことをしているからなのです。それはとりもなおさず、自分たちの強みを生かした戦略なのです。
我部山
藤原さんにとって、仕事の楽しさはどんなところにありますか。
藤原
仕事は楽しくないですよ。ですが楽しむことはできるのです。私がよく言うのは、エンジョイ・ハードワークということ。とにかく与えられた仕事をどうやれば楽しくできるか、楽しむことができるかを考えなさいと。いろいろな経験をしてきましたが、いつも楽しむようにやってきたというのが事実です。

先輩に教えられた本質を見抜く力

マツダ株式会社 藤原清志さん
我部山
藤原さんの今の一番の夢は何ですか。
藤原
マツダは2020年、次の東京オリンピックの年に100周年を迎えます。私の夢はそのとき、ファンによるイベントを盛大に開くことです。そのことを私は、2009年のマツダ・ビジネス・リーダー・ディベロップメント(MBLD)という、年1回、目標を表明し共有化する大会で語りました。この年はリーマンショックがあり、スカイアクティブテクノロジーもまだ世に出ていなかったので、ハイブリッドカー(HV)と電気自動車(EV)でなければ生き残っていけないと言われていました。経営状態も悪く、みんなが疲弊して気持ちが落ち込んでいたときでしたから、新たなビジョンが必要だと思い、「2020年の100周年を広島の地でファンに祝ってもらいましょう」と言ったのです。そのためにはもう一世代進んだ、驚きの商品をつくり、地元の人たちに愛される企業にならないといけません。
我部山
大学時代のことも伺いたいのですが、何か思い出に残っていることはありますか。
藤原
テニスとスキーとアルバイトに明け暮れた4年間でした(笑)。でも、友人には恵まれました。特に4年次のゼミのとき、研究室の先輩方に本質を見抜く力を教えてもらったことは、今でも感謝しています。振り返って考えると、同志社大学の校風が私には一番合っていたと思いますね。自由闊達な雰囲気があったし、同志社大学を選んだのは大成功でした。
我部山
最後に、後輩たちにメッセージをお願いします。
藤原
夢、ビジョン、様々な言葉がありますが、大事なのは必ず自分がこうありたいという思いを持つことです。いろいろな障害があっても、志を高く持ち、楽しもうとする心があれば乗り切ることができます。それを持っていれば、必ず自分の夢は実現できるし、ビジョンは達成できると思います。
我部山
伺った話を肝に銘じ、志を持って頑張りたいと思います。本日はありがとうございました。

インタビューを終えて

インタビュアー 我部山 晃一さん インタビュアー
我部山 晃一さん
【理工学部機械システム工学科 4年次生】

高い志を持って、決めた道を真っすぐに進め

とてもいいお話を伺えて、楽しい時間でした。高い志を持って決めた道をひたすら進むことが成功につながるという藤原さんの言葉が、とても印象に残りました。大学に入って学生フォーミュラに関わり、楽しいことばかりではありませんでしたが、続けてきたからこそ今があるのだと改めて感じます。自分の強みを見つけて、それを磨いていくということは、今後、自分自身が成長していくためにも、忘れないでいたいです。自分を見つめるのは難しいことですが、これから自分なりにどうありたいのかをしっかり考えて、来年春からの社会人生活を楽しんでいきたいと思っています。学生フォーミュラで勝つためのアドバイスは、しっかり後輩に伝えておきます。

兵庫県出身。「同志社大学フォーミュラプロジェクト(D. U. F. P )」OB。「モノづくりがしたくて」機械システム工学を選択。パイプコンベヤーベルトと呼ばれる、ベルトコンベヤーを円筒形に丸めたものについて研究。卒業後はエンジニアの道へ進む。

2015年12月発行
One Purpose185号「同志社人訪問」より

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同志社大学 広報課

TEL:075-251-3120
FAX:075-251-3080
E-mail:ji-koho@mail.doshisha.ac.jp

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