My Purpose ~挑戦する人~
中山 尚さん【文学部国文学科 2年次生】
小惑星探査機「はやぶさ2」のサンプルリターンカプセル観測で
JAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同研究を実現
ミッションは「人工物の再突入が及ぼす無線通信障害の有無」
プロジェクトのメンバーは中山尚さんの他に川地皐平さん(中部大学工学部2年次生)、田中康暉さん(東京大学理科Ⅰ類2年次生)、河村朋治さん(愛知工業大学工学部2年次生)の4人。いずれも岐阜市出身。中山さんと川地さん、田中さんは中学生の頃からアマチュア無線に熱中し、ロボットコンテストにも挑んだ親友で、高校時代に河村さんが仲間に加わり、大学進学後も交流を続けてきた。一昨年末にJAXA(宇宙航空研究開発機構)の「はやぶさ2サンプルリターンカプセル観測研究テーマ提案募集」を知った田中さんの呼びかけで応募し、今回の快挙につながった。プロジェクト名は「Hayabusa2Radio Wave Reflection Project」。提案テーマは「流星バースト通信」に関する研究で、ミッションは「人工物の再突入が及ぼす無線通信障害の有無」。「流星バースト」とは、流星などが大気圏に突入する際に生ずる電離気体(プラズマ)のことで、「流星バースト」に地上からの電波を反射させ、これを受信・観測することを「流星バースト通信」と称する。
「このコロナ禍で打ち合わせはオンラインとなり、各自が図書館などで知見を深めて提案内容を詰めながらの活動となりました。対面で協議したのはプレゼン直前の数日間でした」。発表時はそれなりの手応えを感じてはいたが、採用通知を得た時は、まさに夢心地だったという。
「はやぶさ2」は2019年に小惑星「りゅうぐう」の地表と地下の両方から試料の採取に成功。2020年12月5日午後にカプセルを分離した後、軌道を変更して地球圏を離脱し、新たな小惑星の探査に向かった。地球に投下されたカプセルは12月6日の真夜中にオーストラリア南部ウーメラ近くの砂漠に着地し、無事に回収された。「今回の試みは世界各国が注目しており、この快挙には本当に感激しました。私たちもJAXA との共同研究という得難い経験をさせていただき、今ふり返っても『現実だったのか…』と思うぐらい有意義な時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。また、私たちメンバーはいずれも学部生なので、研究費や補助金を得ることができません。そこで費用はクラウドファンディングで募ることにしました。結果的に予想を大きく上回る300万円以上の支援金が集まり、これも貴重な体験になりました。ただ、一つ残念だったのはコロナ禍の影響で現地に行けなかったことです」。当初はJAXAに同行して自分たちの手で観測地にアンテナを設置し、SDR(広帯域の周波数の電波を受信できるソフトウェア)でカプセルによって生じた「流星バースト」に反射した電波を受信・観測する予定だったが、実際はJAXA に代行を依頼し、そのデータに基づいて詳細な報告書を作成中である。現在、その作業と併せて、これからの持続可能な宇宙開発に貢献できるこの研究の継続化を全員で多角的な視点から検討している。
中山さんは歴史ある京都で国文学を研究したいと考えて同志社大学に進学したが、文系理系を区分する発想はまったくない。「やってみたいと思ったら分野に関係なく積極的に挑むというのが私のスタンスです。この姿勢がJAXA との共同研究という素晴らしい扉を開いてくれました。後輩の皆さんも、興味を抱いたことがあれば、迷うことなく果敢にチャレンジしてほしい。きっと新たな世界が広がります」と、熱いエールを送る。
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お問い合わせ | 同志社大学 広報課 TEL:075-251-3120 |
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