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学長からのメッセージ

2024年度に重点的に取り組む課題

2024年4月19日 更新

 同志社創立150周年を目前にし、今、取り組むべきことは150周年のさらに先を展望できるビジョンを確立し、そのために必要な行動計画を策定することである。
 これまでは、主として「同志社大学ビジョン2025 -躍動する同志社大学-」中期行動計画(第3版)に基づいて、毎年度「重点的に取り組む課題」が提示されてきた。これからの2年間は、中期行動計画を踏まえつつ、これに限定されない新たな取組も加え、毎年度の課題を提示し取り組んでいく必要がある。
 同志社大学が同志社オリジン(建学の理念)を「再発見」、「再解釈」し、唯一無二の誇りある輝きをもって社会を照らし、次世代社会のための新しい価値を生み出すことができれば、それは正に「同志社ルネサンス」と言える。理念に新たな命を吹き込み、大学を希望に満ちた未来へと導く「同志社ルネサンス」実現のために、私たちの日常を自由と創造性に満ちたものとし、同志社をトランスフォームしていく。Doshisha Transformation (DX)にむけた最初のステップとして、今年度重点的に取り組む課題を以下に記す。


1.150周年とその先へ──未来に向けた基盤づくり

 150周年は大学のあり方を根本から考え直す絶好の機会となる。この機を捉えて同志社の歴史を振り返るとともに、150周年以降の新たなビジョンの策定を開始する。充実した自由な時間こそが大学にとってもっとも重要な資本であるという認識のもと、未来の発展の基盤となる教育研究・職場環境を改善し、大学改革を推進する。その際、AIなど最先端の技術が大学運営と業務遂行にもたらす効果を見極め、社会の模範となる教育研究・職場環境の構築を目指す。

2.「新たな教育」のための基盤強化

 刻々と変化する社会に対して大学が貢献するためには、堅持すべき本学の教育理念を踏まえた上で、「新たな教育」への取組が一層必要となる。本年度から始まる「新しい学年暦」は、そうした取組の基盤の一つである。その着実な実施に注力するとともに、教育・学習効果を検証し、さらなる改善を検討する。もう一つの新たな取組の基盤とも言える「数理・データサイエンス・AI教育」は、「同志社データサイエンス・AI教育プログラム」(DDASH)において先導的に取り組んでいるところであるが、その裾野を広げ、本学で学ぶ者が基本的なデータ分析能力を身につけて社会に出ていくことができるよう、段階的に能力が身につくプログラムのあり方を引き続き検討し、学生の主体的な学びとキャリア形成へとつなげる。
 また、生成AIへの対応をはじめ、大学教育においても高度情報化社会への対応が求められる時代の中で、知と体の適切なバランスをはかることは今まで以上に重要である。それゆえ、学生生活におけるスポーツのあり方にも新たな光を当てる必要があり、そのための検討を開始する。

3.境界を越える次世代教育の展開

 学びとは一生涯続く営みであり、大学は学び続ける意欲を持つすべての人に対して、開かれた場でなくてはならない。リカレント教育は単に少子高齢化対策となるばかりではなく、本学学生にとっては、異なる世代間の交流や社会人との共修を通して多様な価値観を学ぶ機会となる。将来的に学ぶ意欲を持つすべての人に魅力的な学修コンテンツを提供し、誰もが時間や場所という制約を受けることなく学ぶことができるリカレント教育の検討を開始する。また、既存の教育システムを前提とする様々な境界、すなわち、高校と大学、学部と大学院、学生と社会人、国内学生と留学生、キャンパスと地域社会の間にある境界を越える取組を強化する。

4.リベラルアーツの深化と総合知の形成

 世界が直面する様々な課題解決のため、文理の垣根を超え、問題を俯瞰する総合知が以前にも増して求められている。幅広い教養と総合的な判断力を養い、豊かな人間性を涵養する本学ならではの教養教育をさらに発展させていくために、昨年度に引き続き、全学共通教養教育科目の再編成と体系化に取り組み、大学院教育においては、アドバンスト・リベラルアーツ科目群の拡充を図る。こうした学部・研究科横断の取組を推進するため、組織の垣根を超えた教員間の交流と研鑽の場を増やす。その協働の結果として、異なる学部・研究科の学生たちが互いに刺激を与え合い、広い視野と豊かな発想を身につけることのできる知的冒険の場を築く。

5.新しい価値の創造と社会貢献のための研究基盤の強化・多様化

 社会貢献やイノベーションにつながる研究開発マネジメントの変革、及び文理融合の教育研究拠点の機能強化について検討を開始する。研究時間の確保やリソース配分の見直しなど、教育研究環境の抜本的な改善を含む大学改革を進めるため、文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」(J-PEAKS)に応募する。研究のための自由な時間を創出することを目指し、研究環境の抜本的な改善に向けた検討を行う。今年度から開始するJST「スタートアップ・エコシステム共創プログラム拠点都市プラットフォーム共創支援」を活用して、大学発スタートアップ、アントレプレナーの支援体制を整備する。また、本学と理念を共有できる国内外の大学、企業、国立研究所、自治体等との組織連携を進め、社会貢献のさらなる推進を目指す。

6.国際主義とキリスト教主義の連携

 新島襄が描いた国際主義とは、自国及び自分を知り(愛し)、他国及び他者を知る(愛する)ことであり、排他的な愛国主義の対極にある。それは常にキリスト教の隣人愛に根差したものであった。ACUCA(The Association of Christian Universities and Colleges in Asia:現在、アジアの8つの国・地域の64のキリスト教主義の加盟大学からなる組織)において、本学は2024年から2年間、幹事校の役割を担う。この役割を遂行することによって、本学の国際主義教育とキリスト教主義教育の連携を深め、これから予定されているACUCAの諸行事を、グローバルな隣人愛の実践の場として活用する。2025年には全加盟校の学長他関係者を迎えての大会と、加盟校の学生たちを集めての学生キャンプが同志社で開催される予定となっており、これらの準備を学生、教員、職員が一丸となって進める。

7.ローカルとグローバルの生きた循環の創出

 学んで得た知識や力を自らのためだけでなく他者のために活用し、社会や世界に貢献する「地の塩」としての人物を育成するために、身近にある地域課題とグローバルな課題を関係づける新たなサービス・ラーニング等を検討し、同志社らしい国際主義の実践を目指す。コロナ禍で休止、停滞していた国際的連携を活性化させ、学生の派遣と受入を充実させるとともに、外国からの訪問者受入や海外プログラムを充実させる。それと同時に、交流の質を高めるため、海外協定大学を総点検する。
 2023年度に改組された国際教養教育院の運営を軌道に乗せ、同志社における国際主義教育の拠点の一つとして位置づけていく。海外拠点の戦略的強化として、EUキャンパスを擁するテュービンゲン大学と本学との間で教育と共に研究協力を拡充させる。さらに、学校法人同志社150周年記念事業等とも連携しながら、アーモスト大学とのさらなる関係強化を図る。

8.「深山大沢」としてのキャンパスの形成

 新島は「深山大沢、龍蛇を生ず」等の言葉によって、大学の理想像を「深山大沢」として示した。これを現代的に言い換えれば、「様々な個性を生かし育む、多様性と驚きに満ちた環境」となるだろう。「深山大沢」の理想を現代において追求するため、自然環境と人間社会のダイバーシティを尊重するキャンパスを目指す。地球環境の持続可能な発展に貢献できる先駆的なサステナブル・キャンパスを創ることを目標として、環境に配慮し、エネルギー消費の削減に取り組み、将来のカーボン・ニュートラル、カーボン・ネガティブ実現の第一歩を踏み出す。また、キャンパスは、そこに集うすべての学生と教職員の多様性が尊重される場とならなくてはならない。そのため、過去4年間取り組んできたダイバーシティ推進にも引き続き取り組んでいく。多文化共生や地域社会との連携を進め、ローカルに根ざしたグローバル・キャンパスを創る。

9.情報共有・情報発信の基盤形成とブランディングの強化

 現代の大学運営において、情報基盤は教育・研究の遂行とそれを支える事務処理に必要不可欠であり、安心安全に利用できる情報基盤を整備し、運用することは大学活動の質を担保する上で欠かすことができない。この情報基盤の確立をDoshisha Transformation (DX)の中核項目と位置づけ、教務・研究・事務システムの改善を見据えた、全学情報システムの企画・設計を計画的に行う。また、学内外への積極的な情報発信に努め、入学者の安定的確保や寄付の増加にもつながる、同志社大学の新たなブランディング戦略を企画・実施する。その一環として、東京サテライト・キャンパスの活用方法を抜本的に見直す。加えて、ブランディング形成に重要な卒業生との連携をさらに深め、世代を超えた同志社コミュニティの形成を推し進めるため、同志社校友会の支部総会等における交流の機会を効果的に活用する。

10.安定的財政基盤の確立

 質の高い教育、研究、社会貢献のためには、財政基盤の安定が必須である。同志社大学の財務関係比率上の指標・目標及び中・長期財政計画並びに学校法人同志社の中期財政目標・財政計画を見据え、収入の安定化を図るべく、2025年度及び2026年度入学生学費の決定に取り組む。また、事業計画の成果検証を行い、明確な財政規律の下での効果的な財政運営を行うとともに、入学定員の確保を重要事項とする。2025年度予算においては収支均衡を目標とし、近い将来における繰越支出超過額の解消に取り組む。加えて、収入の多様化を推進すべく、「同志社大学2025 ALL DOSHISHA 募金」への寄付を増やすため、卒業生や企業に対し、これまで以上に積極的な働きかけを行い、大規模建設事業等の財源確保に努める。