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生き物が有する高度な機能「生物ソナー」に迫る。コウモリが秘める新たな可能性。【生命医科学部医情報学科 飛龍志津子 准教授】

'17年2月15日 更新

超音波で行く先を『先読み』し、
捕食のために最適な飛行経路を
選択することを発見。

コウモリは翼を持ち、鳥類に匹敵する飛行能力を持つ唯一の哺乳類である。餌となる微細な昆虫を捕食する際には、飛行しながら超音波と呼ばれる2万ヘルツ以上の高周波を用いた反響定位(エコーロケーション)を行うことが知られている。コウモリのソナー織構の解明とその工学的応用に向けた研究に従事するのが飛龍准教授である。コウモリは飛行しながら昆虫を捕食するが、超音波によるセンシングと飛行ルートの関係性は明らかになっていなかった。飛龍准教授は、本学の研究開発推進機構の藤岡慧明特別研究員や東京大学生産技術研究所の合原一幸教授らとともに研究グループを発足。野生のコウモリはセンシングを行う際に、超音波を複数回発して反響の差異から物体の大きさや物体までの距離等を認識している。そこで、コウモリの3次元飛行軌跡や超音波の放射方向を、大規模なマイクロホンアレイ(図1)を用いて計測。その行動原理を数理モデル化して解析を試みた。「飛行ルートに関する数理モデルを構築したことでコウモリの飛行制御における選択的注意をパラメータとして分析することが可能になりました」。その結果、目前の獲物だけでなく、複数の獲物に対しても注意を分散させ、高確率で連続的に捕食することが可能な飛行ルートを選択していることが判明したのだ。「コウモリが飛行した軌跡とコンピュータ・シミュレーションによる効率的なルートの解析が見事に一致しました」。この画期的な発見により、コウモリの軌道計画や選択的注意に関する新しい考え方が示された。信号を発するセンシング(アクティブセンシング)を行う自律移動口ボットやドローンなどへの応用が期待されており、飛龍准教授はコウモリの生態解明にとどまらずに数学や口ボット工学などの新しい学問領域に踏み込みながら研究を行っている。実験の中では簡易な自律走行軍(写真2)も製作し、コウモリの特性をプログラミングした場合としない場合の走行ルートを比較。すると、障害物への接触回数や走行ルートに差異が現れた。「ロボットを用いて検証することで、初めて見つかる課題は多いです」。

進化の中で洗練された
生き物の機能に学ぶ
新しい工学の形。

近年、「自然の形に学ぶ設計思想」と呼ばれるバイオミメティクス(生物模倣)分野が注目を集めている。バイオミメティクスとは生き物の持つ機能や形状を模倣し、工学・医療分野に応用する新たな研究領域である。たとえば、新幹線が力ワセミのくちばし形状を模倣して流体抵抗を低減し、フクロウの風切羽の構造を模倣して防音効果を得ていることは一般的にも知られている。コウモリの超音波を用いたセンシングは工学的にも応用の可能性を大いに秘めた機能だという。「センシングを行う生き物は多くいますが、自ら信号を発信して行うセンシング(アクティブセンシング)を行う生き物はイルカやコウモリなど非常に限られています」。このアクティブセンシングに関する研究は自動車の自動操縦技術のヒントになる可能性があり、飛龍准教授は自動車メーカーと共同研究を行っている。特に多くのコウモリが同時に飛行する際に、互いに衝突しないメカニズムを解明することは技術向上の鍵になり得るという。飛龍准教授は、企業や異分野の研究者との連携に対して積極的だ。自身の研究に数理モデルやロボット工学を導入することで、多様な分野で応用しやすいプラットフォームを形成しようとしている。「生き物が考えていることを見える形にして、皆様にお伝えすることが研究者としての私の役割だと考えています」。
企業や他大学の研究者と共同研究を行うことで互いに大きなメリットが生まれる。着眼点の相違から新たな発想につながることは多いという。「バイオミメティクスを専門とされる研究者と意見変換する機会があったのですが、生き物の行動や思考を真似するととも新たなバイオミメティクスの形だという言葉をいただけて励みになりました」。

研究への思いが人生を変え、
母親としての経験が
研究者としての意識を変えた。

飛龍准教授は学生時代から研究者になることを志していたわけではない。同志社大学工学研究科を修了する際に博士課程ヘ進学したいという思いを持っていたが、女性であることや学費を考慮した両親からの反対を受け、進学を断念。日本アイ・ビー・エム株式会社に就臓した。しかし、研究に対する思いを払拭することができず、会社の国内留学制度を利用し、休職して同志社大学で研究に従事することを決意。恩師である生命医科学部の渡辺好章教授や理工学部の松川真美教授に相談し、再び学生として大学で研究を続ける機会を得ることができた。「会社の同僚は反対するかと考えていましたが、私の思いを後押ししてくれました。非常にありがたく感謝しております」と振り返る。当時、超音波研究に着手し始めた渡辺教授からコウモリのソナー研究を勧められたことを機に、飛龍准教授はコウモリの生物ソナー機構の解明に向けた研究を開始。工学部出身であることや一般企業に勤めた経験を持つことが研究にも活かされている。「コウモリ達が当たり前に行っている習性に対して企業の方々が興味を持ってくださることも多いです。研究に関する講演を行う際には、生き物の面白さを伝えると同時に、少しでも工学応用への可能性につながるよう、その機能や生き物の思考、行動を工学的視点から分かりやすく伝えることを心掛けています」と飛龍准教授は語った。
そして、研究者としての意識を大きく変えた出来事が出産と子育てだ。『子どもとのふれあいを通して、人を育てることに以前より大きな喜びを感じるようになりました」。企業との会議に学生を同席させ、プレゼンや企業の方との議論を一緒にすることで、研究のアシスタントだけではなく、社会で活きるさまざまな経験を学生に提供している。「研究と教育がうまく同期し、学生の成長が実感できた瞬間はとても嬉しいです」と笑顔を見せた。

飛龍志津子(ひりゅう しづこ) 生命医科学部医情報学科 准教授

同志社大学工学部電子工学科卒業、同志社大学工学研究科電気工学専攻修了。日本アイ・ビー・エム株式会社勤務を経て、本学の研究開発推進機構特別研究員として「生物ソナー機構の解明」に向けた研究に従事。
コウモリの超音波によるセンシングと飛行ルートの関係を明らかにした研究で注目を集める。企業や研究者との共同研究に取り組むと同時に、講演にも積極的に登檀。教育者としてのモットーは「学生の成長が第一」。

同志社大学リエゾンオフィスニューズレター「LIAISON」 vol.50 掲載
【図1】野外計測における観測地とマイクロホンアレイシステム

【図1】野外計測における観測地とマイクロホンアレイシステム

【写真1】大学で飼育するコウモリ

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【写真2】コウモリの特性をプログラミングした自律走行車

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