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魅力ある日本のものづくり産業に活力を。現場の情報を収集し、産業発展の活路を見出す。【商学部商学科 関智宏 准教授】

'17年5月12日 更新

優れた技術を持ちながらも『知られていない』中小企業にスポットライトを当てる。

1980年代、プラザ合意とそれに伴う日本政府の財政・金融政策が要因となり、戦後3番目に長い景気拡大局面「バブル景気」が訪れた。当時、関准教授の出身である山口県宇部市は化学産業やセメント産業が盛んであり、大手企業とその下請である中小企業は順調に成長。その影響は一般市民レベルにも波及し、地域の商店街も大いに賑わった。
しかし、バブル景気の崩壊とともにその景色は一変し、一部の商店街は瞬く聞にシャッター通りになってしまう。「あまりにも衝撃的で、この時期から地域経済の活性化について強く意識するようになりました」と関准教授は当時を振り返る。1995年、不況を迎えた日本経済に追い打ちをかけるように阪神・淡路大震災が起きた。テレビに映る神戸の惨状を見た関准教授は、関西で地域経済の復興に携わることを決意する。周囲に反対されながらも受験大学を兵庫県内に絞り、商業や流通の分野に強みを持つ大学に進学した。大学進学後は、ものづくり産業に関わる中小企業が元気にならなければ商業が活性化しないという事実に着目し、中小企業論を専攻。大学院での研究を経て、研究者として地域のものづくり産業活性化に携わるようになる。そして、現在は関西の製造業、特に機械金属業種の中小企業研究を重点的に行っている。「日本の中小企業は全企業数の約99%を占めています。日本のものづくりを支える中小企業は世界に誇る優れた技術を持っていますが、大半の企業は社名すらも認識されていません。そこで、魅力ある中小企業が発展するために、正しい情報を社会に発信することが私の役割だと考えています」。研究の際には、現地視察やインタビュー調査を通して実態把握に努めるだけでなく、そこから得られたデータを分析する。(写真1)現場主義をモットーに研究活動を行った結果、今では800社を超えるさまざまな企業の経営者と人的ネットワークを構築。経営者と直接コミュニケーションをとることで公開されていない情報を収集し、知られざる魅力を書籍やSNSを通じて社会に発信している。「世間では『中小企業は規模的不利性を持った企業』という認識が社会通念として根付いています。私の研究活動が、人々の中小企業に対する見方を豊かにするきっかけになれば嬉しいです」。

業務提携に対する日本企業と海外企業の壁。橋渡し役として関係構築に尽力する。

グローバル化の進展に伴い、人やモノ、情報が国境を越えて自由に行き来している今日、熾烈な国際競争に勝ち残るための国家戦略・企業戦略の重要性は日に日に高まっている。日本は経済成長戦略として中小企業の海外進出支援を掲げ、高い技術力を持つ中堅・中小企業の輸出額倍増を目指している。中でも、成長著しいアジア圏への進出は、事業・販路の拡大や労働力の確保など、日本のものづくり産業発展に欠かすことができない。関准教授の研究対象であるASEAN地域は、タイやベトナム、ラオスなどの発展段階が異なる国々で構成されており、中でもタイでは大企業から中小企業まで裾野の広い産業集積を形成している。現地では、かつて日本の自動車メーカーや家電メーカーで働いていた経験を持つ経営者も多く、中小企業の技術力が大企業の生産技術を支えてきた日本のものづくり文化を深く理解している。そのため、日本の中小企業と手を組んで技術を学びたいという思いから多くのASEAN企業は業務提携に好意的な姿勢を示すが、対照的に日本の中小企業は海外展開に慎重な傾向があるという。『良くも悪くも日系企業は大規模な資本投資や設備投資を好まないため、意思決定に時間を要します。それに対して、スピードを重視する海外企業はもどかしさを感じています」。そこで、関准教授は中小企業の海外展開の実現に資するために、研究フィールドを国外に拡大。海外企業の経営者と交流しながら、橋渡し役として高い技術力を持つ日本企業とASEAN企業との連携可能性について研究している。「大学のような第三者機関が介入をすることによって企業間取引特有の緊張感や不信感を取り除くことができます」とその可能性を語った。

研究者が間に立つ必要性。産官学による三位一体の実現に向けて。

かつて日本は高い技術力を持つものづくり大国だと世界に認識されており、「メイド・イン・ジャパン」という言葉は、高品質や高性能な製品の象徴とされた。しかし、技術革新やグローパル化の進展によってアジア諸国の技術力は飛躍的に向上。日本がこれらの国々と競争するには、さらなる「魅力あるものづくり」を行う必要がある。「これには企業の努力だけでなく、大学などの学術機関や行政機関との連携が不可欠です」と産官学連携の重要性を語る。しかし、研究・教育活動の一環として地方自治体の職員や企業の経営者と交流する機会が多い関准教授は、両者の間に隔たりを感じていた。財務の圧迫により産業部門に十分な人員と予算を割くことができない行政機関と、経済政策による波及効果をなかなか実感できない中小企業には、相互理解が求められているという。「足並みを揃えた産官学連携を実現させるために、両者に適切な情報を提供することが我々研究者の役割だと考えています」。2016年から関准教授は日本中小企業学会の理事を務めており、全国の中小企業研究を行う研究者を束ねて情報ネットワークを拡大させている。これらで得た情報を研究者間で共有・分析するだけでなく、中小企業や行政機関にも提供することで両者の相互理解を積極的に促しているという。大学が架け橋となり、企業と行政機関が歩み寄って対等な立場で連携することで、ものづくり産業の再活性化、ひいては経済・社会全体の発展につながるだろう。

関智宏(せきともひろ) 商学部商学科  准教授
神戸商科大学(現:兵庫県立大学)商経学部中途退学(飛び級)を経て、神戸商科大学大学院経営学研究科経営学専攻(中小企業論を単位取得満期退学。「魅力ある日本の中小企業の発展」を研究テーマに、800社を超える中小企業経営者と豊富な人的ネットワークを構築してきた。2016年より日本中小企業学会の理事に就任。主な著書に『現代中小企業の発展プロセス』(ミネルヴァ書房)や『タイビジネスと日本企業』(同友館)などがある。

同志社大学リエゾンオフィスニューズレター「LIAISON」 vol.51 掲載
(写真1)中小企業の現地視察風景

(写真1)中小企業の現地視察風景

(写真2)『現代中小企業の発展プロセス』(ミネルヴァ書房)

(写真2)『現代中小企業の発展プロセス』(ミネルヴァ書房)

(写真3)『タイビジネスと日本企業』(同友館)

(写真3)『タイビジネスと日本企業』(同友館)

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