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光デバイスの発展に伴う新たな課題を解決。実用化を見据えた研究で社会を豊かにする。【理工学部電気工学科 江本顕雄 准教授】

'17年7月13日 更新

情報の記録密度を飛躍的に向上させる「ホログラムメモリ」とは。

 私たちの暮らしのさまざまなシーンで、光を利用して情報の記録や伝達を行う光デバイスが活用されている。中でも光通信技術や太陽光発電、照明・ディスプレイなど環境・エネルギー分野で果たす役割が非常に大きく、光デバイスはさらなる高機能化が求められている。「この需要に応えるためには、新たな発想を基に光デバイスの材料から見直すことが重要です」と語る江本准教授は、ポリマーマトリックスと呼ばれる高分子構造体に有機分子を分散させた機能性材料と光の相互作用に注目してきた。機能性を持つ分子を高分子層に付与することで、高い機能性を効果的に発現する高分子層を新たに生成することができる。江本准教授はこれを応用し、光学機能性を有するデバイスや光計測技術を開発している。例えば、アゾベンゼンは、光の照射を受けることで屈折率が大きく変化し、偏光分布をホログラムとして記録することが可能になる。そもそもホログラムは、2方向の光が干渉することでできる「干渉縞」の明暗パターンに従って媒体が縞模様に感光したもので、干渉光を照射することで光の強度や波長、位相といった情報を空間分布として記録する。江本准教授は、この技術をデジタルデータの記録に応用した「ホログラムメモリ」の研究に取り組んでいる。従来の平面ビット型記録方式が1つの情報を1スポットに記録していたのに対し、ホログラムメモリはページデータといわれる情報の2次元分布を1スポットに記録する。従って、情報の記録密度が飛躍的に高まるという。「現在はホログラムメモリ研究の新しいアプローチとして、アナログアーカイブ向けのコンピュータ生成バイナリホログラム用アルゴリズム開発を構想しています。世界中の図書館や文書館などで保管されているマイク口フィルムは長期保存性に優れた媒体として注目されてきましたが、フィルムの劣化に伴って、記録された情報を著しく損失してしまいます。劣化情報を補正して記録するためのホログラムメモリ技術を開発することで、世界中の貴重な資料を保管するのに役立つでしょう」。

従来技術の課題を克服。透明フィルムの品質検査や結晶粒の観測がよりスムーズに。

 お風呂やプールに入った時、自分の腕が水面で曲がって見えたり、水中のものが実際よりも近くに見えたりすることがあるだろう。これは光の屈折によるものだが、透過する物質によっては、空気中と物質中の屈折率の違いから、入射光が通常光線と異常光線に分かれる場合がある(複屈折)。私たちの身の回りにはこの複屈折を発現する物質は多い。例えば、透明フィルムは延伸処理を施されることで、分子が局所的に配向して結晶相となり、強度を獲得すると同時に、複屈折を発現する。偏光顕微鏡は代表的な複屈折のイメージング装置であるが、複屈折を測定するには、試料を回転させながら複数の画像を撮影して、偏光状態を解析する必要があるため、どうしても時間がかかってしまう。また、高精度が期待される偏光の干渉を用いる方法も振動が多い環境での測定が難しい。これらの課題を踏まえ、製造現場ではより簡便・高速・高精度で複屈折を可視化できる技術が求められていた。そこで、江本准教授と国立研究開発法人産業技術総合研究所の福田隆史主任研究員が開発したのが「複屈折プ口ファイラー(写真1)」である。独自に設計した偏光分離回析素子を利用して、光が複屈折性を持つ試料を透過する際に生じる偏光状態の変化の2次元分布を、光強度の2次元分布に変化させることで、試料の複屈折分布を分析できる。この複屈折プロファイラーの技術を用いることで、試料の回転や複数の画像撮影が不要となり、複屈折の有無や試料のムラなどを一度に可視化できるようになった。(図1)今後は各種光学フィルムの製造現場でのインライン検査(図2)や食品・製薬分野などの研究・開発現場への導入も期待できる。大学見本市などの展示会を通して研究成果を発表した際には、フィルムやディスプレイの開発・製造lこ関わる企業から高い評価を得ている。現在はより高精度・高性能なフィルム測定技術の獲得を目指し、透明フィルム関連企業と共同研究に取り組んでいる。

共同研究の中で実感した産官学連携の意義。実用化に向けて動き出す。

 近年の情報メディアの発展は携帯電話や薄型テレピなどのフラットパネルディスプレイの技術革新により牽引されてきた。これは研究者や専門家、企業による絶え間ない努力の結晶である。このような技術革新は専門分野の垣根を超えた多様な連携によって支えられていることを、企業と共同研究を行う中で実感したと江本准教授は話す。「複屈折プロファイラーの研究に不可欠な資金援助に加えて、科学技術振興機構(JST)に外国特許申請を支援していただきました。この特許申請は大学での研究を産業界にアピールするだけでなく、特許技術を具体的に活用したい企業との共同研究を大きく後押しするものとなりました」。今回の産官学連携がもたらした研究成果は実用性が高く、実際の産業利用に結びつく日は遠くないだろう。江本准教授は、その複屈折プロファイラーの実用化例として、加工食品産業との連携を挙げた。例えば、練り物は魚肉をすり潰して加工する際に熱エネルギーを加えるが、その際に練り物の中で分子が微細な結晶構造を形成し、複屈折を発現する。これを測定すれば、味や食感の分析に役立つだけでなく、食品の安全管理にも活用できるという。「今後は、食品分野のように研究成果を応用できる業界・企業と積極的に連携し、実用化に向けて挑戦していきたいです」。光デバイスの発展は私たちの生活を便利にする希望だと語る江本准教授は、研究の先にある未来を見据えていた。

江本顕雄(えもとあきら) 理工学部電気工学科 准教授
長岡技術料学大学卒業、長岡技術科学大学大学院工学研究科情報・制御工学専攻修了。光学機能性を有するデバイスや光計測技術の開発に従事。主な研究成果として「実時間記録・安定記録選択型ホログラムセル(特開2011-158721)」などがある。2014年には国立研究開発法人産業技術総合研究所の福田隆史主任研究員とともに「複屈折測定装置および複屈折測定方法(特願2014-171159))を開発した。

同志社大学リエゾンオフィスニューズレター「LIAISON」 vol.51 掲載
[写真1]開発した複屈折プロファイラー

[写真1]開発した複屈折プロファイラー

[図1]さまざまな試料の観察結果

[図1]さまざまな試料の観察結果

[図2]複屈折プロファイラーをインライン検査に実用化したイメージ

[図2]複屈折プロファイラーをインライン検査に実用化したイメージ

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