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同志社の人と研究

機械工学の視点から先端医療材料の創製と細胞を用いた実験検証まで次代を拓くバイオマテリアルを体系的に探究【先端バイオマテリアル研究センター センター長 森田 有亮(生命医科学部医工学科教授)】

'17年12月1日 更新
 先端医療の発展に貢献するバイオマテリアル(生体材料)の研究開発は、世界的に注視されている期待の分野であり、大きな可能性を秘めている。2015 年4 月に設置された先端バイオマテリアル研究センターでは、国際レベルのバイオマテリアルの創製、加工技術の開発、臨床応用研究などの共同研究が本学の生命医科学部を中心にした研究員によって推し進められている。主なプロジェクトは関節軟骨、骨、神経、血管の再生などであり、バイオマテリアルの体系的な研究開発を目指している。

多角的な研究で先端拠点の形成を目指す

 バイオマテリアルとは医療分野で用いる生体適合性に優れた材料である。例えば、損傷した部位の代わりとなる人工関節などをイメージしがちであるが、身近なものでは注射針や体温計の外側のプラスチックなども広い意味では含まれる。用途に応じた必要な期間、機能を継続的に発揮し、生体内外で安全に使用できることが基本となる。本研究センターでは我々の体を細胞・組織・生体という階層構造で捉え、組織の再生に役立つ先端生体医療材料の創製について材料・構造設計から細胞との相互作用まで解析手法を活用しつつ取り組んでいる。その起点となるのは、生体適合機能性材料の設計・創製、軟骨・骨・神経再生用スキャホールドの開発、骨・軟骨の再生メカニズムの解明、再生組織の力学機能評価法の開発など本学で行われてきたバイオマテリアルの多彩な研究実績である。スキャホールドとは、細胞の接着や増殖を促して3 次元構造を保持するための足場となる細胞周辺環境のことである。
 「本研究センターの研究員の専門分野は大半が機械工学です。そこに立脚して工学と医学の両側面からバイオマテリアルの創製と再生医療技術の開発を進めています。材料が持つ特性、細胞との相互作用、創出した組織の特性、細胞を取り巻く環境などを総合的に捉え、これらを多元的な視点から評価することによって組織が本来備えていた機能の再生を探究しています」。工学と医学の融合領域におけるバイオマテリアルの体系的な開発が本研究センターの際立つ独自性であり、多角的な共同研究の推進によってバイオマテリアル開発研究の国際的な拠点の形成を目指している。また、本学あるいは参加機関主催のシンポジウムを継続的に開催し、先端バイオマテリアルに関する情報交換と研究成果の発表を行っている。

神経再生に最適な材料と細胞周辺環境の構築

 本研究センターが推進している研究領域は多岐にわたる。神経再生の分野では神経再生用ナノファイバーガイドチューブの開発、神経軸索の伸展過程を予測するシミュレーション手法の開発などに取り組んでいる。「神経が損傷を受けた場合、移植という方法もありますが、ガイドチューブを被せて、その中で再生させる手法もあります。神経細胞の突起である神経軸索は材料表面の構造や電磁場刺激などの細胞周辺環境によって伸展促進や方向制御が起こります。そこで、最短の期間で神経を再生するためには、チューブ構造と細胞周辺環境をどのように構築すればベストなのかを研究しているわけです」。神経再生用ナノファイバーガイドチューブの開発では、軸索進展と細胞配列を促すような特殊な構造をもつナノファイバーガイドチューブをエレクトロスピニング法(電界紡糸法)によって創製しようとしている。エレクトロスピニング法とは、紡糸のためのポリマー溶液に高電圧を加え、ナノレベルの微細繊維を作製する技法である。また、機能性バイオマテリアルの創製において生体内の環境を予測する手段として解析手法を応用している。例えば、有限要素解析による関節軟骨および半月板の微視・巨視機械特性評価を試みている。有限要素解析とは複雑な形状・性質を持つ対象を要素に分割し、各近似値から全体を統合的に解析する手法であり、実験による計測などが困難な生体組織内部に生じる様々な現象のメカニズムを探究している。

生体同等の機能の創出、骨・軟骨再生の促進

 関節軟骨再生の分野では、例えば再生軟骨の細胞活性を維持・向上させる機能性スキャホールドの開発、力学特性および組織形成に及ぼす培養環境の最適化、関節軟骨および再生軟骨の力学機能評価などを行っている。「関節軟骨には日常生活で体重を支え関節運動を担うという非常に重要な機能があります。患者さんの早期回復のためにはこの優れた力学機能の獲得が不可欠です。生体軟骨と同等の荷重支持や潤滑といった力学機能を備えた再生組織を創製するのがこの研究の目的です。具体的には創製した機能性スキャホールドや培養過程での力学(電気)的刺激の細胞活性促進、組織構造化、力学機能向上などへの効果を評価し、より優れたバイオマテリアルの探究を行っています」。また、骨再生の領域でも骨形成促進のためのインプラント表面改質技術の開発などの研究も推進中である。骨置換材を移植した場合、接合に時間を要するという課題がある。そこで、研究センターでは骨置換材の表面に生体骨で生じるような電気的刺激を自発的に出すような特性を持たせれば、骨形成が促進されるのではと予測し、新規無鉛生体電圧材料のシリコン酸マグネシウムを開発。現在、その高性能化を図っている。

先端バイオマテリアル研究センター センター長 森田 有亮【生命医科学部医工学科教授】
1992 年同志社大学工学部機械工学科卒業、1994 年同志社大学博士前期課程工学研究科機械工学専攻修了。機械メーカーでの実務経験の後、2003 年京都大学大学院工学研究科機械工学専攻博士後期課程修了。大阪工業大学工学部電子情報通信工学科助教授を経て、現職。ちなみに、趣味は映画、音楽鑑賞。散策も好きで、小旅行にも魅力を感じている。

同志社大学通信One Purpose193号掲載
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