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消費者の視点からブランドを紐解き、企業や地域のマーケティング戦略に貢献する。【髙橋 広行 商学部 商学科 准教授】

'18年7月1日 更新

消費者が潜在的に抱く形のない価値「ブランド」の可能性に魅せられて。

 「ブランド(brand)」。それは商品やサービスをとりまく形のない価値のことである。商品やサービスを他と区別するための概念であり、消費者の経験や意思・思想を反映するイメージの総体だと定義付けられている。「今日のマーケティング戦略においては、消費者を理解して、ブランドを構築・活用することが不可欠です。店頭に陳列するお茶を例にとっても、清涼飲料水メーカーは消費者の志向を想定して商品の名称やパッケージを設定します」。そう語る髙橋准教授は、大学を卒業した後、メーカーや広告会社、マーケティング会社などでキャリアを積んできた。当時、仕事の一環として参加した「IT時代の消費者価値研究プロジェクト」で井上哲浩氏(現・慶應義塾大学教授)のデータ分析手法や価値観尺度の設計などの「アカデミックな風」に感銘を受けたという。「クライアントの課題解決に利用できる理論を学び、自分なりに整理したフレームワークをコンサルティング業務に応用したいと考えて大学院への進学を決意しました」。昼間働き、夜に学ぶというスタイルで修了するも、もっと腰を据えて学びたいという思いが強まり、博士課程にも進学。消費者のブランド認知メカニズムを解明する消費者行動論に関する研究実績が認められ、流通科学大学で研究者としての道を歩み始めた。流通科学大学はスーパー大手のダイエーを設立した中内功氏によって創立されたこともあり、総合スーパーや食品スーパーとのコネクションが強い。「この時から小売企業のブランド研究を始めました。アンケート調査や先端事例へのインタビューを基に、小売企業に対する消費者の認識や企業競争力を明らかにしています」。

地域特有の資源を活かしてブランド価値を向上。資金と人材の好循環を目指す。

 近年、地域特有の伝統や資源を活かしてその地域の魅力を高め、地域経済の活性化につないでいく「地域ブランディング」が注目されている。「差別化の源泉(エクイティ)をうまく活用して、農と食をつなぐビジネスモデルを構築することが、地域全体のブランド価値を高める有効な手段だと考えています」と話す髙橋准教授はブランド研究の裾野を地域にまで広げ、地域ブランディングの研究にも着手。その一例として挙げられるのは、「食都神戸」というスローガンを掲げる神戸市との共同研究だ。神戸市は交易によって栄えてきた背景から、他の都市では見られない独自の食文化を醸成してきた。このポテンシャルを最大限、活用するため、1次・2次・3次産業の連携によって相乗効果を生み出す「6次産業化」にも取り組んでいる。髙橋准教授は学生とともに、6次産業企画提案会に4年にわたって出場。優秀賞などを受賞してきた。「提案会を通して、農家やシェフ、メーカーなど多岐にわたる立場の人々と関係性を築きました。交流する中で発見した課題を解決して、地域の価値向上に貢献したいです」。そう語る髙橋准教授の研究フィールドは国内だけにとどまらない。成功事例を研究するために毎年、スペインのサン・セバスチャンを訪問している。サン・セバスチャンは豊かな食文化が根付く街であり、世界各国から多くの観光客が押し寄せる。しかし、美食の街として認知されるようになったのはそう長くない。サン・セバスチャンが美食の街としてのブランディングに成功した秘訣は、レシピの「オープンソース化」とそれを支える食文化と風土、1次産業の存在であると髙橋准教授は話す。街を活性化させたいと願うシェフ達は、習得した技術や手法を惜しみなく公開。それを後押しするように、行政はプロモーションによる支援を行ったそうだ。「世界的にも地域ブランドに関する研究は成熟しておらず、有力な理論やモデルは未だ構築されていません。国内外問わず、成功した事例を積極的に調査し、得られた情報に基づき、重要なポイントの発見や理論化に努めていきたいです」と髙橋准教授は意気込みを語った。

現場主義を徹底。理論と実務を結ぶ「実学」としてのマーケティングをめざして。

 髙橋准教授は本学に着任してから「京都の伝統産業新価値創造マーケティング」にも注力している。「京都には西陣織や京友禅をはじめとした74もの伝統産業が存在します。伝統産業や地場産業で受け継がれてきた技術やノウハウを活かしつつ、現代のニーズに対応していくことで、その価値を後世に伝承していくことが重要です」。髙橋准教授は念珠や京友禅など縮小傾向にある伝統産業の再生を図るため、企業を相手に学生らがアイデアを練り上げ、伝統産業を活用した企画を提案(写真2)。さらに、行政機関との連携を希望していた髙橋准教授は京都市役所や世界的な人気を誇るコーヒーチェーン店との産官学連携も始めた。「伝統産業に携わっていく中で、技術力や素材、予算などを多角的に分析することで売れる商品の法則性が徐々に分かってきました。現在は、その分析を通じて法則性の明確化を図っています」。髙橋准教授が地域ブランディングの研究に取り組む中でモットーにしているのは、現場・現物・現実に基づく三現主義だ。現場を訪問して、生産者などの当事者に直接取材したり、アンケートを実施したりすることで、生の情報を収集(写真3)。それらのデータは、企業勤務時代にマーケティングやコンサルティングのノウハウを身につけた髙橋准教授ならではの多彩なアプローチで綿密に分析される。アカデミックな知見と実務的なノウハウを融合させて、目には見えない「ブランド」の可能性に迫る髙橋准教授の研究は、企業や地域、伝統産業など幅広い分野に新たな価値を生み出すだろう。

髙橋 広行 商学部 商学科 准教授
近畿大学理工学部卒業後、株式会社洋菓子のヒロタや株式会社ズーム(現・ズーム・デザイン)、株式会社日本マーケティング研究所、イプソス株式会社で広告やマーケティング・リサーチ、コンサルティングといった幅広い業務に従事。その後、関西学院大学大学院商学研究科商学専攻博士課程後期課程修了。流通科学大学商学部准教授を経て、現職に至る。2011年には著書『カテゴリーの役割と構造―ブランドとライフスタイルをつなぐもの』(写真1)で、日本商業学会学会賞と日本広告学会賞を受賞した。

同志社大学リエゾンオフィスニューズレター「LIAISON」 vol.54 掲載
(写真1)『カテゴリーの役割と構造―ブランドとライフスタイルをつなぐもの』(関西学院大学出版会)

(写真1)『カテゴリーの役割と構造―ブランドとライフスタイルをつなぐもの』(関西学院大学出版会)

(写真2)学生が企画提案した京友禅のお皿(4枚で1つの柄を作る)

(写真2)学生が企画提案した京友禅のお皿(4枚で1つの柄を作る)

(写真3)伝統産業現場の実地調査風景

(写真3)伝統産業現場の実地調査風景