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健康寿命の延伸を目指す国際的な総合的研究基盤 先端的教育研究拠点「宇宙生体医工学プロジェクト」【代表 辻内 伸好(理工学部機械システム工学科教授)】

'18年10月1日 更新
 新たな領域である「宇宙生体医工学」を研究対象にした本プロジェクトは、今年4月に本学が展開する先端的教育研究拠点の一つに選定された。「人間の健康に関する研究」をテーマに本学の理工学、生命医科学、スポーツ健康科学、脳科学などの各分野の統合化を図り、NASA(アメリカ航空宇宙局)ジョンソン宇宙センター、カリフォルニア大学、イタリア・ジェノヴァ大学などとの共同研究を展開。微小重力暴露模擬実験などを起点に、歩行困難者などに向けた新規運動療法や先進機器の開発、骨格筋萎縮の抑制や防止、再生を促す創薬研究への寄与、肥満症の予防や改善、軟骨や血管の再生治療への貢献など数多くの成果を目指している。

4つの研究グループで多角的に探究

 超高齢化社会を迎えた日本では、平均寿命と健康寿命の乖離が大きな課題になっている。健康寿命とは健康で自立して活動できる生活期間のことである。最近の厚生労働省調査(2016年)では男性72.1歳、女性74.8歳となっており、平均寿命とは10年前後の差が生じている。身体諸機能を低下させる主な原因は高齢化に伴うサルコペニア(加齢性筋肉減弱症)、骨粗しょう症などによるロコモーティブシンドローム(運動器障害)、糖尿病や高血圧、脂質異常症を発症するメタボリックシンドローム(代謝障害)である。健康上の理由によってQOL(quality of life)が損なわれない健康寿命の延伸を図るためには、これらの原因を速やかに解明し、効果の高い対処策を見出さなければならない。しかし、現状では未知の領域も多く、各分野の最先端の探究を結集した統合的な研究基盤の形成が必要となっている。
 健康寿命の延伸を阻害する身体諸機能の低下は、長期宇宙滞在などの微小重力環境下で助長されるために、1-G環境下での研究と比較して各段の伸展が期待できる。そこで、本プロジェクトでは微小重力暴露模擬試験などを起点にした「宇宙生体医工学」による原因と対応策の探究を推進している。研究体制は4つの研究グループで構成されている。グループ1ではマウス、ラットを使った実験により、抗重力筋活動、老化や活性酸素生産などが抗重力筋、脳・運動神経、脂肪組織の容積や機能、遺伝子・タンパク質発現に及ぼす影響を研究。グループ2は両シンドローム研究の標的となる骨格筋━脂肪組織のクロストーク(シグナル伝達時に他の経路と影響し合うこと)と体脂肪量の決定因子となる脂肪由来幹細胞(ADSC)の分化制御の基盤的な知見の提供を目指している。グループ3は低重力環境暴露などによる抗重力筋活動抑制、運動が脳・神経系に及ぼす影響を追究。グループ4ではリハビリテーション処方や装置の開発をテーマに、月(1/6-G)と火星(3/8-G)の環境に相応する体重免荷状態での歩行や走行のパターンを研究している。

最先端の計測装置でNASAと連携

 「今年の4月末から5月初めにかけてNASA(アメリカ航空宇宙局)ジョンソン宇宙センターに行ってきました。本学の理工学研究科に在学中の荒木啓輔君もスタッフの一員として同行しました。本センターの低重力環境をシミュレートする「アルゴシステム(ARGOS)」を用いた研究に、私たちの研究成果である最先端の計測装置が役立つのではないかと彼らが注目し、まず前実験を実施したいという要望があったのです。荒木啓輔君には計測装置の操作を担当してもらっています。現在は共同研究の契約を結ぼうとしている段階です。本年の9~10月にも本実験を行うことになると思います」。例えば、火星までは最短距離でも片道で約半年を要し、この間は無重力状態になり、火星では地球の約8分の3の重力下で長期滞在しなければならない。このような宇宙探査の過酷な状況に対応するために、世界各国で多角的な視点から研究が推進されており、本プロジェクトは宇宙と地球の相互で、「人間の健康の保持」に大きく貢献できると考えている。本プロジェクトに期待されている成果はきわめて多岐にわたる。具体的にはサルコペニアなどの発病原因の探究による骨格筋萎縮の抑制や防止、再生を促す創薬開発への寄与。身体活動で中心的な役割を担う抗重力筋活動の調整機構の解明に基づく効果的なリハビリテーション処方策や踵から着地する実際の走行に近いトレーニングを可能にする自走式トレッドミルなどの機器の具現化。クロストークを仲介する新規生理活性物質と脂肪由来幹細胞の分化制御構造の特定による肥満症の予防・改善、骨格筋や軟骨、血管の再生治療への貢献。さらに、各分野の企業に対する積極的な知見・技術の発信による産官学連携の推進、次代に向けた宇宙開発を担う人材や起業家マインドの育成も重要なテーマである。また、NASAジョンソン宇宙センターを始めとする各国研究機関との長期的視点に立った共同研究による国際的連携拠点の形成による世界への貢献も目指している。
宇宙生体医工学プロジェクト 代表 辻内 伸好(理工学部機械システム工学科教授)
 新たな領域である「宇宙生体医工学」を研究対象にした本プロジェクトは、今年4月に本学が展開する先端的教育研究拠点の一つに選定された。「人間の健康に関する研究」をテーマに本学の理工学、生命医科学、スポーツ健康科学、脳科学などの各分野の統合化を図り、NASA(アメリカ航空宇宙局)ジョンソン宇宙センター、カリフォルニア大学、イタリア・ジェノヴァ大学などとの共同研究を展開。微小重力暴露模擬実験などを起点に、歩行困難者などに向けた新規運動療法や先進機器の開発、骨格筋萎縮の抑制や防止、再生を促す創薬研究への寄与、肥満症の予防や改善、軟骨や血管の再生治療への貢献など数多くの成果を目指している。

4つの研究グループで多角的に探究

 超高齢化社会を迎えた日本では、平均寿命と健康寿命の乖離が大きな課題になっている。健康寿命とは健康で自立して活動できる生活期間のことである。最近の厚生労働省調査(2016年)では男性72.1歳、女性74.8歳となっており、平均寿命とは10年前後の差が生じている。身体諸機能を低下させる主な原因は高齢化に伴うサルコペニア(加齢性筋肉減弱症)、骨粗しょう症などによるロコモーティブシンドローム(運動器障害)、糖尿病や高血圧、脂質異常症を発症するメタボリックシンドローム(代謝障害)である。健康上の理由によってQOL(quality of life)が損なわれない健康寿命の延伸を図るためには、これらの原因を速やかに解明し、効果の高い対処策を見出さなければならない。しかし、現状では未知の領域も多く、各分野の最先端の探究を結集した統合的な研究基盤の形成が必要となっている。
 健康寿命の延伸を阻害する身体諸機能の低下は、長期宇宙滞在などの微小重力環境下で助長されるために、1-G環境下での研究と比較して各段の伸展が期待できる。そこで、本プロジェクトでは微小重力暴露模擬試験などを起点にした「宇宙生体医工学」による原因と対応策の探究を推進している。研究体制は4つの研究グループで構成されている。グループ1ではマウス、ラットを使った実験により、抗重力筋活動、老化や活性酸素生産などが抗重力筋、脳・運動神経、脂肪組織の容積や機能、遺伝子・タンパク質発現に及ぼす影響を研究。グループ2は両シンドローム研究の標的となる骨格筋━脂肪組織のクロストーク(シグナル伝達時に他の経路と影響し合うこと)と体脂肪量の決定因子となる脂肪由来幹細胞(ADSC)の分化制御の基盤的な知見の提供を目指している。グループ3は低重力環境暴露などによる抗重力筋活動抑制、運動が脳・神経系に及ぼす影響を追究。グループ4ではリハビリテーション処方や装置の開発をテーマに、月(1/6-G)と火星(3/8-G)の環境に相応する体重免荷状態での歩行や走行のパターンを研究している。

最先端の計測装置でNASAと連携

 「今年の4月末から5月初めにかけてNASA(アメリカ航空宇宙局)ジョンソン宇宙センターに行ってきました。本学の理工学研究科に在学中の荒木啓輔君もスタッフの一員として同行しました。本センターの低重力環境をシミュレートする「アルゴシステム(ARGOS)」を用いた研究に、私たちの研究成果である最先端の計測装置が役立つのではないかと彼らが注目し、まず前実験を実施したいという要望があったのです。荒木啓輔君には計測装置の操作を担当してもらっています。現在は共同研究の契約を結ぼうとしている段階です。本年の9~10月にも本実験を行うことになると思います」。例えば、火星までは最短距離でも片道で約半年を要し、この間は無重力状態になり、火星では地球の約8分の3の重力下で長期滞在しなければならない。このような宇宙探査の過酷な状況に対応するために、世界各国で多角的な視点から研究が推進されており、本プロジェクトは宇宙と地球の相互で、「人間の健康の保持」に大きく貢献できると考えている。本プロジェクトに期待されている成果はきわめて多岐にわたる。具体的にはサルコペニアなどの発病原因の探究による骨格筋萎縮の抑制や防止、再生を促す創薬開発への寄与。身体活動で中心的な役割を担う抗重力筋活動の調整機構の解明に基づく効果的なリハビリテーション処方策や踵から着地する実際の走行に近いトレーニングを可能にする自走式トレッドミルなどの機器の具現化。クロストークを仲介する新規生理活性物質と脂肪由来幹細胞の分化制御構造の特定による肥満症の予防・改善、骨格筋や軟骨、血管の再生治療への貢献。さらに、各分野の企業に対する積極的な知見・技術の発信による産官学連携の推進、次代に向けた宇宙開発を担う人材や起業家マインドの育成も重要なテーマである。また、NASAジョンソン宇宙センターを始めとする各国研究機関との長期的視点に立った共同研究による国際的連携拠点の形成による世界への貢献も目指している。
NASA ジョンソン宇宙センターでの数多くの貴重な経験が明日につながる大きな学びになりました。
以前はロボットに興味があり、その分野に進みたいと考えていました。理工学研究科で現在の研究テーマに出会い、これからの社会に大きく貢献できる宇宙生体医工学に強い関心を抱くようになりました。初めて訪れたNASA ジョンソン宇宙センターは、自動車でなければ移動できないほど広大で、実験施設だけでなく、国際宇宙ステーションのモジュールや試作ロボットなど様々なものを見学することができ、貴重な経験になりました。低重力環境をシミュレートできる「アルゴシステム(ARGOS)」の研究開発の現場に立った時は、心から感動しました。今年秋の実験に参加できることを楽しみにしています。
学生インタビュー

荒木 啓輔 (あらき けいすけ)さん
【理工学研究科機械工学専攻博士課程(前期)1年次生】

NASA ジョンソン宇宙センターでの数多くの貴重な経験が明日につながる大きな学びになりました。
以前はロボットに興味があり、その分野に進みたいと考えていました。理工学研究科で現在の研究テーマに出会い、これからの社会に大きく貢献できる宇宙生体医工学に強い関心を抱くようになりました。初めて訪れたNASA ジョンソン宇宙センターは、自動車でなければ移動できないほど広大で、実験施設だけでなく、国際宇宙ステーションのモジュールや試作ロボットなど様々なものを見学することができ、貴重な経験になりました。低重力環境をシミュレートできる「アルゴシステム(ARGOS)」の研究開発の現場に立った時は、心から感動しました。今年秋の実験に参加できることを楽しみにしています。
宇宙生体医工学プロジェクト 代表 辻内 伸好【理工学部機械システム工学科教授】
1980年神戸大学工学部機械工学科卒業、1982年神戸大学修士課程工学研究科生産機械工学専攻修了。運動と振動の解析と制御および人体情報の計測と人間工学に関する研究などを行っている。日本設計工学会平成28年度論文賞など数多く学術賞を受賞。大自然を愛し、学生時代からワンダーフォーゲルやスキーに親しみ、最近のオフタイムは、主に鳥取や中国地方で渓流釣りを満喫している。

同志社大学通信One Purpose195号掲載
宇宙生体医工学プロジェクト 代表 辻内 伸好【理工学部機械システム工学科教授】
1980年神戸大学工学部機械工学科卒業、1982年神戸大学修士課程工学研究科生産機械工学専攻修了。運動と振動の解析と制御および人体情報の計測と人間工学に関する研究などを行っている。日本設計工学会平成28年度論文賞など数多く学術賞を受賞。大自然を愛し、学生時代からワンダーフォーゲルやスキーに親しみ、最近のオフタイムは、主に鳥取や中国地方で渓流釣りを満喫している。

同志社大学通信One Purpose195号掲載
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