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持続可能な社会の創出に大きく貢献する 中小企業の卓越したマネジメントを科学的に探究【中小企業マネジメント研究センター センター長 関 智宏 (商学部教授)】

'18年11月9日 更新
 2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、国際的なコンセンサスである。この目標達成に向けて全企業数の大多数を占める中小企業が担うべき役割は大きい。本年4月に設置された中小企業マネジメント研究センターでは、特に100年以上続く長寿企業に着目し、その存続と伸展を支える卓越した企業経営の新たな在り方を科学的に分析・考察することによって、日本はもとより世界の中小企業の発展に寄与し、持続可能な国際社会の実現に貢献したいと考えている。

SDGs に役立つファクターを読み解く

 日本の中小企業は全企業数の中で99.7%を占め、従業員数も60~70%に達しており、日本の経済社会において大きな役割を担っている。しかし、その実態は十分に理解されておらず、社会的な評価は低い。「日本は1950年代半ば頃から高度成長期に入りますが、この頃に政府が経済成長という国家目標の達成のために大手企業を中心に政策展開したことにより、『日本経済を牽引するのは大企業』だという社会通念が形成されました。これが現在まで受け継がれて、中小企業の価値が貶められる起因になったと考えています」。問題なのは大多数の中小企業が社名も事業内容もほとんど国民に認知されていないことであり、今日の最大の課題であると関智宏センター長は指摘する。
 中小企業の中には傑出した企業力を発揮し、発展し続けている企業が数多く存在している。その象徴が創業以来100年以上の歴史を誇る長寿企業であり、世界的にも注目されている。「このような『100年企業』の長寿の要因を科学的に分析し、卓越した経営の在り方を考察することは、日本の中小企業の存立維持や社会的認識の向上に寄与するだけでなく、世界各国の中小企業研究にも大きく貢献するものであると確信しています」。2015年に国連サミットで「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択された。これは国連加盟193カ国が2016年から2030年の15年間で達成を目指す国際目標であり、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットで構成されている。長寿企業の探究は、この世界的なコンセンサスに合致するものであり、本研究センターでは「持続可能な開発目標(SDGs)」に役立つファクターを読み解き、全世界に発信したいと考えている。
中小企業マネジメント研究センター センター長 関 智宏 【商学部教授】

中小企業マネジメント研究センター
センター長 関 智宏
【商学部教授】

 2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、国際的なコンセンサスである。この目標達成に向けて全企業数の大多数を占める中小企業が担うべき役割は大きい。本年4月に設置された中小企業マネジメント研究センターでは、特に100年以上続く長寿企業に着目し、その存続と伸展を支える卓越した企業経営の新たな在り方を科学的に分析・考察することによって、日本はもとより世界の中小企業の発展に寄与し、持続可能な国際社会の実現に貢献したいと考えている。

SDGs に役立つファクターを読み解く

 日本の中小企業は全企業数の中で99.7%を占め、従業員数も60~70%に達しており、日本の経済社会において大きな役割を担っている。しかし、その実態は十分に理解されておらず、社会的な評価は低い。「日本は1950年代半ば頃から高度成長期に入りますが、この頃に政府が経済成長という国家目標の達成のために大手企業を中心に政策展開したことにより、『日本経済を牽引するのは大企業』だという社会通念が形成されました。これが現在まで受け継がれて、中小企業の価値が貶められる起因になったと考えています」。問題なのは大多数の中小企業が社名も事業内容もほとんど国民に認知されていないことであり、今日の最大の課題であると関智宏センター長は指摘する。
 中小企業の中には傑出した企業力を発揮し、発展し続けている企業が数多く存在している。その象徴が創業以来100年以上の歴史を誇る長寿企業であり、世界的にも注目されている。「このような『100年企業』の長寿の要因を科学的に分析し、卓越した経営の在り方を考察することは、日本の中小企業の存立維持や社会的認識の向上に寄与するだけでなく、世界各国の中小企業研究にも大きく貢献するものであると確信しています」。2015年に国連サミットで「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択された。これは国連加盟193カ国が2016年から2030年の15年間で達成を目指す国際目標であり、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットで構成されている。長寿企業の探究は、この世界的なコンセンサスに合致するものであり、本研究センターでは「持続可能な開発目標(SDGs)」に役立つファクターを読み解き、全世界に発信したいと考えている。

長寿企業の理念に学ぶ永続の秘訣

本研究センターの嘱託研究員として共同研究に参画している藤村雄志研究員は、一般社団法人「100年経営研究機構」の専務理事・事務局長を務めており、2001年からベンチャー企業の支援にも力を注いできた。「100年以上続く日本の企業は25,321社(2014年末現在)を超え、世界の100年超企業の約40%を占めています。毎年、視察ツアーで訪問している石川県の老舗旅館も1300年の歴史を誇る日本屈指の老舗です。46代目のご当主に企業永続の秘訣をお尋ねしたのですが、一瞬の沈黙を経て返ってきた言葉は予想外のものでした。『そのようなことよりも、私が今気がかりなのはパリ協定だ』とおっしゃったのです。気候変動抑制に関する国際的協定の進捗状況を何よりも注視しておられる姿に、代々受け継がれてきた共生への深い思い、利益に優る価値にこだわる老舗企業の矜持に感銘を受けました」。経営哲学は企業永続の根幹をなすものであり、江戸時代に商いの道を説いた「石門心学」の始祖・石田梅岩の教えなども企業理念の形成に多大な影響を与えてきたと、長寿企業の歴史をふり返る。また、創業家などが経営(所有)するファミリービジネスも日本の「100年企業」の特徴であり、守り継がれる事業継承や事業戦略、ガバナンスの在り方にも学ぶ点は多いという。

新たな国際的研究拠点の確立を目指す

 「サステナビリティ(持続可能性)」という概念が普及する中で、企業投資においても変化が起きている。企業の長期的な成長のためには環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の観点が不可欠だという視座に基づき、この3つの頭文字を取ったESG投資が重視されている。「次世代を担う大学生の考え方にも、新たな傾向が生じています。社会的課題の解決に貢献する次代型企業で活躍したいという声を数多く耳にするようになりました。これは有能な人材を確保したい中小企業にとって大きなチャンスだと考えています。彼ら彼女たちが求めているのは、明確なビジョンに裏付けられたリーダーシップであり、果敢なチャレンジ精神で時代を先取りできる経営者です」と、関智宏センター長は語る。
 本研究センターでは、今年4月に延世大学校経営大学の李志満教授と京都の老舗「三嶋亭」の三嶌太郎氏を講師に招き、第1回研究会を開催。7月にも近畿経済産業局中小企業政策調査課による講演を実施した。今後もSDGsをメインテーマに研究会などを継続開催しながら研究員の充実化を図り、考察対象も欧米諸国から東南アジアまで拡大する予定である。同志社大学は中小企業研究の中核として日本全国に数多くの中小企業研究者を輩出してきた。この歴史を礎とした新たな国際的研究拠点の確立を本研究センターは目指している。
センター設立以来、センターのマネジメントに関わる藤村雄志嘱託研究員

センター設立以来、
センターのマネジメントに関わる藤村雄志嘱託研究員

長寿企業の理念に学ぶ永続の秘訣

本研究センターの嘱託研究員として共同研究に参画している藤村雄志研究員は、一般社団法人「100年経営研究機構」の専務理事・事務局長を務めており、2001年からベンチャー企業の支援にも力を注いできた。「100年以上続く日本の企業は25,321社(2014年末現在)を超え、世界の100年超企業の約40%を占めています。毎年、視察ツアーで訪問している石川県の老舗旅館も1300年の歴史を誇る日本屈指の老舗です。46代目のご当主に企業永続の秘訣をお尋ねしたのですが、一瞬の沈黙を経て返ってきた言葉は予想外のものでした。『そのようなことよりも、私が今気がかりなのはパリ協定だ』とおっしゃったのです。気候変動抑制に関する国際的協定の進捗状況を何よりも注視しておられる姿に、代々受け継がれてきた共生への深い思い、利益に優る価値にこだわる老舗企業の矜持に感銘を受けました」。経営哲学は企業永続の根幹をなすものであり、江戸時代に商いの道を説いた「石門心学」の始祖・石田梅岩の教えなども企業理念の形成に多大な影響を与えてきたと、長寿企業の歴史をふり返る。また、創業家などが経営(所有)するファミリービジネスも日本の「100年企業」の特徴であり、守り継がれる事業継承や事業戦略、ガバナンスの在り方にも学ぶ点は多いという。

新たな国際的研究拠点の確立を目指す

 「サステナビリティ(持続可能性)」という概念が普及する中で、企業投資においても変化が起きている。企業の長期的な成長のためには環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の観点が不可欠だという視座に基づき、この3つの頭文字を取ったESG投資が重視されている。「次世代を担う大学生の考え方にも、新たな傾向が生じています。社会的課題の解決に貢献する次代型企業で活躍したいという声を数多く耳にするようになりました。これは有能な人材を確保したい中小企業にとって大きなチャンスだと考えています。彼ら彼女たちが求めているのは、明確なビジョンに裏付けられたリーダーシップであり、果敢なチャレンジ精神で時代を先取りできる経営者です」と、関智宏センター長は語る。
 本研究センターでは、今年4月に延世大学校経営大学の李志満教授と京都の老舗「三嶋亭」の三嶌太郎氏を講師に招き、第1回研究会を開催。7月にも近畿経済産業局中小企業政策調査課による講演を実施した。今後もSDGsをメインテーマに研究会などを継続開催しながら研究員の充実化を図り、考察対象も欧米諸国から東南アジアまで拡大する予定である。同志社大学は中小企業研究の中核として日本全国に数多くの中小企業研究者を輩出してきた。この歴史を礎とした新たな国際的研究拠点の確立を本研究センターは目指している。
中小企業マネジメント研究センター センター長 関 智宏【商学部教授】
2000年神戸商科大学商経学部飛び級、2006年神戸商科大学経営学研究科博士後期課程単位取得満期退学。
出身地である山口県宇部市で企業城下町の衰退を高校時代に体験し、大企業と下請中小企業群との関係の在り方に強い問題意識を抱いたのが、現在の中小企業研究の契機となる。オフタイムは胎動するクラフトビールを愛飲し、これをテーマにした企業論も構想中である。

同志社大学通信One Purpose196号掲載
中小企業マネジメント研究センター センター長 関 智宏【商学部教授】
2000年神戸商科大学商経学部飛び級、2006年神戸商科大学経営学研究科博士後期課程単位取得満期退学。
出身地である山口県宇部市で企業城下町の衰退を高校時代に体験し、大企業と下請中小企業群との関係の在り方に強い問題意識を抱いたのが、現在の中小企業研究の契機となる。オフタイムは胎動するクラフトビールを愛飲し、これをテーマにした企業論も構想中である。

同志社大学通信One Purpose196号掲載
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