'19年9月18日 更新
「同志社大学新島塾 合宿で鍛える知的基礎体力」3日目
3日目は、前日のレポートの回収から始まりました。塾生は昨日も夜遅くまでレポート作成に苦心して取り組んでおり、自分の考えを言葉にすることの難しさと、日常的な訓練の積み重ねの必要性、そして期限までに完成させることの重要性を体感しました。講師は前日のレポート課題を振り返り「おおむねよく出来ているが、期限までに完成させることがとても重要である。時間内に60点のものが完成すればOKだが、時間を過ぎて90点のものを仕上げても0点と同じ。しかし時間内に55点のものではだめで、60点は取れていないといけない。」と自身の外交官としての経験を交えてお話しがあり、さらに「自分の考えを言葉にするときは『言葉を定義すること』について無自覚ではいけない。暫定的なものでもよいから定義することが重要だ。学部生の時代からその点を意識して書くように。」という助言がありました。
昨日のレポート課題を元に行ったディベートでは、自身の考えや信念を押し通すのではなく、与えられたテーマに沿った議論を行わなければ意味がないし、いくら知識や情報量があっても、相手が分からないよう言葉で話しては正しく伝わらず、何も言っていないのと同じである。議論の場では「と思います。」「かもしれない。」は禁句だ。といった講師からの言葉一つひとつに新しい気付きを得たようでした。
このディベートでも塾生は、無定義のテーマについて議論することの危うさとともに、高校レベルの数学・哲学・論理学に関する知識の欠如に改めて気付いたようです。
最後に「2日目の朝に紹介した新聞記事にあったように、著者はダボス会議に招かれるなど、既にこの本は現実世界のエリート階層に影響を与えはじめているが、世間のトレンドになるまではまだ時間が掛かる。この本には相当の問題をはらんでいる点も見受けられるが、相当の影響力を持っている。一方、将来この本が話題になったとき、本の内容を鵜呑みにするのではなく、定義のないものを議論することの危うさに気付かないといけないと伝えたかった。」と、この本を課題図書とした理由を説明されました。
「新島塾の合宿3泊4日で皆さんに与えられる学びの刺激は限られている。学び続けるには動機がいるが、それは何ですか。初日に学長は「夢」という言葉で話された。持続可能な夢を持って欲しい。それがエゴイスティックなものでは周囲は付いてこないが、大義名分だけでは長続きしない。エゴと大義名分をどう両立させるかの連立方程式を各人が組み立てて欲しい。私たちの仕事はそのきっかけとなる刺激を与えることだ。」という言葉とともに、佐藤優講師のセッションは終了しました。
午後からは「資源・情報・エネルギー」をテーマに「文系学生に理系の学習がなぜ必要なのか」という論点からご自身の専門分野である物理科学と絡め、高校レベルの学び直しをベースに、新聞紙上をにぎわすニュースの中に潜む科学的要素が理解できるようになることを到達点とする後藤 琢也講師・学長補佐のセッションがはじまりました。
「同志社大学の学生は、他の私立大学や国立大学の学生となんら研究力の面で遜色なく、みなさん自身が思っているよりも優秀だ。自分の専門分野を見つけ、様々な視点から広く俯瞰的にとらえられるような総合知を身に付けてほしい。」という想いを込めたメッセージに聞き入っていました。
課題図書において繰り返し触れられている「エネルギー」の厳密な定義がされていないことについて科学的な見地から触れながら、必ずしも肯定的な反応ではないという見解を示しつつ、古くは17世紀のボイルの時代から、人間はより小さいエネルギーで最大の仕事をすることを目指すことがモチベーションになっていて、軍事兵器も情報通信網もその例に漏れない。かつて情報を握っているのは国家権力だったが、今や民間企業が握っていて仮想通貨も情報から作り出せる時代だが、ホモ・デウスに書かれたような世界になるにはまだ材料が揃っておらず、遠いのではないか。というお話しがされました。
「『このままでは仕事がなくなるのではないか。』という話題や懸念自体は最近表れたものではなく、ずっと昔からあるし、その間には新しい仕事も生まれ続けている。未来は真っ暗ではないが、そこまで明るいものでもない。これまで物理科学の話を中心にしたが、少し理解が難しかったかも知れない。このような内容が分かるようになるにはまずは専門を1つ極めなさい。極めた後、広げていくと相転移が起こり、いつか繋がる日が来る。ホモ・デウスでいうアップグレードを好き嫌いせず進めていくと、自身の専門性に近いところからその周辺領域が見えるようになる。」というまとめに引き続いて
レポート課題
「今後、どんな仕事にも就くことができないとされる無用者階級(ユースレスクラス)は本当に形成されるのか」について自身の考えをまとめることが課されました。
合宿も3日が経過して疲れもピークに達している学生も多いですが、この日も夜遅くまで個人またはグループで取り組んでいました。
合宿も明日で最終日です。
合宿で鍛える知的基礎体力 4日目の様子
合宿で鍛える知的基礎体力 2日目の様子
合宿で鍛える知的基礎体力 1日目の様子
(事務局・高等研究教育院事務室)
「同志社大学新島塾 合宿で鍛える知的基礎体力」3日目
3日目は、前日のレポートの回収から始まりました。塾生は昨日も夜遅くまでレポート作成に苦心して取り組んでおり、自分の考えを言葉にすることの難しさと、日常的な訓練の積み重ねの必要性、そして期限までに完成させることの重要性を体感しました。講師は前日のレポート課題を振り返り「おおむねよく出来ているが、期限までに完成させることがとても重要である。時間内に60点のものが完成すればOKだが、時間を過ぎて90点のものを仕上げても0点と同じ。しかし時間内に55点のものではだめで、60点は取れていないといけない。」と自身の外交官としての経験を交えてお話しがあり、さらに「自分の考えを言葉にするときは『言葉を定義すること』について無自覚ではいけない。暫定的なものでもよいから定義することが重要だ。学部生の時代からその点を意識して書くように。」という助言がありました。
昨日のレポート課題を元に行ったディベートでは、自身の考えや信念を押し通すのではなく、与えられたテーマに沿った議論を行わなければ意味がないし、いくら知識や情報量があっても、相手が分からないよう言葉で話しては正しく伝わらず、何も言っていないのと同じである。議論の場では「と思います。」「かもしれない。」は禁句だ。といった講師からの言葉一つひとつに新しい気付きを得たようでした。
このディベートでも塾生は、無定義のテーマについて議論することの危うさとともに、高校レベルの数学・哲学・論理学に関する知識の欠如に改めて気付いたようです。
最後に「2日目の朝に紹介した新聞記事にあったように、著者はダボス会議に招かれるなど、既にこの本は現実世界のエリート階層に影響を与えはじめているが、世間のトレンドになるまではまだ時間が掛かる。この本には相当の問題をはらんでいる点も見受けられるが、相当の影響力を持っている。一方、将来この本が話題になったとき、本の内容を鵜呑みにするのではなく、定義のないものを議論することの危うさに気付かないといけないと伝えたかった。」と、この本を課題図書とした理由を説明されました。
「新島塾の合宿3泊4日で皆さんに与えられる学びの刺激は限られている。学び続けるには動機がいるが、それは何ですか。初日に学長は「夢」という言葉で話された。持続可能な夢を持って欲しい。それがエゴイスティックなものでは周囲は付いてこないが、大義名分だけでは長続きしない。エゴと大義名分をどう両立させるかの連立方程式を各人が組み立てて欲しい。私たちの仕事はそのきっかけとなる刺激を与えることだ。」という言葉とともに、佐藤優講師のセッションは終了しました。
午後からは「資源・情報・エネルギー」をテーマに「文系学生に理系の学習がなぜ必要なのか」という論点からご自身の専門分野である物理科学と絡め、高校レベルの学び直しをベースに、新聞紙上をにぎわすニュースの中に潜む科学的要素が理解できるようになることを到達点とする後藤 琢也講師・学長補佐のセッションがはじまりました。
「同志社大学の学生は、他の私立大学や国立大学の学生となんら研究力の面で遜色なく、みなさん自身が思っているよりも優秀だ。自分の専門分野を見つけ、様々な視点から広く俯瞰的にとらえられるような総合知を身に付けてほしい。」という想いを込めたメッセージに聞き入っていました。
課題図書において繰り返し触れられている「エネルギー」の厳密な定義がされていないことについて科学的な見地から触れながら、必ずしも肯定的な反応ではないという見解を示しつつ、古くは17世紀のボイルの時代から、人間はより小さいエネルギーで最大の仕事をすることを目指すことがモチベーションになっていて、軍事兵器も情報通信網もその例に漏れない。かつて情報を握っているのは国家権力だったが、今や民間企業が握っていて仮想通貨も情報から作り出せる時代だが、ホモ・デウスに書かれたような世界になるにはまだ材料が揃っておらず、遠いのではないか。というお話しがされました。
「『このままでは仕事がなくなるのではないか。』という話題や懸念自体は最近表れたものではなく、ずっと昔からあるし、その間には新しい仕事も生まれ続けている。未来は真っ暗ではないが、そこまで明るいものでもない。これまで物理科学の話を中心にしたが、少し理解が難しかったかも知れない。このような内容が分かるようになるにはまずは専門を1つ極めなさい。極めた後、広げていくと相転移が起こり、いつか繋がる日が来る。ホモ・デウスでいうアップグレードを好き嫌いせず進めていくと、自身の専門性に近いところからその周辺領域が見えるようになる。」というまとめに引き続いて
レポート課題
「今後、どんな仕事にも就くことができないとされる無用者階級(ユースレスクラス)は本当に形成されるのか」について自身の考えをまとめることが課されました。
合宿も3日が経過して疲れもピークに達している学生も多いですが、この日も夜遅くまで個人またはグループで取り組んでいました。
合宿も明日で最終日です。
合宿で鍛える知的基礎体力 4日目の様子
合宿で鍛える知的基礎体力 2日目の様子
合宿で鍛える知的基礎体力 1日目の様子
(事務局・高等研究教育院事務室)