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第34代同志社大学長正式決定記者会見を開催

'19年12月12日 更新
 2019年12月4日(水)13:30~ 第34代同志社大学長正式決定記者会見が、寒梅館6階大会議室にて開催されました。

 次期学長に正式決定した、植木朝子文学部教授は、多様性を打ち出した教育の実現と社会との連携を重視する旨の所懐を述べました。


記者会見での所懐は以下の通りです。

 学長選挙にあたっては、①:創立150周年に向けて策定した「同志社大学ビジョン2025」の発展的継承、②:教育・研究成果の共有と各部署の連携強化、③:多様性と寛容に満ちた環境作り、④:大学院教育の充実、⑤:キャンパス施設の充実、⑥:京都という地の利を活かした教育・研究・広報 と6つの基本政策を掲げました。本日は、その基本政策を貫く観点として、私が重要だと考える2点―ダイバーシティの推進および社会との連携―についてお話ししたいと思います。

 2005年に同志社大学に着任しましたが、学外出身者として大変感動したのは、「人一人は大切なり」という新島襄の精神が、キャンパス全体に深く浸透しており、14学部16研究科の幅広い教育の背景に、良心を信頼し合う、人と人の関係が確かに構築されていることでした。
 2025年には創立150周年をむかえる本学には、その歴史の中ではぐくまれてきた、すぐれた伝統、蓄積があります。しかし、それはまだ点として存在し、十分に生かされているとはいえない面があります。点を線とし、あるいは面として再構成し、未来を開いていかなければなりません。また、建学の精神「良心教育」は、さきほど申しましたように、全学に深く浸透していると感じていますが、昨今、これを裏切る出来事があることも事実です。事実を真摯に受け止め、教職員一体となって、改めて良心教育の実質化をはからなければならないと思っています。具体的には、キリスト教の歴史や同志社大学の歴史を学ぶ同志社科目、チャペル・アワー、良心学研究センターのシンポジウム、教職科目の人権教育論など、本学には多様な形態で良心とは何かを考える機会が用意されていますのでその一つ一つを充実させていくとともに、ダイバーシティに関する教育の推進も、良心教育の実質化の一環と成り得ると考えます。

ダイバーシティの推進

 学生支援センター障がい学生支援室、カウンセリングセンター特別支援オフィスといった組織の取組を充実させることに加えて、ダイバーシティに関する教育の充実をはかることで、多様な構成員一人ひとりが、自身と異なる価値観や境遇を持つ他者を理解し、共生、共存する中で、その違いを新たな創造へ導く力を持つ人物を輩出していきたいと思います。知徳体の全人格教育は本学の教育の根本ですが、ダイバーシティの視点を持った徳ある学生を育て、多様性と寛容に満ちた社会を作る力のある卒業生を送り出したいと考えています。

 ダイバーシティの推進はグローバル化推進とも繋がってきます。
 2017年度にはドイツのテュービンゲン大学構内にEUキャンパスを設置しました。2018年度から、学生の短期派遣プログラムが始まり、2019年度にはセメスタープログラムが開講されていますが、EUキャンパスでのプログラムを充実させていくためには、学内のより多くの教職員の英知を結集する必要があります。
 また、欧米だけでなく、アジアへの視点も重要であると考えています。学生のニーズに応えつつ、視野を広げるようなグローバル教育が必要です。
 本年8月、韓国の女性作家、チョ・ナムジュ氏と翻訳家、斎藤真理子氏をお招きして本学でトーク・イベントを開催しました。日韓の困難な政治情勢の中、多くの方がご来場くださいました。
 チョ・ナムジュ氏の『82年生まれ、キム・ジヨン』は昨年末に日本で翻訳出版され10万部を超えるベストセラーとなっています。この小説は、韓国の普通の女性が抱える困難を余すことなく描いていますが、同時にまた、確かな救いも存在しています。
 一つは作品内部にある救いです。主人公は苦しい人生を送っていますが、折にふれ、彼女を助け、励ます人が登場します。また、ごく小さなことであっても、主人公達が団結して理不尽を正すことができた経験が描かれているということです。
 もう一つの救いは、この作品が広く読まれているという、作品の外側にある救いです。この作品に共感する人が多いということに、問題意識を共有することで少しずつ社会が変わっていく希望が見出せる、そういう意味の救いです。グローバル化推進のためには、さまざまな境遇、背景を持つ他者を理解し、共感できることが重要なのです。留学制度の充実など具体策の整備とあわせ、ダイバーシティに関する教育の充実策を探っていきたいと思います。

社会との連携

 中央教育審議会の答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」では、高等教育と社会とが密接に関わって、教育・研究の成果が社会に還元されること、大学が産業界と協力・連携することが求められています。
 本学においても、2017年12月の文化庁との研究交流に関する包括協定締結、本年6月の大和総研とのデータサイエンス分野における包括的教育研究協力協定締結など、産官学の協力・連携が進められつつあります。
 これら産業界との協力・連携事業については、中心的役割を担う教員の努力・人脈に頼っているのが現状です。連携の端緒はともかく、大学として取り組んでいくからには、個人対個人の関係を組織対組織の関係に練り上げ、連携を強固なものにし、安定的に運営していかなければなりません。同時に、産業界との連携の前提として、同志社大学の研究の評価を上げていくことが不可欠です。教員の研究活動を支える多様な仕組みの整備を進め、すでに蓄積されているすぐれた研究業績を、広く外部に発信していく方策にも注力したいと思います。

 教育研究の推進のためには、教職員の負担についての配慮も必要です。ワークライフバランスに配慮し、適正な業務分担がなされる仕組みを早急に作り、目の前の仕事の意味を見いだせずに疲弊するようなことを避けなければなりません。その仕事が大学の中で重要な意味を持っていることを実感でき、達成感を得られるような職場、ひとり一人が責任を持つ、自治自立の気風あふれる職場を作りたいと思っています。

創立150周年、そしてその先へ

 西洋文化と親しいキリスト教主義の本学が、日本の伝統文化の中心である京都に存在するということ、14学部16研究科を擁する総合大学であるということ、それぞれの特色ある今出川・京田辺の二つの校地が一体となって存在しているということ、これらはそのまま多様性の象徴と言えます。同志社大学は多様な価値観、境遇、背景を持つ人々が集い、お互いを理解しあって共生・共存する場であり続けなければなりません。
 副学長として、この三年間、各地の校友会の支部総会に出席してきましたが、そこで母校愛の言葉として繰り返し聞いたのは、自由と多様性への評価でした。業務の整理やスリム化を図るとともに、多様性の良さを失わないようにしていきたいと思います。

 同志社大学は、「徳の共同体」を基礎とした「知の共同体」の構築を目指してきた点で唯一無二の大学であり、これからもまた、そうあり続けなければならないと思います。そのためには、教員と職員と学生が、互いの良心を信頼し合い、真剣で自由な、そして人格的な知的交わりを積み重ねていかなければなりません。その交わりの中で育った、良心を手腕に運用する人たちを世に送り出すことで、よりよい社会を実現していくことが同志社大学の使命であり、その実現のために、努力していきます。

以上
第34代同志社大学長 植木朝子文学部教授
 2019年12月4日(水)13:30~ 第34代同志社大学長正式決定記者会見が、寒梅館6階大会議室にて開催されました。

 次期学長に正式決定した、植木朝子文学部教授は、多様性を打ち出した教育の実現と社会との連携を重視する旨の所懐を述べました。


記者会見での所懐は以下の通りです。

 学長選挙にあたっては、①:創立150周年に向けて策定した「同志社大学ビジョン2025」の発展的継承、②:教育・研究成果の共有と各部署の連携強化、③:多様性と寛容に満ちた環境作り、④:大学院教育の充実、⑤:キャンパス施設の充実、⑥:京都という地の利を活かした教育・研究・広報 と6つの基本政策を掲げました。本日は、その基本政策を貫く観点として、私が重要だと考える2点―ダイバーシティの推進および社会との連携―についてお話ししたいと思います。

 2005年に同志社大学に着任しましたが、学外出身者として大変感動したのは、「人一人は大切なり」という新島襄の精神が、キャンパス全体に深く浸透しており、14学部16研究科の幅広い教育の背景に、良心を信頼し合う、人と人の関係が確かに構築されていることでした。
 2025年には創立150周年をむかえる本学には、その歴史の中ではぐくまれてきた、すぐれた伝統、蓄積があります。しかし、それはまだ点として存在し、十分に生かされているとはいえない面があります。点を線とし、あるいは面として再構成し、未来を開いていかなければなりません。また、建学の精神「良心教育」は、さきほど申しましたように、全学に深く浸透していると感じていますが、昨今、これを裏切る出来事があることも事実です。事実を真摯に受け止め、教職員一体となって、改めて良心教育の実質化をはからなければならないと思っています。具体的には、キリスト教の歴史や同志社大学の歴史を学ぶ同志社科目、チャペル・アワー、良心学研究センターのシンポジウム、教職科目の人権教育論など、本学には多様な形態で良心とは何かを考える機会が用意されていますのでその一つ一つを充実させていくとともに、ダイバーシティに関する教育の推進も、良心教育の実質化の一環と成り得ると考えます。

ダイバーシティの推進

 学生支援センター障がい学生支援室、カウンセリングセンター特別支援オフィスといった組織の取組を充実させることに加えて、ダイバーシティに関する教育の充実をはかることで、多様な構成員一人ひとりが、自身と異なる価値観や境遇を持つ他者を理解し、共生、共存する中で、その違いを新たな創造へ導く力を持つ人物を輩出していきたいと思います。知徳体の全人格教育は本学の教育の根本ですが、ダイバーシティの視点を持った徳ある学生を育て、多様性と寛容に満ちた社会を作る力のある卒業生を送り出したいと考えています。

 ダイバーシティの推進はグローバル化推進とも繋がってきます。
 2017年度にはドイツのテュービンゲン大学構内にEUキャンパスを設置しました。2018年度から、学生の短期派遣プログラムが始まり、2019年度にはセメスタープログラムが開講されていますが、EUキャンパスでのプログラムを充実させていくためには、学内のより多くの教職員の英知を結集する必要があります。
 また、欧米だけでなく、アジアへの視点も重要であると考えています。学生のニーズに応えつつ、視野を広げるようなグローバル教育が必要です。
 本年8月、韓国の女性作家、チョ・ナムジュ氏と翻訳家、斎藤真理子氏をお招きして本学でトーク・イベントを開催しました。日韓の困難な政治情勢の中、多くの方がご来場くださいました。
 チョ・ナムジュ氏の『82年生まれ、キム・ジヨン』は昨年末に日本で翻訳出版され10万部を超えるベストセラーとなっています。この小説は、韓国の普通の女性が抱える困難を余すことなく描いていますが、同時にまた、確かな救いも存在しています。
 一つは作品内部にある救いです。主人公は苦しい人生を送っていますが、折にふれ、彼女を助け、励ます人が登場します。また、ごく小さなことであっても、主人公達が団結して理不尽を正すことができた経験が描かれているということです。
 もう一つの救いは、この作品が広く読まれているという、作品の外側にある救いです。この作品に共感する人が多いということに、問題意識を共有することで少しずつ社会が変わっていく希望が見出せる、そういう意味の救いです。グローバル化推進のためには、さまざまな境遇、背景を持つ他者を理解し、共感できることが重要なのです。留学制度の充実など具体策の整備とあわせ、ダイバーシティに関する教育の充実策を探っていきたいと思います。

社会との連携

 中央教育審議会の答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」では、高等教育と社会とが密接に関わって、教育・研究の成果が社会に還元されること、大学が産業界と協力・連携することが求められています。
 本学においても、2017年12月の文化庁との研究交流に関する包括協定締結、本年6月の大和総研とのデータサイエンス分野における包括的教育研究協力協定締結など、産官学の協力・連携が進められつつあります。
 これら産業界との協力・連携事業については、中心的役割を担う教員の努力・人脈に頼っているのが現状です。連携の端緒はともかく、大学として取り組んでいくからには、個人対個人の関係を組織対組織の関係に練り上げ、連携を強固なものにし、安定的に運営していかなければなりません。同時に、産業界との連携の前提として、同志社大学の研究の評価を上げていくことが不可欠です。教員の研究活動を支える多様な仕組みの整備を進め、すでに蓄積されているすぐれた研究業績を、広く外部に発信していく方策にも注力したいと思います。

 教育研究の推進のためには、教職員の負担についての配慮も必要です。ワークライフバランスに配慮し、適正な業務分担がなされる仕組みを早急に作り、目の前の仕事の意味を見いだせずに疲弊するようなことを避けなければなりません。その仕事が大学の中で重要な意味を持っていることを実感でき、達成感を得られるような職場、ひとり一人が責任を持つ、自治自立の気風あふれる職場を作りたいと思っています。

創立150周年、そしてその先へ

 西洋文化と親しいキリスト教主義の本学が、日本の伝統文化の中心である京都に存在するということ、14学部16研究科を擁する総合大学であるということ、それぞれの特色ある今出川・京田辺の二つの校地が一体となって存在しているということ、これらはそのまま多様性の象徴と言えます。同志社大学は多様な価値観、境遇、背景を持つ人々が集い、お互いを理解しあって共生・共存する場であり続けなければなりません。
 副学長として、この三年間、各地の校友会の支部総会に出席してきましたが、そこで母校愛の言葉として繰り返し聞いたのは、自由と多様性への評価でした。業務の整理やスリム化を図るとともに、多様性の良さを失わないようにしていきたいと思います。

 同志社大学は、「徳の共同体」を基礎とした「知の共同体」の構築を目指してきた点で唯一無二の大学であり、これからもまた、そうあり続けなければならないと思います。そのためには、教員と職員と学生が、互いの良心を信頼し合い、真剣で自由な、そして人格的な知的交わりを積み重ねていかなければなりません。その交わりの中で育った、良心を手腕に運用する人たちを世に送り出すことで、よりよい社会を実現していくことが同志社大学の使命であり、その実現のために、努力していきます。

以上