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極端気象をもたらす寒冷渦を捉える新指標を開発 - 大気の状態を不安定にする陰の立役者の尻尾を捉えた!-

'21年9月15日 更新
新潟大学自然科学系の本田明治教授、浮田甚郎教授、同大学大学院自然科学研究科の春日悟(大学院生)、同志社大学の山根省三准教授、気象庁気象研究所の川瀬宏明主任研究官及び海洋研究開発機構の山崎哲研究員の研究グループは、豪雨・豪雪や竜巻・突風等の極端気象を発現させる「寒冷渦」を中心位置、強度、影響範囲の3つの要素から捉える新指標(寒冷渦指標)の開発と、寒冷渦指標をある時刻の上空の天気図から出力可能な自動数値計算スキームの構築に成功しました。今後予測計算結果に適用することで数日~1週間後の極端気象発現予測の精度向上を目指していきます。

本研究成果のポイント

  • 豪雨・豪雪や竜巻・突風等の極端気象を発現させる対流圏上層の寒気を伴う低気圧(寒冷渦)を中心位置、強度、影響範囲で捉える新指標(寒冷渦指標)の開発に成功
  • ある時刻の上空の天気図から、寒冷渦指標を自動数値計算システムによって出力
  • 今後予測計算結果に適用することで、数日~1週間後の寒冷渦指標に伴う極端気象発現予測の精度向上を目指す

Ⅰ.研究の背景

新潟大学 同志社大学 気象庁気象研究所 海洋研究開発機構
新潟大学自然科学系の本田明治教授、浮田甚郎教授、同大学大学院自然科学研究科の春日悟(大学院生)、同志社大学の山根省三准教授、気象庁気象研究所の川瀬宏明主任研究官及び海洋研究開発機構の山崎哲研究員の研究グループは、豪雨・豪雪や竜巻・突風等の極端気象を発現させる「寒冷渦」を中心位置、強度、影響範囲の3つの要素から捉える新指標(寒冷渦指標)の開発と、寒冷渦指標をある時刻の上空の天気図から出力可能な自動数値計算スキームの構築に成功しました。今後予測計算結果に適用することで数日~1週間後の極端気象発現予測の精度向上を目指していきます。

本研究成果のポイント

  • 豪雨・豪雪や竜巻・突風等の極端気象を発現させる対流圏上層の寒気を伴う低気圧(寒冷渦)を中心位置、強度、影響範囲で捉える新指標(寒冷渦指標)の開発に成功
  • ある時刻の上空の天気図から、寒冷渦指標を自動数値計算システムによって出力
  • 今後予測計算結果に適用することで、数日~1週間後の寒冷渦指標に伴う極端気象発現予測の精度向上を目指す

Ⅰ.研究の背景

 豪雨・豪雪や竜巻・突風など災害をもたらす極端気象の発現時には、対流圏上層に北極からの寒気を伴う低気圧である「寒冷渦」(図1)がしばしば現れますが、地上天気図では通常はほとんど確認できません。寒冷渦は上空で長時間停滞することも多く、極端気象の発現しやすい状況が数日続くこともあります。上空の天気図から寒冷渦の中心は判別できますが寒冷渦の強度や大きさを示す統一的な客観的指標はこれまでありませんでした。本研究では、上空の天気図(等圧面高度場:等圧面の位置する高さ)を用いて、寒冷渦を中心位置、強度、影響範囲(水平規模)の3つの要素から捉える新指標の開発と、ある時刻の上空の天気図から出力可能な自動数値計算スキームの構築を目指しました。

Ⅱ.研究の概要

 寒冷渦の中心は上空の天気図における低気圧中心(等圧面高度の極小点)とされることが一般的です。本研究では、寒冷渦を等圧面の一定の半径を持つ円型の凹みと捉え、等圧面高度場を2次元格子化したデータセットを用いて、各点の凹みの具合*1を数学的に評価する手法の開発に取り組みました。凹みの深さの最大の場所を中心位置、凹みの深さを強度、円型に凹んでいる半径を影響範囲として、この3つの要素を客観的に抽出することに成功し、これを寒冷渦指標と名付けました。また、寒冷渦に成長する前の上空の気圧の谷(上空の天気図における極小点のない低圧部)の段階においても3つの要素の抽出が可能で、数日~1週間程度の時間スケールで寒冷渦の検出や追跡が可能となります。また、ある時刻のスナップショットの等圧面高度場から直接計算することができるため、一般に気象解析で実施されるデータの前処理(時間的・空間的平滑化や平均場など基本場の設定)が不要であることも利点の一つです。

Ⅲ.研究の成果

図1.上空の寒冷渦と地上天気図の模式図

図1.上空の寒冷渦と地上天気図の模式図

 豪雨・豪雪や竜巻・突風など災害をもたらす極端気象の発現時には、対流圏上層に北極からの寒気を伴う低気圧である「寒冷渦」(図1)がしばしば現れますが、地上天気図では通常はほとんど確認できません。寒冷渦は上空で長時間停滞することも多く、極端気象の発現しやすい状況が数日続くこともあります。上空の天気図から寒冷渦の中心は判別できますが寒冷渦の強度や大きさを示す統一的な客観的指標はこれまでありませんでした。本研究では、上空の天気図(等圧面高度場:等圧面の位置する高さ)を用いて、寒冷渦を中心位置、強度、影響範囲(水平規模)の3つの要素から捉える新指標の開発と、ある時刻の上空の天気図から出力可能な自動数値計算スキームの構築を目指しました。

Ⅱ.研究の概要

 寒冷渦の中心は上空の天気図における低気圧中心(等圧面高度の極小点)とされることが一般的です。本研究では、寒冷渦を等圧面の一定の半径を持つ円型の凹みと捉え、等圧面高度場を2次元格子化したデータセットを用いて、各点の凹みの具合*1を数学的に評価する手法の開発に取り組みました。凹みの深さの最大の場所を中心位置、凹みの深さを強度、円型に凹んでいる半径を影響範囲として、この3つの要素を客観的に抽出することに成功し、これを寒冷渦指標と名付けました。また、寒冷渦に成長する前の上空の気圧の谷(上空の天気図における極小点のない低圧部)の段階においても3つの要素の抽出が可能で、数日~1週間程度の時間スケールで寒冷渦の検出や追跡が可能となります。また、ある時刻のスナップショットの等圧面高度場から直接計算することができるため、一般に気象解析で実施されるデータの前処理(時間的・空間的平滑化や平均場など基本場の設定)が不要であることも利点の一つです。

Ⅲ.研究の成果

 図2は2015年4月13日の対流圏界面高度付近の寒冷渦指標の一例です(この2日後に日本では竜巻が発生)。等圧面上に、凹み具合の分布(陰影部)、その極大(丸)、凹みの深さ(丸の色)、平均半径(緑色の円)で示すことで、寒冷渦の中心、強度、影響範囲の3要素を客観的かつ視覚的にも評価することが可能となりました。また従来型の定義である低気圧中心(青色の三角)とは異なることが確認できます。一般に6時間毎に提供される上空の気象データを用いることにより寒冷渦3要素の時間的・空間的な追跡や検出が可能になり、また、寒冷渦指標を予測計算結果に適用することで寒冷渦の進路・発達予測の精度向上への寄与が期待されます。

図2.
2015年4月13日の上空の天気図(寒冷渦を捉えやすい対流圏界面高度付近の200 hPa面)で評価した寒冷渦指標。実線は200 hPa面の等圧面高度(m)。寒冷渦の中心は丸、強度は丸の色、影響範囲は緑色の円。青色の三角は等圧面高度の極小点。陰影は、等圧面高度の凹み具合で東西南北方向の傾きの平均値で表す(詳細は注釈*1)。

Ⅳ.今後の展開

 豪雨・豪雪や竜巻・突風などの極端気象発現の個別の事例と寒冷渦指標の関係について調査を進め、「寒冷渦指標」を用いて数日~1週間程度前に極端気象の発現を予測する手法の開発を進めていく予定です。
 また、この手法はあらゆる2次元格子データに適用が可能であり、他の気象要素のみならず海洋データ、あるいは他分野・異分野への展開も期待されます。

Ⅴ.研究成果の公表

これらの研究成果は、2021年9月2日(米国時間)、米国気象学会Monthly Weather Review誌にオンライン公開されました。
論文タイトル:
Seamless Detection of Cutoff Lows and Preexisting Troughs
著者:
Satoru Kasuga; Meiji Honda; Jinro Ukita; Shozo Yamane; Hiroaki Kawase; Akira Yamazaki
doi:
10.1175/MWR-D-20-0255.1

Ⅵ.本研究への支援

本研究は、北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)、科学研究費補助金17H02067及び19H05698、国立極地研究所一般共同研究、新潟大学災害・復興科学研究所共同研究による支援を受けて進められました。


注釈
*1
凹みの具合:等圧面高度の東西南北方向の傾きの平均値(Average Slope: AS)。各点とそこから一定の水平距離離れた点での等圧面高度の差から計算する。この「水平距離」によっても凹みの具合は値が変わるので、その最大値をAS+としている。
図2.2015年4月13日の上空の天気図(寒冷渦を捉えやすい対流圏界面高度付近の200 hPa面)で評価した寒冷渦指標。

図2

 図2は2015年4月13日の対流圏界面高度付近の寒冷渦指標の一例です(この2日後に日本では竜巻が発生)。等圧面上に、凹み具合の分布(陰影部)、その極大(丸)、凹みの深さ(丸の色)、平均半径(緑色の円)で示すことで、寒冷渦の中心、強度、影響範囲の3要素を客観的かつ視覚的にも評価することが可能となりました。また従来型の定義である低気圧中心(青色の三角)とは異なることが確認できます。一般に6時間毎に提供される上空の気象データを用いることにより寒冷渦3要素の時間的・空間的な追跡や検出が可能になり、また、寒冷渦指標を予測計算結果に適用することで寒冷渦の進路・発達予測の精度向上への寄与が期待されます。

図2.
2015年4月13日の上空の天気図(寒冷渦を捉えやすい対流圏界面高度付近の200 hPa面)で評価した寒冷渦指標。実線は200 hPa面の等圧面高度(m)。寒冷渦の中心は丸、強度は丸の色、影響範囲は緑色の円。青色の三角は等圧面高度の極小点。陰影は、等圧面高度の凹み具合で東西南北方向の傾きの平均値で表す(詳細は注釈*1)。

Ⅳ.今後の展開

 豪雨・豪雪や竜巻・突風などの極端気象発現の個別の事例と寒冷渦指標の関係について調査を進め、「寒冷渦指標」を用いて数日~1週間程度前に極端気象の発現を予測する手法の開発を進めていく予定です。
 また、この手法はあらゆる2次元格子データに適用が可能であり、他の気象要素のみならず海洋データ、あるいは他分野・異分野への展開も期待されます。

Ⅴ.研究成果の公表

これらの研究成果は、2021年9月2日(米国時間)、米国気象学会Monthly Weather Review誌にオンライン公開されました。
論文タイトル:
Seamless Detection of Cutoff Lows and Preexisting Troughs
著者:
Satoru Kasuga; Meiji Honda; Jinro Ukita; Shozo Yamane; Hiroaki Kawase; Akira Yamazaki
doi:
10.1175/MWR-D-20-0255.1

Ⅵ.本研究への支援

本研究は、北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)、科学研究費補助金17H02067及び19H05698、国立極地研究所一般共同研究、新潟大学災害・復興科学研究所共同研究による支援を受けて進められました。


注釈
*1
凹みの具合:等圧面高度の東西南北方向の傾きの平均値(Average Slope: AS)。各点とそこから一定の水平距離離れた点での等圧面高度の差から計算する。この「水平距離」によっても凹みの具合は値が変わるので、その最大値をAS+としている。
お問い合わせ先

研究内容に関すること

新潟大学自然科学系(理学部)
教授 本田 明治
Tel:025-262-6145 E-mail:meiji@env.sc.niigata-u.ac.jp

同志社大学理工学部環境システム学科
准教授 山根 省三
Tel:0774-65-6435 E-mail:syamane@mail.doshisha.ac.jp

気象庁気象研究所 応用気象研究部
主任研究官 川瀬 宏明
E-mail:hkawase@mri-jma.go.jp

海洋研究開発機構 付加価値情報創生部門アプリケーションラボ
研究員 山崎 哲
Tel:045-778-5867 E-mail:yzaki@jamstec.go.jp

広報担当

新潟⼤学広報室
Tel:025-262-7000 E-mail:pr-office@adm.niigata-u.ac.jp

同志社大学広報部広報課
Tel:075-251-3120 E-mail:ji-koho@mail.doshisha.ac.jp

気象庁気象研究所 企画室
Tel:029-853-8535 E-mail:ngmn11ts@mri-jma.go.jp

海洋研究開発機構 海洋科学技術戦略部広報課
Tel:045-778-5690 E-mail:press@jamstec.go.jp