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同志社大学 生命医科学研究科 齋藤直人准教授 特異的かつ高速なcAMP生細胞イメージングを可能にする蛍光プローブ『gCarvi』を開発

'22年7月13日 更新

研究成果のポイント

  • 特異的かつ高速なcAMP生細胞イメージングを可能にする蛍光プローブ『gCarvi』を開発
  • ニューロンのcAMP濃度の設定値(全体指令)によって、神経回路の活動レベルが制御されていることを発見
  • cAMPシナプス前部ドメイン(個別指令)が、シナプス可塑性におけるシナプス特異性を規定していることを発見

概要

 生物の個体や組織では、全体として情報を共有するだけではなく、その一部分だけで情報を扱う仕組みを適宜活用することで、それぞれの機能を維持しています。一個の細胞もシステマティックな工場のようなものであり、細胞全体で情報を共有する場面や、一部分だけに情報を集約する仕組みを活用していると考えられます。細胞体から役割分担の異なる複数の神経突起を長く伸ばす脳を構成する神経細胞(ニューロン)では、細胞全体/一部分の情報管理を適切に行うシステムを、高度に発達させていると予想できます。
 たとえば細胞外から受け取った情報を、細胞内に伝えて応答するために、細胞内で最初に情報を伝える役割をセカンドメッセンジャーと呼びます。このセカンドメッセンジャー分子の指示に基づいて、細胞は様々な分子を動かし、適切に応答するのです。歴史的に最初に発見されたセカンドメッセンジャー分子が、サイクリックAMP(cAMP)です。cAMPをセカンドメッセンジャーとして活用する細胞は、原核・真核細胞問わず広く存在することが知られています。このcAMPを用いた指示の仕組みとして、細胞全体に渡るような全体指令に加えて、一部分にだけ行う個別指令がある可能性については、仮説(マイクロドメイン仮説)として1980年代に提唱されました。
 cAMPが指示を行うためには、細胞内の指示を行う場所でcAMP濃度を上昇させる必要があります。今回、同志社大学 生命医科学研究科 齋藤直人准教授の研究グループでは細胞内のcAMPの濃度変化を可視化できる蛍光プローブ“gCarvi(ジーカービィ)”を開発しました。
さらに、このgCarviをニューロンに発現させることで、
1)
cAMP全体指令によって、神経回路の活動が高まること
2)
cAMP個別指令によって、シナプス前部が活性化すること
を蛍光動画解析(蛍光イメージング)によって明らかにしました。これまで仮説に止まっていたcAMP個別指令が実際に存在することを、はっきりと示した初めての報告と言えます。
*:
ニューロン間で信号を伝達する場(構造)をシナプスと呼びます。伝達の送り手側がシナプス前部です。

研究成果の社会的意義

 様々な細胞応答を引き起こすGタンパク質共役型受容体(GPCR)は、創薬開発の世界では主要な標的分子です。そして、多くのGPCRは細胞内cAMP濃度を増加または減少させます。このようなcAMPの増減は、ELISA法などによるEnd-point assayを用いて研究されてきました。gCarviを用いたcAMP生細胞イメージングでは、End-point assayでは見ることができない多様なcAMP動態を解析することができます。微小空間に生じるcAMPシナプス前部ドメイ ンも、End-point assayでの解析は困難でしょう。薬の効果を評価する上で目的細胞のcAMP動態を可視化できるgCarviは、創薬開発における革新的な技術です。
 一例として、認知症改善薬の開発に貢献できると考えています。老化やアルツハイマー型認知症による認知機能の低下の一因として、cAMPシグナリングの減弱が示唆されています。cAMPの分解酵素を阻害することで、低下した認知機能が改善するという実験結果も報告されています。しかし、その細胞レベルの詳細は不明であり、脳内のどこのcAMPシグナリングが認知機能を左右するのか分かっていません。gCarviを用いたニューロンcAMP動態解析は、そのような問題に直接的にアプローチすることができるため、脳内の認知機能を司る部位の特定や薬効の確認など、創薬の現場において新たな一手となることでしょう。

本研究成果は、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)に掲載されました(2022年7月6日)。
URL: https://doi.org/10.1073/pnas.2122618119
Green fluorescent cAMP indicator of high speed and specificity suitable for neuronal live-cell imaging
Seiko Kawata, Yuki Mukai, Yumi Nishimura, Tomoyuki Takahashi, Naoto Saitoh

詳細は添付資料をご確認ください。

研究成果のポイント

  • 特異的かつ高速なcAMP生細胞イメージングを可能にする蛍光プローブ『gCarvi』を開発
  • ニューロンのcAMP濃度の設定値(全体指令)によって、神経回路の活動レベルが制御されていることを発見
  • cAMPシナプス前部ドメイン(個別指令)が、シナプス可塑性におけるシナプス特異性を規定していることを発見

概要

 生物の個体や組織では、全体として情報を共有するだけではなく、その一部分だけで情報を扱う仕組みを適宜活用することで、それぞれの機能を維持しています。一個の細胞もシステマティックな工場のようなものであり、細胞全体で情報を共有する場面や、一部分だけに情報を集約する仕組みを活用していると考えられます。細胞体から役割分担の異なる複数の神経突起を長く伸ばす脳を構成する神経細胞(ニューロン)では、細胞全体/一部分の情報管理を適切に行うシステムを、高度に発達させていると予想できます。
 たとえば細胞外から受け取った情報を、細胞内に伝えて応答するために、細胞内で最初に情報を伝える役割をセカンドメッセンジャーと呼びます。このセカンドメッセンジャー分子の指示に基づいて、細胞は様々な分子を動かし、適切に応答するのです。歴史的に最初に発見されたセカンドメッセンジャー分子が、サイクリックAMP(cAMP)です。cAMPをセカンドメッセンジャーとして活用する細胞は、原核・真核細胞問わず広く存在することが知られています。このcAMPを用いた指示の仕組みとして、細胞全体に渡るような全体指令に加えて、一部分にだけ行う個別指令がある可能性については、仮説(マイクロドメイン仮説)として1980年代に提唱されました。
 cAMPが指示を行うためには、細胞内の指示を行う場所でcAMP濃度を上昇させる必要があります。今回、同志社大学 生命医科学研究科 齋藤直人准教授の研究グループでは細胞内のcAMPの濃度変化を可視化できる蛍光プローブ“gCarvi(ジーカービィ)”を開発しました。
さらに、このgCarviをニューロンに発現させることで、
1)
cAMP全体指令によって、神経回路の活動が高まること
2)
cAMP個別指令によって、シナプス前部が活性化すること
を蛍光動画解析(蛍光イメージング)によって明らかにしました。これまで仮説に止まっていたcAMP個別指令が実際に存在することを、はっきりと示した初めての報告と言えます。
*:
ニューロン間で信号を伝達する場(構造)をシナプスと呼びます。伝達の送り手側がシナプス前部です。

研究成果の社会的意義

 様々な細胞応答を引き起こすGタンパク質共役型受容体(GPCR)は、創薬開発の世界では主要な標的分子です。そして、多くのGPCRは細胞内cAMP濃度を増加または減少させます。このようなcAMPの増減は、ELISA法などによるEnd-point assayを用いて研究されてきました。gCarviを用いたcAMP生細胞イメージングでは、End-point assayでは見ることができない多様なcAMP動態を解析することができます。微小空間に生じるcAMPシナプス前部ドメイ ンも、End-point assayでの解析は困難でしょう。薬の効果を評価する上で目的細胞のcAMP動態を可視化できるgCarviは、創薬開発における革新的な技術です。
 一例として、認知症改善薬の開発に貢献できると考えています。老化やアルツハイマー型認知症による認知機能の低下の一因として、cAMPシグナリングの減弱が示唆されています。cAMPの分解酵素を阻害することで、低下した認知機能が改善するという実験結果も報告されています。しかし、その細胞レベルの詳細は不明であり、脳内のどこのcAMPシグナリングが認知機能を左右するのか分かっていません。gCarviを用いたニューロンcAMP動態解析は、そのような問題に直接的にアプローチすることができるため、脳内の認知機能を司る部位の特定や薬効の確認など、創薬の現場において新たな一手となることでしょう。

本研究成果は、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)に掲載されました(2022年7月6日)。
URL: https://doi.org/10.1073/pnas.2122618119
Green fluorescent cAMP indicator of high speed and specificity suitable for neuronal live-cell imaging
Seiko Kawata, Yuki Mukai, Yumi Nishimura, Tomoyuki Takahashi, Naoto Saitoh

詳細は添付資料をご確認ください。
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同志社大学 生命医科学研究科 准教授 齋藤 直人
電 話:0774-65-6867
e-mail:nasaito@mail.doshisha.ac.jp

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