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プレスリリース
緊急手術が必要な眼窩(がんか)骨折(こっせつ)を見逃さないために ~CT画像から眼窩骨折のタイプを判定するAIシステムを開発~
2025年8月4日 更新
同志社大学大学院生命医科学研究科 ティッシュエンジニアリング研究室(奥村直毅教授、小泉範子教授)は京都府立医科大学大学院医学研究科 視覚機能再生外科学(奥拓明大学院生、渡辺彰英講師ら)との共同研究により、眼窩骨折のタイプをCT画像から自動的に検出するAIシステムの開発に成功しました。本件に関する論文が、科学雑誌『Computers in Biology and Medicine』に2025年7月11日付けで掲載されましたのでお知らせします。
1. 研究の背景と目的
眼窩骨折は、眼球を収める骨(眼窩)が外傷により折れる怪我であり、スポーツ中の衝突、転倒、交通事故など、誰もが日常生活で遭遇する可能性のある事故が原因となります。特に球技でのボールの直撃、格闘技での打撃、自転車での転倒、階段での転落など、身近な場面で発生します。なかでも「閉鎖型骨折」と呼ばれるタイプでは、迅速な手術対応が求められ、対応の遅れが深刻な後遺症につながる可能性があります。
診断にはCT画像が用いられますが、専門的な知識が必要となるため、専門医が不在の救急外来や地域医療において、特に緊急手術を要する眼窩骨折が見逃されるリスクが懸念されています。
2. 研究の方法と結果
686名の眼窩骨折患者のCT画像(約46,000枚)を用いて、2段階の深層学習システムを開発しました。
第1段階では骨折の有無を検出し、第2段階では骨折のタイプ(閉鎖型または開放型)を判別します。その結果、1人の患者ごとに骨折があるかどうかを正しく判定できた割合(患者レベルの感度)での骨折検出率は94.7%、閉鎖型骨折の判別精度は100%という高い性能を達成しました。
3. 研究の意義
今回開発したAIシステムは、高感度で眼窩骨折を特定し、さらに緊急性の高い閉鎖型骨折を診断することができます。このシステムを医療現場で使用するためには医療機器としての開発を進める研究が期待されます。今後、眼窩骨折の診断システムとして医療現場で活用される可能性があります。
4.論文情報
- 雑誌名:Computers in Biology and Medicine
- 巻号:Volume 196, Part A
- 発行年月日:2025年7月11日(オンライン速報版) ※紙版の発行は2025年9月予定
- DOI:10.1016/j.compbiomed.2025.110732
- 雑誌発行元国:イギリス
- 論文タイトル:Hierarchical deep learning system for orbital fracture detection and trap-door classification on CT images
- 代表著者:同志社大学 生命医科学部 医工学科 奥村 直毅
- 共同著者:
京都府立医科大学大学院医学研究科 視覚機能再生外科学 奥 拓明
同志社大学大学院 生命医科学研究科 中村 優斗(博士前期課程学生)
同志社大学大学院 生命医科学研究科 兼松 悠真(博士前期課程学生)
同志社大学大学院 生命医科学研究科 赤木 歩(博士前期課程修了生)
京都府立医科大学大学院医学研究科 視覚機能再生外科学 木下 茂
京都府立医科大学大学院医学研究科 視覚機能再生外科学 外園 千恵
同志社大学 生命医科学部 医工学科 小泉 範子
京都府立医科大学大学院医学研究科 視覚機能再生外科学 渡辺 彰英
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