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プレスリリース

コウモリ模倣の超音波センシング手法を用いたドローンの試験飛行に成功

2026年9月10日 更新

研究成果のポイント

  • 熱音響変換素子サーモホン(※1)を採用することでコウモリ同様の広帯域FM超音波パルスの放射を実現
  • 軽量小型のサーモホンと2つのマイクを搭載したコウモリ準拠の超音波センシングデザインによるドローンシステムを開発し、飛行雑音下での自律障害物回避飛行の試験運用に成功
  • 低電圧駆動が可能なサーモホンの更なる高効率化を推進することで、小型群ロボットの外界知覚センサとしての応用も期待

研究成果の概要

公立はこだて未来大学システム情報科学部 山田恭史准教授、同志社大学大学院生命医科学研究科 長谷川勘太(大学院生)、同志社大学生命医科学部 飛龍志津子教授らの共同研究グループは、カメラやLiDARなどの外界センサを用いず、コウモリのように超音波センシングのみを頼りに周囲の障害物を捉え、自律的に回避飛行するドローンシステムを開発しました。軽量小型のサーモホンと2つのマイクを搭載し、ドローン自身が発した広帯域FM超音波(※2)の反響音(エコー)から障害物を定位することで、飛行雑音下においても自律障害物回避飛行が可能であることを実証しました。

背景

コウモリは、口または鼻孔の1つの送信器および両耳の2つの受信器というシンプルな超音波センシング機構により、微小な飛翔昆虫の捕獲や障害物回避等のマルチタスクな超音波ナビゲーション(エコーロケーション※3)を暗闇の中で実現させています。特に、コウモリが採用する広周波数帯域の超音波パルスを用いた音響センシングは空間分解能に優れ、彼らの優れたナビゲーション能力を支える重要な機能として考えられています。しかし、小型軽量かつ高出力・広帯域な超音波パルススピーカを実現させることが困難であることから、積載重量等に制約のある自律飛行ドローンへの模倣応用がこれまで行われてきませんでした。

研究手法

そこで我々は、金属薄膜の熱変動により薄膜表面上の空気媒質の体積変化を生じさせ、音波を発生させる熱音響変換素子のサーモホンに着目しました。共振原理を利用しないサーモホンの活用により、コウモリと同様に広帯域・高出力な超音波パルスの放射を可能とし、サーモホンおよび2つのマイクロホン、マイクロコントローラ※4を搭載した自律飛行ドローンシステムを実現しました。

研究成果

コウモリ同様の非線形な時間周波数変調構造を持つ超音波パルスを採用し、飛行雑音環境下においてターゲットポールの検出実験を実施した結果、飛行雑音に対して推定約1/30倍の音圧の微小なエコー(※2)を検出可能であり、ポールの2次元座標を定位できることも分かりました。さらに、過去に我々の研究チームが提案してきた障害物回避アルゴリズムをドローンに実装することで、複数のポールを散乱配置した環境下において障害物群の2次元回避自律飛行にも成功しました。

今後の展望

本研究により、コウモリの超音波センシングデザインおよびその機能を踏襲したドローンシステムを実現させ、超音波センシングだけで自律障害物回避飛行を達成することができました。特に、広帯域FM超音波を放射可能な軽量・低電圧駆動のサーモホンは、このようなコウモリ模倣センシングを小型飛行ロボット上で実現するための基盤デバイスとして期待されます。サーモホン出力の更なる高効率化や、コウモリのユニークな超音波センシング戦略の模倣応用を加速させることで、意思決定の柔軟性に優れる生物知に学ぶ小型群ロボットシステムへの展開が期待されます。

論文発表の概要

研究論文名:A Thermophone-Based FM Sonar for Airborne Ultrasonic Sensing under Drone Flight Noise
著者:山田恭史(公立はこだて未来大学)、長谷川勘太(同志社大学大学院)、飛龍志津子(同志社大学)他
公表雑誌:Scientific Reports
DOI: 10.1038/s41598-026-65909-3
公表日:日本時間 2026年9月10日

用語解説

※1 サーモホン金属薄膜に交流電流を印可し、金属薄膜の温度変化により薄膜表面上の空気媒質の体積変化を生じさせ、音波を発生させる熱音響変換素子。
※2 FM超音波周波数変調する超音波信号。多くのコウモリは周波数下降型の変調音を用いる。
※3 エコーロケーション自ら超音波パルスを放射し、周囲からの反響音を聴取・分析することで周囲の空間を把握する生物機能。反響定位ともいう。 
※4 マイクロコントローラCPUに加えてRAM、ROM、I/Oポートなどを1つの集積回路(IC)にまとめあげられた極小のコンピュータ。

研究者プロフィール

山田 恭史(ヤマダヤ スフミ)
公立はこだて未来大学 システム情報科学部 複雑系知能学科 准教授
専門分野はバイオミメティクス、生物ナビゲーションの計測・数理モデリング・ロボット実機応用に関する研究に従事。https://researchmap.jp/batman_yy

長谷川 勘太(ハセガワ カンタ) 
同志社大学大学院 生命医科学研究科 博士後期課程
コウモリ模倣のエコーロケーションロボットの開発に関する研究を推進。
https://researchmap.jp/hi4K2nAsOdUQZx0u

飛龍 志津子(ヒリュウ シヅコ) 
同志社大学 生命医科学部 医情報学科 教授
専門分野は、生物音響工学。コウモリの生物ソナーに関する研究に従事。2014年JSTさきがけ研究員、文部科学大臣表彰若手科学者賞や日本学術振興会賞など受賞。
https://researchmap.jp/Shizuko_Hiryu/

本研究に関するお問い合わせ

公立はこだて未来大学 システム情報科学部
准教授 山田 恭史
Tel:03-5841-8640
E-Mail:yamadaya@fun.ac.jp

同志社大学 生命医科学部
教授 飛龍 志津子
TEL:0774-65-6364
E-Mail:shiryu@mail.doshisha.ac.jp


取材に関するお問い合わせ

同志社大学 広報課

 TEL:075-251-3120
 E-mail:ji-koho@mail.doshisha.ac.jp


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