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トピックス

同志社大学新島塾「読書から始まる知の探究」林田先生セッション_第4回活動

2023年9月22日 更新

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 7月13日(木)に「読書から始まる知の探究」第4回目学習が今出川キャンパスで行われました。このセッションでは「火山と生きる ―自然の恵みと災い」をテーマとして、自然現象と人間の文化の繋がり、災害と社会との関係、自然科学の成果を未来に生かすための方法について考えます。塾生は5つの小グループに分かれ、各班独自の視点からテーマとそれに関する課題図書を設定して、今回のセッションで行う発表に向けて準備を重ねてきました。

 今回のセッションでは、各小グループが発表・質疑応答を行った後、全体で「自然災害と人間」というテーマでディスカッションを行いました。最後に林田教授の総括を受けました。緊張しつつも満足のいく発表ができ、これまでの準備の成果を存分に発揮できたと感じています。

 1班は「文学作品から見る富士山」というテーマで発表しました。この班では、富士山に関する幅広い文学作品を参考図書として、富士山に対する人間の関わり方や捉え方について考察しました。富士山が人々にもたらす豊かな恵みと噴火に対する畏怖の歴史は、やがて富士山に神格を与えるようになりました。文学はその信仰の様態を記録に残すことに寄与してきただけでなく、富士山を見たことのない人々にその様相や壮大さを伝えることで、日本中に富士山信仰を広め日本人の自然信仰の歴史に影響を与えてきました。また、1班が参考図書として選んだ池澤夏樹『真昼のプリニウス』(中公文庫)からは、「天明3年浅間山大噴火の記録 ―大笹村のハツ女の体験記」の一部を引用することで、より多面的に考察を深めました。具体的には、富士山に限らず、文学は自然の恐ろしさを乗り越える役割を果たしてきたのではないかという考えです。古くから人々は、無慈悲に襲いくる自然の脅威を言葉や物語によって乗り越え、自然界と渡り合ってきたことが文学から読み取ることができます。

 2班は「ハザードマップ」がテーマです。「ハザードマップ」とは、将来的な噴火を予測し、被災範囲の想定や避難経路を地図上に図示するものです。富士山のハザードマップに着目して、その意義や現状について発表しました。ハザードマップは、被災範囲を示すことで住民の防災意識を向上させるとともに、火山噴火に対する理解を促進する目的があります。また、火山周辺の自治体が避難計画や平時の土地の利用等を決定する際の検討材料にもなり、火山噴火の被害を減らすために重要な役割を果たします。しかし現状では、多くの火山ではハザードマップが作成されていません。他にも、火山の噴火によって山自体が崩れ落ちる山体崩壊の予測が難しい現象もあるので、火山のハザードマップは万能とはいえません。そのため、ハザードマップにも限界があることを理解した上で、人々の防災意識を高めていくことが必要です。

 3班は「信仰の対象としての富士山」というテーマで、富士山に対する人々の意識の変遷について、信仰のあり方と「祭り」を中心に発表しました。富士信仰の原型として「水の恵みへの期待」と「噴火への畏怖」の2点があります。前者の「水」は肥沃さと浄化の力を象徴しており、後世において富士山の宗教性の基礎となりました。後者の「噴火への畏怖」は864年の貞観大噴火が契機となっています。このとき人々は、噴火は神の怒りによるものだと解釈しました。このことにより、富士山に神位をささげる浅間神社を設置し、富士山を尊敬と畏敬の念を込めた信仰の対象となりました。富士山に対する信仰心が人々に芽生えたきっかけです。

 4班は「観光地での火山と人間との関係」というテーマで、火山から受ける恩恵だけでなく、噴火に対する風評被害や火山灰による影響にも着目して発表しました。また、実際に私達がフィールドエクスカーションで訪問した場所で実施している取り組みをもとに、防災情報の発信方法について施策を提言しました。現在の噴火時の連絡体制では、情報整理や発信力などに限界があるのではないかと考え、噴火時にいち早く正確な情報を集めるためにAIを導入する案や、市民への発信力を強化するために日常的な情報発信を行う案などが挙げられました。この発表を受けて、単に噴火の被害だけを想定しておくのではなく、風評被害といった噴火に付随する影響についても想定し、対策を練る必要性に気づきました。

 5班は「火山災害に危機意識を持ち人命を守る」というテーマで発表を行い、人々の火山噴火に対する危機感の低さに課題意識を持ち、火山災害に対するアウトリーチ(さまざまな形で必要な人に必要なサービスや情報を届けること)に注目しました。フィールドエクスカーションで専門家の方にお話を伺った際、防災のためには「知ってもらうこと」が重要であるものの、多くの人が火山災害に関するプログラムや講演会に参加しておらず、専門家にアクセスすることが難しいという現状をお聞きし、そこに課題があると感じました。そこで、火山災害について認識し、専門家と繋がるきっかけとしてSNSの活用が有効であると考え、SNSに投稿することを想定して、火山災害の危険性を分かりやすく伝えるための動画を作成しました。動画は文章よりも印象に残りやすく、手軽に学ぶことができます。動画には多くの人に見てもらえるように「富士山」や「噴火」のようなキーワードをつけたり、専門家に繋がることのできるURLや関連する講演会やプログラムなどの情報をつけて、必要な情報を印象付ける工夫もしました。火山災害の影響は広範囲であることから、富士山周辺地域の方々だけが火山災害の危険性を理解するだけでは不十分です。より多くの方々危機意識を持つためには、一人ひとりが火山災害の知識と関心を持つことこそが、人の命を救うことに繋がります。

 全グループの発表終了後は、これらの発表に基づいて、全体で「自然災害と人間」というテーマで、意見交換を行いました。話し合いの中で、災害対策の理想と社会の現状との間にはギャップがあることや、噴火災害への対応を人々の自己責任で済ませてはいけないという意見が挙がりました。全体で意見交換することで、読書やフィールドエクスカーションによる知識と経験だけではなく、各グループの発表内容から見えた自分達の学びの成果を一つにまとめることができ、セッション全体の総括にも繋がったと感じています。

(事務局・高等研究教育院事務室)



今回のトピックスは、以下の塾生が作成しました。
新島塾第5期塾生 巽さん(社会学部)、新島塾第5期塾生 宮本さん(法学部)、新島塾第5期塾生 角名さん(経済学部)、新島塾第5期塾生 内田さん(商学部)

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