プレスリリース
コウモリはドップラー効果を利用して動体検知することを発見
同志社大学大学院 生命医科学研究科博士後期課程の吉田創志さん、長谷一磨さん(現・富山大学)、飛龍志津子教授らは、コウモリがドップラー効果注1)による周波数変化を利用して動体を検知し、接近する脅威などを迅速に回避することを発見しました。
生き物にとって、接近する捕食者などの脅威をいち早く検知して回避することは生存上とても重要です。コウモリは優れた超音波ソナー注2)能力を有し、超音波を放射し反響音を聴取することで周囲の物体の位置等を把握するエコーロケーション注3)を行いますが、捕食者等の発見に必須となる動体検知をどのように行なっているかは明らかではありませんでした。吉田らはエコーロケーションを行うコウモリに対してバーチャルエコーをプレイバック再生注4)することで仮想物体を呈示する手法を確立し、コウモリがどのように動体を知覚しているか検証しました。結果、従来考えられてきたエコー遅延注5)の時間変化ではなく、ドップラー効果によるエコーの周波数変化のみを利用していることを発見しました。また、その反応時間は30 ms程度と、とても速い反応であることもわかりました。森林内に生息するコウモリは、獲物や捕食者など動くもの以外にも周囲のさまざまな物体から散乱するエコーを聴取しています。そこでコウモリは、我々ヒトの視覚のように物体の位置を追うことでその動きを検出するのではなく、音波センシングの利点であるドップラー効果を用いて動体を検知し、脅威からの迅速な回避を可能にしていると考えられます。
本研究成果は、2024年2月28日(米国東部標準時間)に「iScience」で公開されています。
注1)ドップラー効果
ドップラー効果は、音源や観測者が移動している時に速度に応じて音色(周波数)が変化する現象で、救急車のサイレンなどが馴染み深い。
注2)ソナー
音によって物体を探知また測距する技術。SONAR(SOund NAvigation and Ranging)の頭字語。
注3)エコーロケーション
夜行性のコウモリはほとんど目が見えないが、口から出す超音波を用いたソナー能力、すなわちエコーロケーションによって周囲を“見る”ことで、暗闇でも自由に飛び回ることができる。
注4)プレイバック再生
コウモリが放射した超音波をマイクで集音し、その音波を瞬時にスピーカーからプレイバック再生することで、エコー源となる物体があるかのようにコウモリに錯覚させることができる。
注5)エコー遅延
コウモリが放射した超音波が物体で反射してエコーとしてコウモリまで返ってくるまでの時間。物体までの距離を反映している。
※その他、研究内容の詳細は以下のPDFよりご確認ください
研究に関するお問い合わせ |
同志社大学大学院 生命医科学研究科博士課程(後期) 吉田 創志 TEL:0774-65-6364 同志社大学 生命医科学部 教授 飛龍 志津子 TEL:0774-65-6364 |
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