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民衆の心に潜む被害者意識が民主主義を劣化させる!?

~同志社大学 ガザ戦争と言論の自由を見つめる社会人博士学生の挑戦~(後編)

2025年12月23日 更新
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知的好奇心を刺激し、暮らしを豊かにしてくれる学生生活

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私は1989年に毎日新聞社に記者職として入社し、以来、主に国際分野を中心に取材・執筆活動に従事してきました。エルサレムにも2003年4月から2006年10月の3年半にわたって駐在しました。当時は第二次インティファーダの真っ最中で、私も自宅前で自爆テロを目の当たりにしました。

この頃は目の前で起きていることを追いかけるのに精一杯で、歴史や民族、宗教など、出来事の背景にまで十分に掘り下げる余裕はありませんでした。しかし30年あまり勤めた会社を退職したとき、記者生活で得た経験や知見を深め、後進の育成に役立てたいという思いがわいてきました。そのための具体的な方法として思い至ったのが、大学院で学んで研究・教育の道に進むことです。

大学院選びにあたっては、中東の歴史と政治、宗教に造詣が深い先生のもとで学ぶことを条件にしました。全国の大学院を探したところ、本学のグローバル・スタディーズ研究科長を務められたこともある内藤正典教授と出会うことができました。

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大学院に入学したのは54歳のときです。ともに学ぶ学生は息子や娘よりも若い人たちです。そのような環境に置かれる社会人学生にとって、最大の障害は自分自身のプライドです。経験を積み、自分のやり方や考え方に自信をつけてきたことが学び直しの邪魔になるのです。この障壁を取り除くことができたのは、内藤教授のおかげです。内藤教授は1つの物事を社会的、文化的、民俗的、宗教的など様々な背景から見つめ、多元的・多角的に捉えることの大切さを教えてくださいました。

内藤教授と議論していると、「私が見てきたものだけがすべてではない」と素直に思えたのです。また、学生一人ひとりの意見を尊重したうえで、多くの示唆を与えてくださいました。大学院で学ぶ日々は、知的好奇心を刺激され、知的興奮に満ちています。こうした環境だからこそ経験や自己流の学びをいったん横に置き、若い学生と同じような気持ちで新たな挑戦に取り組むことができたのだと思います。

新聞記者は夕方から夜にかけて記事を執筆します。日付が変わる前に家に帰ることはほとんどありませんでした。それが今では、妻と毎日夕食をともにし、一緒にテレビドラマを見て泣いたり笑ったりしています。愛犬と鴨川沿いを散歩するという楽しみもできました。人として豊かな生活を手に入れたことも、同志社大学で学ぶことで得た大きな成果です。

経験と学びを後進に伝えていきたい

大学院への入学を考えたときと変わらず、今も目標は、私自身がこれまでに得た知識や経験を後進に伝えることです。現在、他の大学で非常勤講師を務めています。ジャーナリズムなどに興味を持つ学生を指導し、成長を支えることは、研究と同じぐらい情熱を傾けられる意義深い取り組みだと感じています。研究に軸足を置いて知を社会に還元するか、あるいは教育に軸足を置いて未来の社会を担う人材を育成するか。方向はまだ明確ではありませんが、いずれかの方法で私なりに社会に貢献していきたいです。

直近の目標は、博士号の取得です。私は、目の前のことに一生懸命に取り組めば、必ず良い結果につながっていくと信じています。その先には自分の生き方に納得できる人生があるはずです。せっかく50歳を超えてから新しい道に踏み出したのですから、残りの半生をとことん楽しみたいですね。

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仕事を辞めて学術の世界へ進路変更する社会人の方には、「覚悟は必要」とお伝えしたいです。経済的に決して楽ではありませんし、家族の理解と協力も不可欠です。しかし、覚悟さえあれば社会人経験は大きな強みになります。学びの原動力は問題意識です。そして問題意識は実社会での経験によって育まれます。その結果、より深い学びが可能になりやすいのが、社会人経験者だと思います。また、経験を通して幅広い知識や視野を備えているため、物事の核心を素早く理解できたり、早く知識を吸収できたりするのも社会人経験者ならではです。

SPRINGの採択を目指す大学院生には、「あきらめないで」とお伝えしたいです。私は1回目の応募では採択されず、2回目の挑戦で支援を受けることができました。振り返ってみれば社会人時代にも、エジプトへの社命留学試験で2回も不合格になった経験があります。しかし3度目の挑戦で合格し、これが国際的な舞台でのキャリアへとつながり、ひいては現在の私につながりました。

同志社大学には気に入っているところがたくさんあるのですが、1つ選ぶとすれば、トイレがとてもきれいな点です。世界の様々な国や地域を訪問してきた私の経験上、トイレのきれいさは文化的豊かさを象徴しています。豊かな文化を持つ国や地域は、概してトイレもきれいでした。実際、同志社大学もとても豊かな文化を持っています。学生への支援が手厚かったり、キャンパスの清掃や手入れが行き届いたりしていることは、良心や公共心、道徳心の象徴でしょう。教職員や学生がともにそれらの心を備えていることが、美しいキャンパスに表れているのではないでしょうか。

最後に、同志社大学が拠点を置く京都は素晴らしい場所だと付け加えておきます。豊かな文化と歴史に恵まれ、若者の活気にあふれた京都で学生時代を過ごすことは、人生においてかけがえのない体験になるはずです。

追記:取材日から本記事の公開日までの間に、樋口さんは2026年4月より東京の大学で専任教員として採用されることが内定しました。

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