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現代を歴史から問い直す:近現代ギリシャ研究が示唆する国際秩序
~同志社大学 若き研究者の挑戦~(後編)

同志社で歴史を学ぶ魅力

高校生時代、国際政治や歴史への関心が高まる中、出会ったのが同志社大学でした。単に「知識を得る場」としてではなく、「自分の信念や問いに向き合いながら学びを深めていく場」としての大学の印象が強く、大きな魅力を感じました。
特に心を動かされたのは、「良心を手腕に運用する」という建学の精神です。この言葉は、学問を社会や世界と結びながら、自らの価値観をもって行動することの大切さを示しています。私は、知識や技能を結びつけるだけではなく、学びを通じて何を守り、何を変えるべきかを問い続けたいと考えていたため、この理念に深く共鳴しました。
総合政策科学研究科は、従来の学問領域にとらわれず、政治・経済・文化・歴史といった複数の視点を柔軟に統合しながら研究を進めることができる点で、相性の良さを感じています。普段は新町キャンパスを拠点に研究を行っていますが、教員との距離も近く、社会人研究者も含む多様な分野の研究者が同じ場にいるため、建設的な議論を重ねながら研究を発展させられる環境があります。
博士後期課程においては、「SPRING」プロジェクトにて、研究費や研究奨励費(生活費相当)の支援があり、研究に専念できる他、半年に一度のキャリア面談があるなど、手厚いサポートをいただいています。
特に、同志社のSPRINGプロジェクトは「国際性の涵養」を掲げており、海外活動に特化した研究費の制度設計や経費執行の柔軟なサポートがあることから、私のように海外を研究フィールドとする研究者にとっては安心して研究が進められる環境といえます。 博士学生間の交流の場も、異なる分野の研究について考える貴重な場となっています。
今後も近現代ギリシャに関する研究を足がかりに、「国民国家」という制度が21世紀の国際社会においてどのように再定義されるかを、歴史と比較政治の観点から問い直していきたいと考えています。
歴史研究が照らす現代社会の課題
私は、国家による包摂と排除、国民形成と安全保障などのテーマに取り組んでいますが、これらは今日の世界各地で繰り返される難民問題、地域紛争、イデオロギーの問題などとも深く結びついています。特定の国や時代を対象とする歴史研究であっても、それが今の私達の国際秩序や共生のあり方を考える上で有用だと考えています。過去におきた対立や排除のメカニズムを明らかにすることは、未来に向けて異なる人々がともに生きるための制度や対話のあり方を設計するにあたって、重要な視座になると考えます。

生成AIが台頭しています。知識量では、AIに人間がかなうはずがありません。個人的に思うのは、ギリシャに渡航した際に、自ら学んだギリシャ語で現地の方とコミュニケーションをとった「体験」は、AIには絶対代替できないということです。こういう時代だからこそ、自分の「体験」を大切にし、AIには出来ない視野をもつということの重要性を改めて感じています。
歴史や政治を学ぶことは、「過去との対話」を通して、「現在を読み解く」方法を学ぶことだと思います。ぜひ皆さんも、自分の関心に向き合い、未来への探求を始めてほしいと思っています。