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竹林とSDGsの関係とは?(後編)

国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の課題解決のための、All Doshisha Research Model 2025「“諸君ヨ、人一人ハ大切ナリ”同志社大学SDGs研究」プロジェクトのひとつ、「竹林SDGsを通じたグリーン・コモンズの創出」。後編では、研究の具体的な内容や今後の展望、私たち市民レベルでのSDGsへの関わり方などについて大和田先生に伺った。

【前編】はこちら

2024年3月6日 更新
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京都府向日市竹林でのフィールドワークの様子

美しい景観を持つ農山村の魅力に目覚めて

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農山村の地域資源活用と都市・農村の交流を組み合わせることで幸せな社会を作る――。この構想を具現化するために宮城大学大学院で事業構想学研究に取り組んでいたころ、国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産(※)(以下、「GIAHS)に出会いました。これは伝統的な農林水産業の価値を評価し、保全・継承を促すことを目的に、日本では2011年に導入されました。現在は国内で15の地域が認定されています。

日本のGIAHSの特長は里山・里地・里海における多様な主体の連携による保全と活用です。2014年から2020年まで6年間、農林水産省が設置した「世界農業遺産等専門家会議」委員を務めました。そして初めて現地審査に出向き、2015年に認定されたのが和歌山県の「みなべ・田辺の梅システム」です。みなべ町、田辺市は高級梅である南高梅の発祥の地で日本一の梅の産地であると同時に、紀州備長炭の原料となるウバメガシの木が栽培され、備長炭が作られている地域です。

私が本格的に農山村の魅力にひかれはじめたのはこのころです。里山・里海の美しい景観は農業や林業、漁業など人の営みの中から生まれてきたものであり、人の手によって維持されます。私は「SDGs時代における世界農業遺産の役割」を博士論文のテーマをとし、2020年9月に宮城大学事業構想学研究科後期課程を修了、その後、同志社大学の教員に採用されました。

※世界農業遺産 Glonally Important Agricultural Heritage Systems
世界農業遺産(GIAHS)とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、ランドスケープ及びシースケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、世界的に重要な伝統的農林水産業を営む地域(農林水産業システム)であり、国際連合食糧農業機関(FAO)により認定されます。(農林水産省HPより)

学生とともに竹林でフィールドワークに取り組む

owada-10.jpg (84560) 竹林でのフィールドワークに取り組む学生たち

大学では政策学部の政策トピックスという枠組みの中で、「SDGs時代のサステナブルな地域づくり」という授業を行っています。履修生には全員フィールドワークを義務付けており、その課題解決策を提案してもらいます。

「竹林SDGsを通したグリーン・コモンズの創出」をプロジェクトとして発足させたのは、自然化粧品会社「THE BODY SHOP」時代の同僚が高級タケノコの産地である京都府向日市に住んでおり、竹林ボランティアをしていた彼女の“竹林愛”に心を動かされたことがきっかけです。その同僚は現在では総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーションコースで学んでいます。

向日市・長岡京市・大山崎町・京都市にまたがる乙訓(おとくに)地区は平安時代から竹材利用の歴史があります。しかしながら、現在は放置竹林が問題化するなど、地域の住民がその資源の価値をあまり理解していないのが現状です。大学生などの若い層も竹林の生態や都市・農村の生態系・生物多様性への関心と理解が低いことも事実です。

これらの課題や解決方法を検討するために、乙訓竹林を対象にSDGsとの関わりを整理しました。その際、内閣府の「SDGs未来都市」のフレームワークを援用し、環境・社会・経済の3側面から考えることにしました(下図)。

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そして、統合的な取り組みとして、タケノコ農家や事業者、地域住民、大学生、ボランティア、行政などマルチステークホルダーによるパートナーシップ活動による「グリーン・コモンズの創出」を位置づけました。

授業で学生とともにフィールドワークに出かけた際は、竹を切り出すことから始まり、竹筒でご飯を炊いたり、竹林整備をしたりするという活動を通して竹林の課題や生態、景観保全の重要性について考えました。また、竹の専門家からレクチャーを受け、私たちの生活に恵みをもたらしてくれる竹についての理解を深めました。

竹林がGIAHS認定されることを目指して

今後、この竹林をGIAHSの五つの基準にあてはめて、そのポテンシャルについて検討、認定されることを目標に、関係自治体やタケノコ農家、事業者など産地全体に呼びかけていくことを目指したいと考えています。

GIAHSに認定されることで得られるメリットとしては、世界からのお墨付きをもらえることによって、竹林に関わる人たちの誇りにつながります。後継者問題の解決にも一歩近づけるのではないでしょうか。また、竹林のある美しい景観を守っていこうという機運が地域レベルで広がっていくことも期待されます。まさに、グリーン・コモンズの考え方です。

身近な暮らしからSDGsを学ぶ

よく「SDGsの概念や達成するべき目標については理解できますが、私たちが個人レベルでできることはありますか?」といった質問を受けることがあります。この問いに対して竹林を例にしてみましょう。私たちの暮らしのごく身近なところに竹林があります。今ではプラスチックに代わってしまったもの(食器など)を竹で作ってみるとどうなるか?といったことなどからSDGsの考え方を学ぶことができると思います。そして、世界の問題と地域の問題、自分の暮らしはつながっていることを知っていただきたいです。

また、近年はオーガニック&ナチュラルな衣食住を提案するイベントが各地で行われています。そのようなイベントに足を運ぶこともSDGsについて学べる良い機会だと思います。堅苦しく考えるのではなく、自分が普段から行っていることはSDGsとどのような関わりがあるのか、常に気にかけることから始まると思います。

大阪の万博公園では2006年から春と秋に「ロハスフェスタ」というイベントを行っています。手作りの食品やリサイクル品を販売するショップが並び、総合的にSDGsライフスタイルを普及するイベントですが、2023年は環境省のグッドライフアワードや、グッドデザイン賞を受賞しました。

能登の里山・里海の再生を願って

私は今、GIAHS認定地域における「SDGs未来都市」の推進などを支援しています。そこで特に訴えたいのが、都市部の人たちに農山漁村に支えられていることを知ってもらい、農業生態系の保全や農林漁業に関わる活動に参加してほしいということです。

今年の1月1日に起きた能登半島地震では、能登の里山・里海が大きな被害を受けました。ここはGIAHSに日本で最初に認定された地域です。その生業や景観の再生に私たちはどのように貢献できるのか。一人でも多くの人に関心を持っていただき、里山・里海の世界的シンボルである能登の再生に向けて復興支援活動に参加していきたいと強く思っています。