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2024年度に重点的に取り組んだ課題の達成状況

2025年4月15日


 「同志社大学ビジョン2025 -躍動する同志社大学-」中期行動計画(第3版)の着実な実行及びその他の課題に対応するため、2024年度は重点的に以下の課題に取り組んだ。

1.150周年とその先へ──未来に向けた基盤づくり

 150周年は大学のあり方を根本から考え直す絶好の機会となる。この機を捉えて同志社の歴史を振り返るとともに、150周年以降の新たなビジョンの策定を開始する。充実した自由な時間こそが大学にとってもっとも重要な資本であるという認識のもと、未来の発展の基盤となる教育研究・職場環境を改善し、大学改革を推進する。その際、AIなど最先端の技術が大学運営と業務遂行にもたらす効果を見極め、社会の模範となる教育研究・職場環境の構築を目指す。

 2024年度は2026年以降の新たなビジョンの作成にあたり、ネクスト・ビジョン策定部会を設置し検討を開始した。部会ではこれまでの新島の志を振り返り、本学の未来に向けて協議を重ねた。部会の中間報告案に対して教職員から意見を募集し、最終答申を部長会において報告した。現在、2026年度以降の中期行動計画の取組を各部署に確認する等、新たなビジョンの成案に向けて、組織間の調整を図っている。
 最先端のICTを活用した職場環境の構築については、時間・場所を問わない的確な情報提供の実現と対応に係る労力の削減を目的として、窓口対応管理システムの導入に取り組んだ。具体的には、クラウド型の情報管理サービスを活用し、業務対応の仕組みを一元的に管理できる体制の試験構築を行った。また、業務のデジタル化を推進するプロジェクトを立ち上げ、若手職員が主導して、近年注目されている先進的な手法を用いた、専門的なプログラミング知識を必要としない業務支援ツールの開発に取り組んだ。

2.「新たな教育」のための基盤強化

 刻々と変化する社会に対して大学が貢献するためには、堅持すべき本学の教育理念を踏まえた上で、「新たな教育」への取組が一層必要となる。本年度から始まる「新しい学年暦」は、そうした取組の基盤の一つである。その着実な実施に注力するとともに、教育・学習効果を検証し、さらなる改善を検討する。もう一つの新たな取組の基盤とも言える「数理・データサイエンス・AI教育」は、「同志社データサイエンス・AI教育プログラム」(DDASH)において先導的に取り組んでいるところであるが、その裾野を広げ、本学で学ぶ者が基本的なデータ分析能力を身につけて社会に出ていくことができるよう、段階的に能力が身につくプログラムのあり方を引き続き検討し、学生の主体的な学びとキャリア形成へとつなげる。
 また、生成AIへの対応をはじめ、大学教育においても高度情報化社会への対応が求められる時代の中で、知と体の適切なバランスをはかることは今まで以上に重要である。それゆえ、学生生活におけるスポーツのあり方にも新たな光を当てる必要があり、そのための検討を開始する。

 「新たな学年暦」では、2回のオンデマンド授業を受講していない学生が一定数存在すること、2回目のオンデマンド授業の受講率が低いことが、アンケート調査等により判明した。2024年度は、この2点を重点課題として改善に取り組んだ。まずは、「同志社大学「新たな学び」のための授業実施方針」を改定し、オンデマンド授業による補完・相補・連動により、面接授業の質の向上を図ることを掲げ、「授業実施のためのガイドライン」においては、「Doshisha Opening Week (DO Week)」を維持しつつ授業計画に基づき、柔軟に授業を配信できることを明示した。併せて、ICTを利活用した教育・学修の推進、質保証のサポートにも取り組んだ。2025年9月にリプレースするLMS(e-class)の機能を活用し、学修成果の可視化を実現することを決定した。また、大規模クラスにおける多面的評価の公平性を担保する取組として、オンライン試験システムの使用範囲を拡大し、600名以上のクラスを対象とする全学化を図った。
 「数理・データサイエンス・AI教育」については、「同志社データサイエンス・AI教育プログラム(DDASH)」(以下、DDASH)が、応用基礎レベル(DDASH-A)で文部科学大臣認定を取得した。エキスパートレベルの教育として、大学院新学位プログラム設置委員会を立ち上げ、研究科等連係課程「データ科学・AI学位プログラム」の新設(2027年4月予定)構想を進めた。
 西日本電信電話株式会社、株式会社NTT EDXと本学との共同で開始した生成AI実証事業については、DDASH関係科目で、学生の学習を支援するAIアシスタント「DAIB(Doshisha AI Buddy)」の利用を開始した。電子教科書によるサポート機能が、学習の効率化に効果があることを確認し、実証期間を1年間延長することとした。
 学生生活におけるスポーツのあり方については、同志社スポーツ検討ワーキンググループを設置し、学生の正課及び正課外活動におけるスポーツの現状分析を通して問題点を協議した。「今出川校地における体育施設の現状と課題」、「一般学生、教職員の健康増進に資するスポーツのあり方」、「体育会と同志社スポーツユニオンの現状と課題」について、各々の課題を整理した。また、これらの課題解決に取り組むスポーツ専門部局の必要性についても、多角的な視点から検討を行った。

3.境界を越える次世代教育の展開

 学びとは一生涯続く営みであり、大学は学び続ける意欲を持つすべての人に対して、開かれた場でなくてはならない。リカレント教育は単に少子高齢化対策となるばかりではなく、本学学生にとっては、異なる世代間の交流や社会人との共修を通して多様な価値観を学ぶ機会となる。将来的に学ぶ意欲を持つすべての人に魅力的な学修コンテンツを提供し、誰もが時間や場所という制約を受けることなく学ぶことができるリカレント教育の検討を開始する。また、既存の教育システムを前提とする様々な境界、すなわち、高校と大学、学部と大学院、学生と社会人、国内学生と留学生、キャンパスと地域社会の間にある境界を越える取組を強化する。

 誰もが本学で学ぶことのできるリカレント教育の検討については、教育改革推進部会において、現行の制度等(社会人学生、科目等履修生、聴講生、公開講座等)に基づくリカレント教育と、収益性を見込み先駆的に取り組むリカレント教育に分けて検討を行った。前者では、学部・研究科あるいは部・館・所等による、各々の方針に基づく主体的な取組を期待し、その推進制度として履修証明プログラムの再整備と一元的に情報発信する広報活動に注力することを検討した。後者では、単に収益を求めるのではなく、社会人に新たな学習機会を提供することで、コミュニティやネットワークを形成し、新たな社会人の獲得を目指すことを確認した。
 高校と大学の境界を越える教育については、高大接続部会において、社会的背景や大学に求められる役割、本学が抱える課題等を踏まえて、本学が取り組むべき高大接続について検討した。その結果、「大学の学びに触れる機会の創出」、「探求学習へのサポート」、「多様な学生の受入」の3つの取組を強化する必要性を確認した。1つ目については全学部・学科の特徴的な授業の一部公開、高校生と本学学生との交流機会を創出すること、2つ目については学習支援・教育開発センターが提供している「アカデミックスキルセミナー」の一部受講、高校生とゼミ・研究室の教員・本学卒業生との交流について取り組むこととした。3つ目については次年度以降継続して検討を行っていく。学生と社会人の境界を越える教育については、高等研究教育院が開設する「アドバンスト・リベラルアーツ(ALA)科目群」を企業や自治体に提供することで拡充した。また、ビジネス研究科において企業との組織間連携による人材育成を試行し、新たなスキームを実現させた。さらに、株式会社島津製作所とは、サイエンスコミュニケーション人材の育成に共同で取り組むことを目指し協議を開始した。

4.リベラルアーツの深化と総合知の形成

 世界が直面する様々な課題解決のため、文理の垣根を超え、問題を俯瞰する総合知が以前にも増して求められている。幅広い教養と総合的な判断力を養い、豊かな人間性を涵養する本学ならではの教養教育をさらに発展させていくために、昨年度に引き続き、全学共通教養教育科目の再編成と体系化に取り組み、大学院教育においては、アドバンスト・リベラルアーツ科目群の拡充を図る。こうした学部・研究科横断の取組を推進するため、組織の垣根を超えた教員間の交流と研鑽の場を増やす。その協働の結果として、異なる学部・研究科の学生たちが互いに刺激を与え合い、広い視野と豊かな発想を身につけることのできる知的冒険の場を築く。

 全学共通教養教育科目の再編成と体系化については、全学共通教養教育科目の区分を見直し、キャリア形成支援科目をライフデザイン科目に名称変更した。また、自然・人間科学系科目を分離し、人間科学系科目の下位に保健体育科目を設置した。さらに、良心や国際性の涵養、イノベーションの推進を図るため、「同志社科目特論」、「国際関係学概論」、「国際文化学概論」、「イノベーション基礎」を新設した。加えて、学内に点在するアントレプレナー養成に関連する取組を洗い出し、「Produce Trial」等の正課外活動との組み合わせでアントレプレナーシップ教育の体系化を図り、「同志社イノベーション・ゲートウェイ(DIG)」(以下、DIG)を2025年度から実施する。DIGでは、知的冒険の場としてインターネット上にコミュニティを構築し、それを管理・運営できるICTを活用する。
 大学院アドバンスト・リベラルアーツ科目群の履修者数は、ダイキン工業株式会社に続き、TOYO TIRE株式会社との組織間連携により大きく増加したことにより、組織のミッションを担った社会人と未来を担う大学院生の共修環境を拡充した。
 教員の異分野教育交流の促進については、最新のテクノロジーと大学教育のあり方を考える機会として、「生成AIと電子教科書を援用した全学データサイエンス教育の試み」と題した全学FD研修会を実施した。

5.新しい価値の創造と社会貢献のための研究基盤の強化・多様化

 社会貢献やイノベーションにつながる研究開発マネジメントの変革、及び文理融合の教育研究拠点の機能強化について検討を開始する。研究時間の確保やリソース配分の見直しなど、教育研究環境の抜本的な改善を含む大学改革を進めるため、文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」(J-PEAKS)に応募する。研究のための自由な時間を創出することを目指し、研究環境の抜本的な改善に向けた検討を行う。今年度から開始するJST「スタートアップ・エコシステム共創プログラム拠点都市プラットフォーム共創支援」を活用して、大学発スタートアップ、アントレプレナーの支援体制を整備する。また、本学と理念を共有できる国内外の大学、企業、国立研究所、自治体等との組織連携を進め、社会貢献のさらなる推進を目指す。

 文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」(以下、J-PEAKS)への申請を通じて本学の研究環境の抜本的な改善を検討した。地域中核・特色ある研究大学構想検討部会にて、本学の研究力を分析し、研究力向上戦略の策定及び実行体制を検討した。研究戦略ボードや関連部課から意見を聴取し、部長会において構想調書を審議・決定の上、文部科学省に申請した。不採択の結果を受け、現在、研究開発推進機構を中心として構想調書で掲げた大学改革を実施するための各種施策のうち、研究力向上に関わる事項に限定した実施案を検討している。なお、J-PEAKSの要件でもある組織連携の一環として、協定を締結した日産自動車株式会社及び京田辺市とは、三者で具体的な事業内容を策定し、第1回連携プロジェクト推進協議会を皮切りに実質的な活動を開始した。
 大学発スタートアップ、アントレプレナーの支援体制の整備については、国立研究開発法人科学技術振興機構大学発新産業創出基金事業「スタートアップ・エコシステム共創プログラム【拠点都市プラットフォーム共創支援】」(本学参画プログラム名「関西スタートアップアカデミア・コアリション」(KSAC))の事業を推進する上で、2024年度中に整備が必須となっていたライセンス等の対価として取得及び管理する株式等の取扱いに関する規程の制定、兼職・兼業に関する規程を財務部、人事部と協働し改正した。起業支援については、起業支援コーディネーターを雇用し、スタートアップ創出プログラムに6件申請したうち1件採択となった。また、独立行政法人中小企業基盤整備機構が、京田辺キャンパス内で運営する同志社発インキュベーション施設(D-egg)に、学生が法人登記可能なシェアオフィスを設置することについても検討した。

6.国際主義とキリスト教主義の連携

 新島襄が描いた国際主義とは、自国及び自分を知り(愛し)、他国及び他者を知る(愛する)ことであり、排他的な愛国主義の対極にある。それは常にキリスト教の隣人愛に根差したものであった。ACUCA(The Association of Christian Universities and Colleges in Asia:現在、アジアの8つの国・地域の64のキリスト教主義の加盟大学からなる組織)において、本学は2024年から2年間、幹事校の役割を担う。この役割を遂行することによって、本学の国際主義教育とキリスト教主義教育の連携を深め、これから予定されているACUCAの諸行事を、グローバルな隣人愛の実践の場として活用する。2025年には全加盟校の学長他関係者を迎えての大会と、加盟校の学生たちを集めての学生キャンプが同志社で開催される予定となっており、これらの準備を学生、教員、職員が一丸となって進める。

 ACUCA(アジア・キリスト教大学協会)の運営については、幹事校として2025年度に本学で実施するStudent Camp(SC)やManagement Conference(MC)のテーマを決定し、メンバー校の協力体制を確認した。2025年度本学で実施するSC、MC、General Assembly(GA)については、ExCoミーティング、日本委員会、キリスト教主義・国際主義連携推進部会等での議論を踏まえ、キリスト教文化センターの協力も得ながら、ワーキンググループにて実施案とスケジュールを検討し準備を進めた。
 また、キリスト教主義・国際主義連携推進部会での意見を参考にしつつ、本学の国際展開策の一つとして、加盟大学の学生が登録履修するオンライン教育プログラムMICRO DEGREE/Certificate Programの提供科目を刷新し、キリスト教主義教育に添う内容の科目群にシフトチェンジした。さらに、本学とキリスト教主義・国際主義の理念を共有できる立教大学と相互協力・連携協定を締結し、具体的な取組の検討を開始した。加えて、尹東柱没後80周年・同志社創立150周年にあたり、キリスト教徒として信仰と自由に生きた尹東柱に対して名誉学位を贈り、多くの学生が犠牲になった戦時期同志社のキリスト教主義のあり方を振り返る機会とした。

7.ローカルとグローバルの生きた循環の創出

 学んで得た知識や力を自らのためだけでなく他者のために活用し、社会や世界に貢献する「地の塩」としての人物を育成するために、身近にある地域課題とグローバルな課題を関係づける新たなサービス・ラーニング等を検討し、同志社らしい国際主義の実践を目指す。コロナ禍で休止、停滞していた国際的連携を活性化させ、学生の派遣と受入を充実させるとともに、外国からの訪問者受入や海外プログラムを充実させる。それと同時に、交流の質を高めるため、海外協定大学を総点検する。
 2023年度に改組された国際教養教育院の運営を軌道に乗せ、同志社における国際主義教育の拠点の一つとして位置づけていく。海外拠点の戦略的強化として、EUキャンパスを擁するテュービンゲン大学と本学との間で教育と共に研究協力を拡充させる。さらに、学校法人同志社150周年記念事業等とも連携しながら、アーモスト大学とのさらなる関係強化を図る。

 新たなサービス・ラーニング等の検討の前提として、ACUCAや本学と相互協力・連携協定の関係にある立教大学の取組から、その教育内容・手法等を概括し、本学におけるプログラムの開発・運営、具体的な実施方法の検討の端緒とした。さらに、コロナ禍で停滞していた国際的連携の活性化を企図し、積極的に外国からの訪問者受入れや海外プログラムを充実させた。加えて、中長期的な視点から質保証体制の充実した海外大学組織との協定を見据え、海外協定大学の点検を開始し、2つの教育プログラムのレビューを行った。1つはEUキャンパスプログラムでのTübingen International & European Studies (TIES)の指導・協力内容を確認し、派遣前の指導に援用した。2つ目は国際教養教育院のサマーセッション(海外学生参加本学スタディパートナー支援による課外プログラム)の復活開催、Mid-College Be Strong Program(グローバル・リベラルアーツ副専攻英語開講科目、2024年度再開)、Freshman Go Global Program(2023年度再開)遂行におけるスタディパートナー(学習)等の有効性や活用効果の検証を行った。
 海外拠点の戦略的強化については、同志社大学・テュービンゲン大学共催第5回国際シンポジウムを、「人とAI:その共存と良心」をテーマとして実施し、両大学の研究面での交流を深めた。アーモスト大学関係では、新たな交換教員派遣制度(セメスター期間での交換教員、原則、派遣先で1科目2コマの授業担当/教員宿舎の相互提供)を開始した。また、エリオット学長の本学来訪にあたり、名誉文化博士学位を贈呈した。加えて、法人と協力して学校法人同志社創立150周年記念事業「新島襄のラットランド・アピール150周年記念ツアー」を実施し、記念行事を通じてアーモスト大学との絆をさらに強化した。

8.「深山大沢」としてのキャンパスの形成

 新島は「深山大沢、龍蛇を生ず」等の言葉によって、大学の理想像を「深山大沢」として示した。これを現代的に言い換えれば、「様々な個性を生かし育む、多様性と驚きに満ちた環境」となるだろう。「深山大沢」の理想を現代において追求するため、自然環境と人間社会のダイバーシティを尊重するキャンパスを目指す。地球環境の持続可能な発展に貢献できる先駆的なサステナブル・キャンパスを創ることを目標として、環境に配慮し、エネルギー消費の削減に取り組み、将来のカーボン・ニュートラル、カーボン・ネガティブ実現の第一歩を踏み出す。また、キャンパスは、そこに集うすべての学生と教職員の多様性が尊重される場とならなくてはならない。そのため、過去4年間取り組んできたダイバーシティ推進にも引き続き取り組んでいく。多文化共生や地域社会との連携を進め、ローカルに根ざしたグローバル・キャンパスを創る。

 同志社大学環境マネジメント推進委員会内規を制定し、全学的な環境マネジメント推進に係る計画の策定、分析、改善及び各種施策を立案した。部長会において、本学の温室効果ガス削減目標を設定する「同志社大学カーボンニュートラルロードマップ」を策定し、大規模建設事業(省エネルギー化等対策事業)として、空調設備等整備工事、LED等整備工事、京田辺キャンパス特別高圧電力改修工事を順次実施することを決定した。大学公式ホームページにSDGs推進に関するページを新設し、ステークホルダーへの情報開示を目的に本学の環境に関する取組や温室効果ガス排出量の推移等の環境データを掲出した。また、「同志社大学環境活動推進パートナー制度」を新設し、本学の取組に賛同する大学、企業、地方自治体、団体等を環境活動推進パートナーとして募った。
 ダイバーシティ推進については、正課科目における授業担当者への合理的配慮に関する支援助成事業を実施した。講演会・イベント等における合理的配慮に関する対応方針の更なる浸透を目的に、告知に関するリーフレットを作成の上、学内に広く配付した。また、研究者に対する復帰支援制度及びリサーチライフ支援助成事業の広報活動として、リサーチライフ支援助成事業の利用者である教員の取材を実施し、大学公式ホームページ及びダイバーシティ推進サイトにて利用者の声を紹介した。さらに、ダイバーシティシンポジウムを開催し、文部科学省科学技術人材育成補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(調査分析)」の成果を活用した、本学のダイバーシティ推進の状況を広く社会に発信した。加えて、性の多様性への対応施策として、トイレのピクトグラムの整備を実施し、性別を問わないトイレの設置要望に応え、その呼称を全ての人々に開かれた普遍性を表現する「ユニバーサルトイレ」とすることを決定した。

9.情報共有・情報発信の基盤形成とブランディングの強化

 現代の大学運営において、情報基盤は教育・研究の遂行とそれを支える事務処理に必要不可欠であり、安心安全に利用できる情報基盤を整備し、運用することは大学活動の質を担保する上で欠かすことができない。この情報基盤の確立をDoshisha Transformation (DX)の中核項目と位置づけ、教務・研究・事務システムの改善を見据えた、全学情報システムの企画・設計を計画的に行う。また、学内外への積極的な情報発信に努め、入学者の安定的確保や寄付の増加にもつながる、同志社大学の新たなブランディング戦略を企画・実施する。その一環として、東京サテライト・キャンパスの活用方法を抜本的に見直す。加えて、ブランディング形成に重要な卒業生との連携をさらに深め、世代を超えた同志社コミュニティの形成を推し進めるため、同志社校友会の支部総会等における交流の機会を効果的に活用する。

 情報基盤の確立のための全学的な方針について、情報化推進部会で議論を進め、「Doshisha Digital Transformation(以下、DDX)宣言」を作成し、部長会において審議・決定した。DDX宣言では、大学全体の情報を統合的に活用することで、教育と研究活動の高度化・先進化に資するだけでなく、常に革新を追求し、変化し続ける環境に適応することで、新たな価値を創造し、より高度な自由を獲得することを目標と定めた。また、DDXを進める具体的な方策を12点掲げ、今後の情報化推進の指針を確立した。これに基づき、既存の統合DB・分析基盤システムについては、汎用性と利便性が高いシステムとして再整備する必要性を認識した。教務系システムについては、教務系システム運用会議にて各システムの更新時期や内容、方向性、更新、変更等の運用体制について議論を重ね、証明書発行システムとLMSは2025年秋に向けて更新作業を進めている。次期インフラ系情報システムについては、次期インフラ系情報システムリプレース検討作業部会にて「基本方針」を議論した。システムの調達周期を揃える方針を示した基本方針は部長会で報告・了承され、これに基づくシステムの仕様、原則を定める基本仕様書(案)も情報化推進部会で承認された。業務でのAI活用については、西日本電信電話株式会社と共同で実施している検証事業の中で、生成AI利用実験を行い、各種学内規程類改正時の文法チェックや構成を同志社標準に合わせる作業の自動化に取り組んでいる。
 学内外への積極的な情報発信のために、受験生・在学生・教職員・卒業生など多様なステークホルダーを対象として、新たにYouTubeチャンネル「Doshisha University Now! 学長・副学長が同志社大学の今そして未来を語る」やFacebook、Instagram「Doshisha University Now!-同志社大学長の活動日誌-」を開始した。東京サテライト・キャンパスの活用方法については、今年度拠点形成のあり方に関する検討を進めた。卒業生との連携については、同志社校友会の支部総会等をベースとしながら、若手校友のコミュニティ形成に向けた交流事業を実施した。東京で開催した「若手卒業生の集い」では、多くの若手校友が参加し、意見交換やネットワーク構築を通じて同志社の絆を深めた。また、ホームカミングデーにおいても若手校友の名刺交換会を実施した。今後は、戦略的に若手校友を全国の校友会各支部に橋渡しし、同志社コミュニティの形成を推進する。

10.安定的財政基盤の確立

 質の高い教育、研究、社会貢献のためには、財政基盤の安定が必須である。同志社大学の財務関係比率上の指標・目標及び中・長期財政計画並びに学校法人同志社の中期財政目標・財政計画を見据え、収入の安定化を図るべく、2025年度及び2026年度入学生学費の決定に取り組む。また、事業計画の成果検証を行い、明確な財政規律の下での効果的な財政運営を行うとともに、入学定員の確保を重要事項とする。2025年度予算においては収支均衡を目標とし、近い将来における繰越支出超過額の解消に取り組む。加えて、収入の多様化を推進すべく、「同志社大学2025 ALL DOSHISHA 募金」への寄付を増やすため、卒業生や企業に対し、これまで以上に積極的な働きかけを行い、大規模建設事業等の財源確保に努める。

 2024年度は、2025年度及び2026年度入学生学費を決定し、今後の安定した財政基盤構築の礎となる財源を確保できる見通しを立てることができた。この学費決定時の収支見通しを基にした基準・条件の下、中・長期財政計画(2026年度~2030年度)を策定し、当該期間中の財務関係比率上の指標・目標の設定を行った。また、事業計画の成果検証を行い、より綿密な事業計画と予算編成に留意した効果的な財政運営を実施し、重要事項とした入学定員確保についても、達成することができた。2025年度予算編成については、予算編成大綱を基軸とし、特定事業においては、経常勘定、建設勘定の予算額に上限を定め、より効率的・効果的な予算編成を進めることで、繰越支出超過額の解消に、着実に取り組んでいる。
 募金事業については、校友会との連携による卒業生とのコミュニケーション強化とともに卒業生宛の発送物および発送方法の変更を行った結果、1,000名を超える新規の寄付者を獲得することできた。また、リピーターは約2,000名弱に達し前年比110%となった。