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同志社大学ビジョン「共に知る、共に変わる ―With a Good Conscience」

2025年10月22日


 同志社の創立者・新島襄が遺した数々の言葉は、時代を超え、今もなお私たちに語りかけ、同志社大学の進むべき道を考える上での羅針盤として、私たちの支えとなっている。また、それらは本学に比類なき独自性と誇りを与えている。本学が同志社オリジン(「キリスト教主義」「自治自立」「良心」などの建学の理念)を「再発見」「再解釈」し、唯一無二の誇りある輝きをもって社会を照らし、次世代社会のための新しい価値を生み出すことは、本学が担うべき固有の使命である。
 重要な局面で「良心」を語った新島にとって、「良心」は自由と真理と深く結びつき、既存の秩序を超えて、人を新たなステージへと押し出す力であった。分断が加速し混迷の度合いを深める世界のなかで、本学が果たすべき役割は大きい。急速に少子化が進む時代を迎え、日本の大学を取り巻く状況は厳しいが、本学が150年の歴史の中で培ってきた伝統を大切にし、それを次世代へと継承するためにも、現状に甘んじることなく変革を進める必要がある。「共に知り(conscienceの原義)、共に変わる」ことによってはじめて、新島の思想の根幹にある「良心」を社会にあまねく広めていくことができるであろう。
 新島は、新しい教育によって人や社会を変え、再生することができるという強い信念をもっていた。その新島の志を受け継ぐ者として、本学の教職員がその原点に立ち返り、本学の未来に向かって共に考え、協働していくためのビジョンを以下に示す。

1.良心に基づいた総合知の展開と「智徳並行」教育の深化

 本学は、様々な問題や困難に直面する世界にあって、未来社会を切り拓くための総合知を育む大学である。基礎的・俯瞰的な教養と専門知を組み合わせ、新たな価値を生み出す総合知を、本学が独自の形で展開していくためには、徳育の基盤としてのキリスト教主義や良心を本学の強みとして活かす必要がある。科学技術の進展のスピードに対し、倫理規範のアップグレードが追いつかない状況下で、同志社教育の核心とされてきた「智徳並行」教育が、今、新たな輝きを放つことになる。
 分断と対立が深まる世界の中で、社会の課題に向き合い、困難の中にある人々を支えるためにも、自ら考え自ら行動する「自治自立」の精神、常識にとらわれず、現状に甘んじることのない「倜儻不羈てきとうふきの精神をもつ学生を育てる場として、本学は在り続ける。「共に知る」良心(conscience)によって、対立する価値観をとりなし、世界の人々の良心を鼓舞することのできる、深い思考力と実践力を備えた人物を本学は輩出する。また、学ぶ意欲のあるすべての人々に対して門戸を開き、世代を超えた学びの場を提供する。

2.京都との共創から生み出される新たな社会貢献

 京都は歴史と文化が息づく都市であり、最先端の取組を行う企業を数多く生み出してきた「革新の気風」が根づく地でもある。本学は、京都の特質と結びついた「伝統と革新」を併せ持った教育・研究・社会貢献のフロンティアとなる。地域社会およびグローバル社会が抱える複雑な課題に真摯に向き合い、産官学連携を通じて地域社会の活性化を図ることにより、日本のみならず世界に対して新たな社会形成のモデルを提示する。そのために、京都の地から日本全国さらには世界へと羽ばたき、各地で活躍している卒業生との絆を一層深めるとともに、そのネットワークを活かす。また、学生が正課および正課外活動を通して、地域の文化や人々と新鮮な出会いをなし、社会に貢献する喜びを経験できるような場を作っていく。

3.隣人愛に基づく「国際主義」の実践

 欧米によって先導されてきた国際秩序が揺らぐ中、本学は、国や文化の違いを超え「共に知る」能力を備えた真の国際人を育てる。偏狭な愛国心から自由になって、世界の一人ひとりを愛することの大切さを訴えた新島にとって、キリスト教に基づいた隣人愛と「国際主義」は一体的なものであった。このような伝統を、紛争や対立がなおも止むことのない現在の国際社会の中で活かすことにより、困難な状況にある人々に目を向け、確かな歴史認識をもって平和のために協働できる人物を育成する。また、国際通用性のある質の高い教育を提供するとともに、中核的拠点を定めながら、幅広い国や地域から多様な人々を迎え入れた世界の縮図となる多文化共生キャンパスを形成する。

4.多元的イノベーションを引き起こす研究基盤の形成

 本学は、人類の知の地平を広げる基礎研究と、現代社会が直面する課題の解決を目指す応用研究を共に推進することにより、多様な研究リソースを有機的に結びつけ、新たなイノベーションをもたらす。さらに、学内の知的資源を生かして、自然科学を主とした科学技術イノベーションと人文・社会科学を軸とした社会的・倫理的イノベーションの結合による「多元的イノベーション」を生み出し、社会に変化を促す中核となる。
 産官学連携の文理融合的教育プログラムの拡充などによって、研究と教育の高次の循環の中に学生を招き入れ、良心を備えた新しい時代の担い手を輩出する。また、オープンサイエンスの推進を通じて、本学の研究成果の共有と再利用を促進し、さらに、世界レベルの研究者との交流を活性化することにより、本学の研究レベルの向上を図る。加えて本学ならではの革新的な研究を通じて、次世代社会に必要な新しい価値を創造する。

5.新たな時代へのゲートウェイとなるキャンパスの創造と連携

 新島が大学の理想像として強調した「深山大沢」は、様々な個性を生かし育む、多様性と驚きに満ちた場所であり、また、未知の世界へのゲートウェイともなる場所であった。本学は、かつて新島が描いた「深山大沢」としての大学の理想を現代において実現する。そのために本学は、「人」「自然環境」「デジタル技術」が調和する学びの場の整備に取り組む。学生一人ひとりを大切にし、その潜在力を最大限に引き出すとともに、気候変動や多様性の尊重といった地球規模の課題に対応し、未来を切り拓くための知識と実践力を涵養する環境を構築する。さらに、地理的に距離を有する今出川校地と京田辺校地という二つの物理的拠点を有機的に連携させるとともに、バーチャル空間を活用した柔軟で多様な学びの環境を融合させることで、場所や時間を超えた知的交流を実現する。こうした融合から立ち現れる多層的な学びの場が、次世代へのゲートウェイとなる。