SDGs推進
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持続可能な開発目標(SDGs)とは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までのよりよい世界をめざす国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人として取り残さない」ことを誓っています。
持続可能な社会の担い手、そして創り手となるために── 良心を覚醒させる知の連携と知の実践 ──
学長 小原克博
SDGsが投げかける課題
SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで採択された『持続可能な開発のための2030アジェンダ』にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール、169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人として取り残さない」(leave no one behind)ことを目指しています。
日本では、SDGsと聞くと、地球温暖化に代表される環境問題が連想されることが多いのですが、SDGsはそれを重要課題の一つとしつつも、さらに多様な課題と目標と提示しています。貧困・飢餓の撲滅、健康や福祉、質の高い教育、ジェンダー平等、クリーンなエネルギー、経済成長・技術革新、不平等の解消、気候変動対策など、目標は多岐にわたります。そして、これらは別々の課題を示しているのではなく、相互に関連しています。
たとえば、経済成長することにより、世界の貧困問題を解決できるという従来のトリクルダウン型の経済成長モデルでは、経済格差を是正できないことが明らかになってきています。従来の経済成長モデルだけでは、地球温暖化を深刻化させ、地球規模の貧困、経済格差を拡大することになりかねません。革新的な技術によって経済成長を促すことは大切ですが、それが人類全体のウェルビーイングや地球環境の保全につながるのかどうかを俯瞰的な視点から評価する必要があります。
SDGsは、人類にとっての地球規模の課題が実に多岐にわたっており、それが相互に連関していることを教えてくれます。その目標を一言で言えば、私たちが将来もこの地球上で安心して住み続けるためには、今、私たちの考えや行動を変えなければならない、ということです。それは長期的な視点で物事を考えることをも要請します。私たちが経験する「今日の生活」は「明日の生活」へと連続的につながっています。しかし、「今日の生活」が当たり前のように10年後、20年後の生活につながるわけではありません。今、私たちが行うこと、行わないことが、未来社会に大きな影響を及ぼします。持続可能な社会を作るためには「今日の生活」を長期的な視点から点検する必要があります。
「誰一人として取り残さない」ための知の連携と知の実践
SDGsのどの目標も、一つの学問領域だけで解決することは決してできません。多くの学問領域がその英知を結集して課題解決にあたる必要があります。SDGsに向き合うとき、専門領域の壁を越えた「知の連携」「知の実践」が必要であることがわかります。
SDGsが提起する課題はいずれも大きく複雑で、その前では個人の力は無力に思えます。「誰一人として取り残さない」という理想をSDGsは掲げています。しかし、現代の競争社会の中では、私たちは「自分一人が取り残されない」ための努力を続け、他者のあり方、とりわけ、目に入ることのない遠くの他者の存在を関心の外に置きがちです。「誰一人として取り残さない」という目標を絵空事にしないために、私たちの心の奥底に眠っている「良心」をどのようにすれば覚醒させることができるのでしょうか。
「諸君よ、人一人は大切なり」
同志社の歴史は、そのことを考えるためのヒントを与えてくれます。「誰一人として取り残さない」という言葉は、同志社の創立者・新島襄の言葉「諸君よ、人一人は大切なり」を連想させます。これは新島が同志社創立10周年記念の際に発した言葉です。
諸君と共に今、往事を追想して紀念したきは、昨年、我れ不在中、同志社を放逐(ほうちく)せられたりし人々の事なり。
真に彼らの為(た)めに涙を流さざるを得ず。彼らは或(ある)いは真道を聞き、真の学問をなせし人々なれども、遂に放逐せらるるの事をなしたり。諸君よ、人一人は大切なり。一人は大切なり。
往事は已(すで)に去れり。これを如何ともする事能わず。以後は我ら実に謹むべし(先生流涕(りゅうてい)、胸塞ぐを演(の)べらる。満場一人として袖を濡らさざる者、なかりき)。(「同志社創立十周年記念講演」1885年、『新島襄 教育宗教論集』112頁)
同志社10周年記念は、来賓も多く参加する祝いの式典でした。その晴れがましい雰囲気を壊すかのように発せられた、退学させられた学生を思う新島の発言を、その場に居合わせた人たちはどのように聞いたのでしょうか。「以後は我ら実に謹むべし」という結びの言葉は、新島自身を含む、同志社関係者全員に向けられています。その深い反省に立って10周年の場に臨んだ新島が、涙ながらに訴える「人一人は大切なり」という言葉を聞いた者たちは皆、涙で袖を濡らしたと伝えられています。新島にとって10周年記念は、同志社の功績を誇るのではなく、自らの不足を顧みて、関係者と共に同志社の「再生」を誓う日となりました。
このような同志社の歴史を通じて受け継がれてきた「人一人は大切なり」という言葉が、現代的な文脈の中で表現し直されたものとして、私たちはSDGsが目標とする「ダイバーシティ」を理解することができます。そうすれば、ダイバーシティや「誰一人として取り残さない」はただの標語ではなく、私たち一人一人の、そして同志社の「再生」の言葉となるに違いありません。
良心の覚醒と良心の共同体
SDGsの諸課題に向き合う際に有用な、同志社史を通じて受け継がれてきたもう一つの言葉は「良心」です。西洋における良心(conscience)は長い歴史の中で重層的な意味を持っていますが、その原義は「共に知る」ことです。私たちの考えや行動を変え、持続可能な社会の担い手となり、さらに創り手となっていくためには、社会の現実を見据えた良心の実践が欠かせません。社会課題に向き合い、人と人が出会い、専門分野を超えて「共に知る」ことによって、眠っていたかのような良心が覚醒することがあります。
SDGsは人類にとっての共通の課題を示しています。しかし、同志社大学に連なる者たちが、それに対してユニークな取り組みをなし、問題解決に向けた良心の実践をなすならば、それはSDGsに対する大きな貢献となります。同志社から立ち上がる「良心の共同体」が世界へと広がっていくことを心から願っています。
同志社大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています。
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同志社大学環境マネジメント推進委員会事務局 E-mail:ji-kikak@mail.doshisha.ac.jp |
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